久保建英の新しい指揮官となるビセンテ・モレーノ
日本代表FW久保建英が、所属先であるレアル・マドリーから今シーズン終了までの期限付きレンタル移籍をすることになったマジョルカ。
そのマジョルカは1997-1998シーズンから2012-2013シーズンまでプリメーラ・ディビシオンでプレーしていましたが、その後は2018-2019シーズンまでセグンダA、特に2017-2018シーズンはセグンダBまで降格し苦しんできました。
しかし2017-2018シーズンにセグンダBでプレーすることが決まってから就任した現指揮官ビセンテ・モレーノによってチームは急激に立ち直り、2018-2019シーズンのセグンダAでは5位となって昇格プレーオフに回ったものの、その昇格プレーオフ決勝第2戦で劇的な逆転勝利を飾りプリメーラ・ディビシオンへの復帰を決めています。
スペインリーグのセグンダ・ディビシオンBは他国では「3部リーグ」に相当するリーグで、全国リーグではありません。
スペインをエリアで複数に分け、エリアごとのリーグ戦を行った後に上位チームによる昇格決定戦が行われ、それにより他国で言う「2部リーグ」にあたるセグンダ・ディビシオンAへの昇格が決まります。
セグンダAは基本的にほぼ全員がいわゆる「プロ選手」ですが、セグンダBの場合は選手の待遇もスタジアムなど設備の面でも、「アマチュア」「セミプロ」のクラブもあるため、セグンダAからセグンダBへの降格はセグンダBの過酷な環境を考えると再浮上は非常に難しいとされています。
その環境から2年連続で「昇格」を成し遂げたチームは1928年に開始されたスペインにおけるサッカー全国リーグの歴史において数えるほどしかなく、その意味でここ3年で見せたマジョルカの劇的とも言える復活劇は刮目すべき実績だと言えるでしょう。
選手、監督としてのキャリア
ビセンテ・モレーノは1995年にバレンシアBで選手としてのキャリアをスタート。右サイドMFとしてプレーを始めましたが、次第にポジションを中央に移していき、最終的には守備的なセントラルMFとしてキャリアのほとんどをプレーすることになりました。
スペイン代表への選出経験はなく、現役時代はほとんどの時間をシェレスでプレーすることになっています。
2011年にシェレスで現役を引退した後は2011-2012シーズン終了までシェレスの監督を努め、その後は2013年にバレンシア州U-18代表チーム監督に就任。同年11月からジムナスティック・デ・タラゴーナの監督を努め、2016年12月に辞任。
そして2017-2018シーズンからマジョルカの監督として指揮を取り、昨シーズンの昇格を成し遂げました。
現役生活16シーズンの中でプリメーラ・ディビシオンでのプレー経験は2009-2010シーズンのみで、ほかはすべてセグンダAかセグンダBでのプレー。
ただし、最も長くプレーしファンからの支持を受けていたシェレスでは主力としてほとんどの試合に出場しています。
マジョルカでの勝率
マジョルカの監督としての成績は、2シーズンで92試合45勝27分20敗。
勝率としては48.91%となっており、勝率的には悪くありません。
試合数が多いセグンダB、セグンダAのことを考えれば、この勝率を実現できる監督はそう多くはないでしょう。
もちろん監督の力だけでチームが勝てるわけではありませんし、チームとして様々な要因が重なっての結果であることは間違いありませんが、チームとして結果を残せるだけの指導力がビセンテ・モレーノにあることもまた事実でしょう。
マジョルカの目標
今シーズン、久々にプリメーラ・ディビシオンに復帰したマジョルカの最優先目標はまず残留。
残留を実現できた場合には翌シーズン以降の中位以上への定着を再び目指していくことになるでしょう。
今回久保がマジョルカにレンタル移籍をしたことには、今シーズンのプリメーラ残留に貢献することも求められるのは間違いありません。
買取オプションがついていないことから、高い確率で久保は来シーズン開幕前にレアル・マドリーに戻ることになるでしょう。
久保としてはマジョルカのプリメーラ残留に少なくない貢献をすることでレアル・マドリーのクラブ首脳陣に対して、プリメーラでのプレーに耐えうることを示しながらマジョルカでの立ち位置を確保し、「1年後のトップチーム合流」というもともとレアル・マドリーで目指すはずだった目標の達成も目指していくことになるでしょう。
実力的にはセグンダBのレベルは超えているのではないかと僕は個人的に考えているので、チームにしっかりとフィットすることができ、フィジカルの面で通用するのかどうかをはっきりさせていけばプリメーラでのプレーに問題はないのではないかと思っています。
「自分の中ではすぐにプレーできる準備はできているつもりです」
とマジョルカ到着後の囲み取材に答えていた久保。
レアル・ソシエダとの第2節に出場するかどうかは微妙なところですが、日本人ファンとしては彼が早くラ・リーガのプリメーラ・ディビシオンでプレーする姿を見てみたいものですね。