【セルタ】2020−2021シーズンのセルタを振り返る(1)で20−21シーズンの前半を振り返りました。
後半戦を振り返り、目前に迫った2021−2022シーズンをセルタがどのように戦うことになるのか、その展望について個人的に分析します。
2021年1月〜3月のセルタ
2020年11月以降、4連勝を含んだ快進撃でセルタは最下位から一気にジャンプアップを果たし、ファンの間では「今シーズンの残留はほぼ固いのではないか」という楽観的な観測が生まれました。
一方では2018年から続く残留争いに疲れているファンからの「どこで躓くかわからないから油断はできない」という悲観的な慎重論も出ていたのは確かです。
2000年代初頭であればともかく、2000年代中盤以降のセルタはとにかく不安定なクラブになっていました。2004年の降格時こそ1年で復帰したものの、2007年に喫した2000年代2度目の降格は5年間続きましたし、その5年間にセルタはあわやセグンダB降格というところまで追い詰められていたからです。
セルタの順位が長年に渡り不安定だった最大の原因は「連勝が少ない」ことと「連敗が多い」ことでした。
1試合目が覚めるような試合を見せてもそれが続かず、ここで連勝できれば流れに乗れるというところで勝ちきれず、逆にそこから連敗するということがよくあったからです。
残念ながらその悪癖が2021年1月〜3月まで再び顔を見せることになりました。
2021年始めの負傷と連敗
年明け1試合目の第17節レアル・マドリー戦。残留のためには負けたくはない試合でしたが、勝てる相手でもないというのが現実的なセルタ側の認識でした。
勝たなくてもいいというわけではありませんが、無理に勝利を狙いに行って余計な傷を負うのも避けたいというのが僕の正直な気持ちとしてありました。
試合の入り方は悪くなかったものの、終わってみれば0−2。しかも大黒柱のアスパスが左大腿二頭筋裂傷という負傷を負い、少なくとも1ヶ月の離脱が確定。
さらに続くコパ・デル・レイのイビーサ戦に5−2で敗北し、1月21日の第19節まで公式戦という括りでは4連敗を喫します。
年明けの悪い流れはこれだけに留まらず、更に追い打ちをかけるような事実が明らかになります。
移籍市場での誤算。左サイドバックとの別れ
18−19シーズン以来、不動の左サイドバックとしてセルタの攻守を支えてきたウルグアイ人のルーカス・オラサが突如退団します。
アルゼンチンのボカ・ジュニオルスからローンで加入していたオラサの契約にはもともと買取オプションが含まれており、買取金額は400万ユーロに設定されていました。
コロナ禍での収入減に伴い、セルタはボカと1年間のローン延長とシーズン終了後の買取オプション行使を前提にしていたのですが、この契約には「シーズン中、50%の試合に出場した場合はその時点で400万ユーロを支払い買取とする」という条項が含まれていました。恐らくコロナ禍が20−21シーズン前半戦の間に一定の落ち着きを見せ、観客のスタジアム入場が許可されることになれば捻出できるという目算でセルタ側はこの条項を飲んだのだと予想しますが、残念ながら目算は外れます。
シーズン中の400万ユーロによる買取という選択肢を諦めたセルタはオラサとの契約を延長せず、ボカに400万ユーロを支払うことで合意したバジャドリーへ完全移籍で放出することになりました。
ノリート以外に左サイドFWを満足行くレベルで務められる選手がいなかったため、ポルトガルのベンフィカで半ば構想外の扱いを受けていたアルゼンチン人FWフランコ・セルビの買取オプション付きローン契約がほぼ決まっていたものの、ベンフィカのチーム内で発生したクラスターの影響で急遽セルビを戦力として確保しておきたいとしたベンフィカはセルタとの仮契約を破棄します。
これにより左サイドの駒は足りないまま後半戦を戦うことになりました。
新戦力の奮闘と既存選手の奮起
幸いなことに、センターフォワードとしてアルゼンチン人FWファクンド・フェレイラ、右サイドFWとしてアルゼンチン人FWアウグスト・ソラーリを獲得できたため、戦力の上積みがされないままということがなかったのは幸運だったと言えるでしょう。
肯定的な意味での誤算だったのは、フェレイラ、ソラーリと同時にドイツのマインツからローンで加入していたアーロン・マルティンが想像以上にフィットしたことでしょう。
オラサはディフェンス面よりも攻撃面でより貢献度の高い選手でしたが、アーロンは攻守に高いレベルで安定感を発揮。むしろ守備面での安定感が目立つことになりました。だからと言って攻撃面での貢献度が低いかと言えばそうではなく、一定レベル以上の高いレベルで攻撃時にも左サイドで存在感を発揮することになったのです。
この時点でセルビが加入していれば恐らく1月の結果は少し変わったものになっていたのではないかと思いますが、それは結果論に過ぎません。とにかくアーロンの存在にセルタの左サイドは救われることになり、それが後半戦を通じてチームの鍵になりました。
既存の選手達が大きく飛躍、あるいは復活したのも収穫でした。
コウデ就任以降、ウーゴ・マージョ、ブライス・メンデス、サンティ・ミナ、デニス・スアレスの4人はそれまでが嘘のように輝きを放つようになります。
特にブライスとミナは前線での躍動感を高め、ゴールに直結するプレーが増えました。最終的にブライスは9ゴール。ミナは12ゴールをあげ、アスパス不在時のみならず復帰後も前線のオプションを増やすことになりました。
デニスは中盤でよりバランサーとして機能するようになり、19−20シーズンよりも一列下がった位置でプレーしながら、4−1−3−2に変わったチームのフォーメーションをより活かせるスタイルを身につけたことで攻撃陣全体に厚みと安定感が増すことになりました。
掴み取った5連勝。芽吹き始めた自信
アスパスが復帰し、これまでアスパスに依存しがちだった前線の3人が「独り立ち」したことで、セルタはより流動的かつ能動的にゴールを目指せるようになったと言えるでしょう。
そしてそのベースにあったのはコウデが徹底させたディフェンスの意識にあり、前線から激しくプレスをかける動きがチーム全体に浸透したことで、恐らく「このままやれる」という自信が身についたのだと僕は考えています。
「このままやれる」というのは「このやり方で上を目指せる」という意味です。
実際にシーズン終了時の最終順位はここ数年ではベストと言えるものでしたし、歯車の回り方次第では16−17シーズン以来のヨーロッパリーグ進出も現実味を帯びて考えられるレベルに到達しようとしていました。
現在のセルタに所属する選手達には未踏のレベルであり、欧州カップ戦の出場権を視野に入れながら戦うというのは初めての経験だったわけですが、結果的に進出はできなったとはいえ来シーズンに向けて非常に良い経験になったと言っていいでしょう。
コウデが作り上げたチームの決まりごとを守ることで十分に戦えるという事実は、チームに自信を与えました。その結果として数年間お目にかかったことのない「5連勝」という結果を成し遂げましたし、5連勝目は苦手とするカンプ・ノウであげたものです。
わずか2,000人ではありますが、最終節でバライードスに観客が戻ってきた試合で勝利はできなかったものの、ある意味でシーズン全体を通してセルタはこの3年間で初めて「1つの一貫したチーム」を作り上げることができたのだと僕は考えています。
シーズン中に監督交代を行ったことは変わりませんが「このままやっていけば来シーズンは問題ない」と確信できたのは今シーズンが初めてだったと言えるでしょう。
2021−2022に向けて
2021−2022シーズンに向けて、セルタはベンフィカからフランコ・セルビ。チリのコロコロからGKマティアス・ディトゥーロ、ウエスカから左サイドバックのハビエル・”ハビ”・ガランを獲得。
負傷しがちなGKのポジションを補強し、本当なら冬に来るはずだったセルビを逃さず、最も安定が必要な左サイドバックに期待のスペイン人を獲得するという盤石ぶりです。
21−22シーズン開幕前のプレシーズンマッチは3試合が組まれ、仕上げの試合としてイングランドのウォルバーハンプトン・ワンダラーズと戦いました。
この試合ではハビ・ガランが想像以上に左サイドでフィットしており、なおかつ攻守に渡り十分な運動量で貢献しているのが衝撃的でした。
右サイドはウーゴ・マージョ、ブライス・メンデス、イアゴ・アスパス、デニス・スアレスの4人が流れるようなタッチで崩しを行う場面も多く、ディフェンス面でも昨シーズンより一列前から激しいプレスを全員が連動して行う様子が目立ちます。
フィジカルに優れるイングランドのチーム相手に競り合いで一歩も引かずに戦う様子は、これまでのセルタとは一味違う様相を呈していました。
これをもって「今年はいける」などと考えるのは早計ですが、少しの期待をもって開幕を迎えられそうな気がしています。