ラ・リーガ・サンタンデール2019−2020第3節: セビージャ 1-1 セルタ・デ・ビーゴ
スペイン現地時間8月30日に行われたラ・リーガ・サンタンデール第3節、セビージャのエスタディオ・ラモン・サンチェス・ピスフアンで行われたセビージャ対セルタ・デ・ビーゴの一戦は1−1の引き分けとなり、両チームが勝ち点を分け合うことになりました。
ただし結果が双方にもたらした意味合いは大きく異なっています。
セビージャにとっては「勝ち点2を失った試合」
セルタにとっては「勝ち点1を拾った試合」
というのが双方の共通する認識であり、僕も個人的にはセルタの方により大きくポジティブな意味合いを与える試合結果だったと考えています。
攻めるセビージャと守ったセルタ
セビージャ戦に向けた前日記者会見で、セルタのフラン・エスクリバ監督は以下のようにコメントしていました。
長い間アウェーで勝利をあげられていないのであればなおさらそうしなければならないし、現状のセルタの選手たちのクオリティであればそれができると思っている。ただ単に守備のことを考えていけはいけないし、我々はアグレッシブにプレーする必要がある。
セビージャにとってはこの第3節が今シーズン初めて迎えるホーム、サンチェス・ピスフアンでの一戦。
ファンも新チームの勝利を臨んでおり、開幕から2連勝でホーム初戦を迎えるセビージャは当然サンチェス・ピスフアンで勝利を飾り、3連勝を成し遂げたかったはずです。
もともとサンチェス・ピスフアンはアウェーチームにとっては非常に勝ちにくいスタジアムであることはよく知られていますし、セビージャもホームでは無類の強さを誇ります。
スペインのクラブはどのチームであってもある程度ホームに強いという特徴がありますが、セビージャの場合はその強さが際立っています。
そのような状況で試合を行うにあたり、当然前に出てきて勝ち点3を狙いに来るセビージャに対して守備一辺倒の戦略ではむしろ後手に回るだけだというフラン・エスクリバの認識は理にかなったものだったと言えますし、守り切ることだけを考えているチームがその目的を成し遂げられることはそれほど多くないのが現実です。
結局先制された直後に交代出場のサンティ・ミナとデニス・スアレスのコンビネーションから同点ゴールを叩き込んで引き分けを手にしたセルタは、たしかにフラン・エスクリバが言う通り「アグレッシブさ」は失っていなかったと言えるでしょう。
フラン・エスクリバ監督の試合後記者会見
困難なアウェーで貴重な勝ち点1を積み上げることに成功したセルタのフラン・エスクリバ監督は、試合後の記者会見で試合内容と結果に満足しているとコメントしています。
試合結果について
試合結果には非常に満足している。特に選手たちが示してくれたプレーや結果は素晴らしいものだった。彼らの努力には敬意を表さなければならないし、チームが見せてくれたものが私を落ち着かせてくれた。特に今日は様々なものが非常に困難な状況にあったのだから。
午後20時にキックオフされた試合は33度の猛暑の中で行われており、試合中に2回のクーリングブレイク(給水休憩)が設定されるなど選手やレフェリーの健康面に対するケアも行われる状況でした。
事実、後半にはセルタのウルグアイ人DFルーカス・オラサが脱水症状と思われる体調不良のために交代を余儀なくされており、試合中の全選手が見せた発汗状態はいかに試合中のピッチレベルにおける気温が高く厳しいものだったかを如実に表していました。
アラウホとオラサの状態について
後半に負傷で交代したメキシコ代表DFネストル・アラウホと、前述のルーカス・オラサの状態に関して、フラン・エスクリバ監督は
ネストルは体調はよかったが交代を求めざるを得なかった。
ルーカスの状態はブライアン・ヒルとの衝突は強いものだったために交代せざるを得なかったが状況は悪いものではない。
とコメント。
一部にはアラウホの負傷は大腿二頭筋の肉離れではないかとの疑いもありましたが、現時点ではメディカルスタッフの診断を待つ状況になっています。
ルーカス・オラサの交代も、セビージャのMFブライアン・ヒルの手が頭部に強く当たったことによる脳震盪の疑いもありましたが、試合終了時点でのセルタメディカルチームの見立てでは脱水症状を起因とするものだろうとの見解が示されており、アラウホもオラサも今のところは重大な負傷や次節の出場に影響を及ぼすものではなさそうです。
試合の総括
確かに我々のチャンスは非常に少なかったのは事実だが、いつものようにGKルベン・ブランコの素晴らしいセーブがあったおかげでセビージャにも印象ほどのチャンスがあったわけではないと思っている。
特に試合開始後の30分間は思ったようにプレーすることができずにセビージャ陣内まで攻め上がる回数が少なかったのは事実だ。
だが30分から45分にかけては我々も自分たちのリズムを取り戻すことができたし、そのことが後半に良い影響を与えた。
試合終了までの約15分間は(オラサの負傷離脱による影響で)1人足りない10人でのプレーを強いられることにはなってしまったが、幸いなことにセビージャもそれを活かしたビッグチャンスを作ることはできなかった。
しかし、当然我々も攻撃的なプレーをもっとしたかったということは間違いない。
フラン・エスクリバ監督は上記のように試合に関してコメント。
前半30分までのボール保持率は概ね66%:34%程度でセビージャが圧倒しており、試合の流れは完全にセビージャにあるように思われていましたが、数字の印象とは裏腹にガーナ代表DFジョセフ・アイドゥーが落ち着いた素晴らしい守備を披露しており、エスクリバの言う通り決定的なゴールチャンスを与えていたわけではありませんでした。
セビージャ戦を見ている限りではネストル・アラウホとジョセフ・アイドゥーのセンターバックコンビは非常に効果的に機能しており、昨シーズンまでの不安定さが払拭されつつある印象を受けます。
オラサの離脱後に、それ以前からすでに交代で出場していたDFウーゴ・マージョがヘスス・ナバスとブライアン・ヒルの対策で左サイドに移ったことによりデニス・スアレスのポジションがさほど下がらずにプレーエリアを維持できるようになったことが好影響も及ぼしていました。
もともとフラン・エスクリバはデニス・スアレスの守備面での負担を軽減したいと常々発言し、そのためにセントラルMFに守備力の高い選手を獲得する必要性を口にしていたわけですが、セビージャ戦の試合終了間際に期せずして実現したフォーメーションによって、エスクリバが望む環境が用意されればセルタの攻撃面ではよりよい影響が出るであろうということが示された形です。
開幕直前にフランスのリヨンからMFパペ・シェイクをレンタルで獲得しているため、シーズンが進む今後の展開とチームへのフィット状況次第では、セビージャ戦で際立ったパフォーマンスを見せていたMFフラン・ベルトランとの選択に悩むことになるのかもしれません。
アウェーで勝ち点1をもぎ取ったことに対するコメント
サンチェス・ピスフアンで勝ち点1を上げることができたことと、開幕の3試合で勝ち点4を積み上げることができたことは評価できる結果だと言っていいだろう。
今後に関して最も重要なことは戦い続けることと、チームとしてより前に出ていくことだ。
まだ美しい試合をできているわけではないが、チームとしてのプレーは向上し続けている。クラブとしてもチームとしても、今の状況に対してはポジティブな見方ができるだろうし、チームとして示しているプレーの質にはいまのところ満足していると言っていい。
フラン・エスクリバはひとまず開幕の厳しい3連戦を1勝1分1敗、勝ち点4で乗り切ったことに満足を示しつつも、今後このリズムを落とすことなく前に進まなければならないと気を引き締めているようです。
確かに開幕戦のレアル・マドリー戦、第2節のバレンシア戦、そして第3節のセビージャ戦という3連戦はあまり望ましい開幕の形ではありませんでした。
チームとしても選手個々としてもコンディションがまだ整いきっていない中でラ・リーガ屈指の3チームと連戦するというのは決して簡単なスタートとは言えません。
しかし、その厳しい連戦において勝ち点を地道に積み上げることができたというのはむしろポジティブに受け止めていいものでしょう。
問題は第4節〜第6節にかけてのグラナダ、アトレティコ・マドリー、エスパニョールと続く次の3連戦です。
国際Aマッチウィークの影響で第4節は9月15日に行われますが、その間に負傷者の回復と戦術の組み直しが行われて然るべきで、それはセルタのみならず対戦相手にとっても同様です。
特に第5節のアトレティコ戦はアウェーで行われますし、ジョアン・フェリックスという才能あふれるプレーヤーを手に入れたアトレティコの攻撃陣を、セルタのディフェンスがどう防ぐのかというのが注目点になるはずなので、センターバックの組み合わせや中盤の構成も含めて、フラン・エスクリバ監督にとっては気の休まらない時間が続くことになります。
セルタとしてはまず第4節のグラナダ戦をバライードスで勝利し、精神的に余裕を持った状態でワンダ・メトロポリターノに乗り込みたいところでしょう。
今後もセルタファンとしては気の抜けない試合が続きますが、それでも今シーズンのセルタには昨シーズンにはなかった何かを期待できそうな気もしています。