一体どっち?スペイン語のわかりにくい発音の話【スペイン語-その(5)-】

スペイン語学習

スペイン?南米?どっちが正しいのか迷うスペイン語の発音

前回の記事「初心者向けスペイン語の発音。正しい発音を知ろう。【スペイン語-(4)-】」では、スペイン語の発音は基本的にローマ字読みでOKと書きました。

初心者向けスペイン語の発音。正しい発音を知ろう。【スペイン語-(4)-】
外国語を学習していて必ず悩み迷うのが「発音」と「読み方」です。ですが、スペイン語の場合はどちらも非常にシンプルでわかりやすく、日本人にも馴染みやすい発音と読み方になっています。スペイン語の発音と読み方について簡単に解説しました。

実際その通りではあるのですが、おそらくこの先スペイン語の学習を続けていきヒアリングなどを経験したり、スペイン語の圏の人と話す機会が持てるようになると「あることに」気づく方も出てくると思います。学校で勉強していても独学していても、いつかは必ず気がつくことになる問題があります。

それが「一体どっちで発音するのが正しいの?」という問題です。

実はちょっと違うスペインと中南米の発音

スペイン語を勉強したことがない人にはわからない点なのですが、同じスペイン語を話すとは言ってもスペインと中南米では微妙に発音が違います。

これはスペイン語を話せるようになると比較的すぐにわかるようになる違いです。市販の参考書や問題集などでは、触れているものと触れていないものもあるので、独学の方は混乱することもあるかもしれません。

では一体何が違うのでしょうか?

それは「さ行」の発音と「語末のD」の発音です。前々回「スペイン語学習、基礎の基礎。まずはこれを覚えよう【スペイン語-その-(3)-】」の記事でこんなことを書きました。

嫌な予感がした人もいるかもしれませんが、「さ行」にも書き方が複数あります。

SA、ZA
Si、CI、ZI
SU、ZU
SE、CE、ZE
SO、ZO

「か行」の「き」「け」で使われなかった「C」がここで登場します。

ここで「Z」が出てきたのを見て、勘のいい人なら気づくかもしれませんが、「ZA」が「さ」なら、「ざ」は?と思うかもしれません。答えを言うと、「スペイン語に”ザ行”はありません」。

スペイン語学習、基礎の基礎。まずはこれを覚えよう【スペイン語-その-(3)-】
スペイン語の学習を始めるにあたって、まず覚えるべきことを書きました。「読み方」がわからないとその後が進まないのはどの言語でも語学でも同じです。まずはスペイン語の読み方を覚えて、わからない単語を調べるための下準備を進めましょう!

「さ行」で使うアルファベットはC、S、Zの3つ。すべて「さしすせそ」に使い、「ザ行」はありません。実際問題として、日本語の「さしすせそ」で発音しても全く何の問題もないのですが、ここにスペイン人と中南米での発音の違いがあります。

「TH」発音が苦手な人は中南米式でOK

中学高校で英語を勉強していた時、「Thing」「や「Think」など、舌の先を上下の前歯で軽く挟むようにして発音する、いわゆる「TH」発音が苦手だった方も多いことでしょう。日本語には存在しない発音なので口も慣れていませんし、なかなかこの発音に苦労したという話はよく耳にしますよね。

スペイン語にもこれとほぼ同じ発音の仕方をするものがあり、それが「さ行」なんです。

スペイン語で「ありがとう」のことを「Gracias=グラシアス」と言いますが、スペインではこの「CI=シ」の部分が「TH」発音になります。「グラThiアス」とでも書けばいいのでしょうかwこの「TH」発音は、厄介なことに「CI、CE」と「ZA、ZI、ZE、ZU、ZO」だけでしか使いません。「SA、SI、SU、SE、SO」はごくごく普通の日本語「さしすせそ」発音で良いという面倒なルールがあるのです。

ただし、これはスペイン限定の話。中南米の場合だと「C」だろうと「Z」だろうと「S」だろうと全部日本語の「さしすせそ」発音で通じます。ですから、スペイン語ネイティブと話している時に「さ行」を「TH」発音する人がいたらスペイン人である可能性が高いと見分けることができます。

「アルゼンチン訛り」「ウルグアイ訛り」発音について

中南米の発音という点で言うと覚えておいて損をしないのが「アルゼンチン訛り」と「ウルグアイ訛り」発音についてです。

スペインでは「TH発音」するものも中南米だとそうではないと書きましたが、中南米でも特殊な発音の癖を持つのがアルゼンチンとウルグアイです。

「ジャ」「ジェ」「ジュ」「ジョ」はそれぞれスペイン語のアルファベットで「Ya、Lla」「Ye、Lle」「Yu、Llu」「Yo、Llo」と書きますが、これら全てをアルゼンチンとウルグアイでは「シャ」「シェ」「シュ」「ショ」と発音します。

「私」を表す「Yo(ジョ)」のことは「Yo(ショ)」。

「雨」を表す「Lluvia(ジュビア)」のことは「Lluvia(シュビア)」。

「鍵」を表す「Llave(ジャベ)」のことは「Llave(シャベ)」。

そして、このような発音の癖を持つのはアルゼンチンとウルグアイだけです。ごく一部、アルゼンチンとの国境に近いチリの一部ではこの癖がチリ側にもあるようですが、これは例外中の例外でしょう。

アルゼンチンはこの発音の癖の他にも、スペイン語そのもののイントネーションが独特で、単語や発音はスペイン語なのにイントネーションやリズムがイタリア語に非常によく似ているという特徴があります。

アルゼンチンはスペイン、イタリア、ドイツなどの移民が元になって構成されてきた国であることから、母国語としてはスペイン語が生き残ったものの、名字にはイタリア系とドイツ系も多く残っており、なおかつイントネーションやリズムにはイタリア語のエッセンスが残ったという非常に興味深い特徴があるのです。

「語末のD」の罠

そしてもう一点いつか気づくことがあるだろうということがあります。それが「語末のD」です。

「初心者向けスペイン語の発音。正しい発音を知ろう。【スペイン語-(4)-】」

という記事の中で、最後のDは読まないと書きましたが、すペン人の中にはこの「語末のD」を本当に微妙に発音する人達がいます。諸説ありますが、スペインの首都マドリーのあるカスティージャ地方の人達はこの「語末のD」を本当に微妙に発音することが多いと言われています。

どう発音するのかと言うと、この「D」を聞こえるか聞こえないかぐらいの「TH」で発音するのです。母音がつかないので日本語で表記するのは難しいのですが、強いて書くとすれば「」です。

「ス」ではなく、「」です。

”Madrid”であれば”マドリー”。

「真実」という意味の”Verdad”であればどうでしょうか?

そう。答えは”ベルダー”。

しかもこれは「さ行」の「TH」発音と同様にスペイン人独特の発音であり、同じスペイン人でも全くDを発音しない人達もいます。

でも、安心してください。あくまでもこれは豆知識として知っておくだけで大丈夫です。「へえ〜」と読み物として読み飛ばしても全く問題ない内容です。もしあなたがスペインに住むことになればそれっぽい発音になるでしょうし、中南米のどこかに住むことになれば、中南米よりの発音になります。

そして、どちらの発音をしようがスペイン語であることには変わりありませんから、ちゃんとスペイン人にも中南米の人にも意味は通じます。

なんだかんだで「スペイン語はスペイン語」

繰り返しになることと、余計なことを書いて混乱させてしまったかもしれませんが、あくまでもこの記事は閑話休題の軽い読み物程度に思ってもらって構いません。

「スペイン語を勉強するなら本場のものを」と思う方がいるかもしれませんが、もはや現代では「どちらが本当の正しいスペイン語か」というのはあまり意味のない考えだと言えるでしょう。

例えば日本に住む外国人が各地方の方言や訛りで話していたとしたら印象に残りますし、ちょっと仲良くなってみたいと思いませんか?それと一緒で、スペイン国内の訛りや特定地方の発音の癖などが染み付いて話していると面白がられたりしますし、中南米的な言い回しなどをスペイン人と話している時に使うと、それが話題になって盛り上がったりもします。

意味は通じるわけですし、なによりも「スペイン語はどこに行ってもスペイン語」なんですよね。今スペイン語を勉強している方は、無理にどちらかの発音に合わせるのではなく、自分が発音しやすくて「間違っていない」発音を身につければそれで全く問題ないです。

というわけで結論としては、「どっちが正しいの?」ではなく、「どっちも正しいのでどちらを身につけてもOK」です。

次回のスペイン語記事も読んでくださいね!

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