日本代表FW久保建英がラ・リーガ初出場
スペイン現地時間9月1日午後17時から行われたラ・リーガ・サンタンデール2019−2020第3節のバレンシア戦で、マジョルカにレンタル移籍で加入していた日本代表FW久保建英が交代出場し記念すべきラ・リーガデビューを飾っています。
78分に右サイドMFとして交代出場した久保ですが、バレンシアが2−0とリードした状況で際立ったプレーは見せることができませんでした。
加入後1週間が経過していますが、チームメイトとのコンビネーションがほぼなく、お互いにまだ理解しあえていない様子が色濃く出ていたように見えます。
ディフェンスで積極的にボールを奪取するなどチームのために貢献しようとする姿勢は見せることができていたため、その点は評価されそうですがゴールに向かうプレーを披露するチャンスに恵まれず、最終的に試合は2−0でバレンシアが勝利して終了しています。
ビセンテ・モレーノ監督のコメント
久保に関しては彼にとって難しい試合でのデビューだった。
交代出場させることによってチーム全体の改善を狙ったつもりだったが、残念ながら狙った結果にはならなかった。
加えて数人の選手とは初めて一緒にプレーする日だった。彼が本領を発揮するためにはもう少し時間が必要だろう。
マジョルカの指揮官ビセンテ・モレーノはこのようにコメントし、現実問題として久保にとっては厳しい状況の中での交代出場とリーグ戦デビューであったことを認めています。
もちろんこれは事実だろうと僕も思いますが、監督自らこうした状況の説明をしながら久保には時間が必要であることを示したのは悪くないのではないでしょうか。
言葉の裏側を敢えて読み取ろうとすれば、「今後も出場時間、もしくは全体練習等でのプレー機会を増やし、できるだけ多くの選手同士で相互理解を高めた上で実力を発揮する機会を見定めたい」と言っているように受け取れなくもありません。
そして何より重要なのは、こういったコメントを出せる指揮官のいるチームに久保が所属しているということでしょう。
セグンダAからの昇格チームはほぼ100%プリメーラでの初年度目標を残留に定めます。
残留のためには勝ち点が必要で、勝ち点を取るためには安定したチームを構築しなければなりません。
安定したチームを構築し勝ち点を稼ぐために手っ取り早いのは、超越的なプレーをできる特別な選手の加入か、そうでない場合は連携が固まっている既存の選手を中心としたラインナップが基本となる場合がほとんどです。
そこに買取オプション無しのレンタル加入選手が入ってきた時に積極的に起用の意思を示せる監督がどれほどいるのだろうかと考えると、少なくともビセンテ・モレーノに関してはその数少ない(であろう)監督なのではないか、と考えることができると思うのです。
実際にビセンテ・モレーノは試合後の記者会見で下記のようにも語っています。
クリスティアーノ・ロナウドやネイマール、メッシのような選手が手に入るのなら私だって欲しいに決まっている。しかし残念なことに彼らには彼らの所属する環境がすでに存在する。
私にとっては現在マジョルカに所属している選手たちがベストの選手たちであり、どんな監督でも”何かが足りない”と感じ、なおかつ今以上のものを求めるものだ。
非常に哲学的且つウィットに富んだ言い方で記者からの「もっとクオリティの高い選手は求めないのか」という質問を交わしたビセンテ・モレーノの語彙力と表現力に脱帽です。
以前の記事「【マジョルカ】指揮官ビセンテ・モレーノの経歴について」で、僕はビセンテ・モレーノ監督のキャリアについて紹介しました。
この記事で紹介した通り、ビセンテ・モレーノは選手としてのキャリアをバレンシアBでスタートさせており、最終的にはシェレスでクラブを代表するセントラルMFの選手としてキャリアを終えています。
つまりこの試合はビセンテ・モレーノにとっては「古巣への凱旋」という形でもあったわけですが、その件について質問された際には下記のようにコメントしました。
故郷に戻ってくるというのはいつでも特別な体験だ。
もうだいぶ昔になるが私もバレンシアの一員としてここにいた。だがそれももう過去の話だ。
選手としてでも監督としてでも、ここに戻ってくるのはいつも特別な体験だし私は気に入っている。
簡潔に冷静な回答をするあたりがビセンテ・モレーノの人間性をよく表していると言えるのではないでしょうか。
国際Aマッチウィーク中のトレーニングに久保は参加できず、実際にはチームとしての連携を深めるまでにはまだ時間がかかりそうな気はしますが、僕はこの監督のもとで久保がどのように自分を表現していけるのかが少し楽しみです。