新加入選手が実戦デビュー
スペイン現地時間7月20日、ポルトノーボにおいてセルタ・デ・ビーゴが今シーズン初のプレシーンマッチを行いました。
相手はルーゴを本拠とするデポルティーボ・ルーゴ。
2019−2020シーズン開幕まで一ヶ月を切り、7月8日から始まったトレーニングの結果を一度確認する意味で設定されていたルーゴとの一戦は、ルーゴのオウンゴール、サンティ・ミナの復帰後初ゴール、そしてイアゴ・アスパスのPKにより3−0でセルタが勝利しました。
数人の選手達はまだ体ができあがっておらず重さを感じさせる動きではありましたが、特に後半に出場したメンバーの安定感は十分。
バレンシアへのレンタルから戻ってきたDFファクンド・ロンカリアは今シーズンのDFラインに安定感を与えてくれそうな落ち着いたプレーを見せていましたし、左サイドバックのルーカス・オラサはやはりこのポジションでのファーストチョイスであることを確信させる出来。
バイエルン・ミュンヘンが獲得を狙っていると噂されているブライス・メンデスも抜群のバランスを中盤にもたらしており、前半はバタついていたチームのリズムをしっかりと引き締める役割を果たせていました。
目を引いたのはカンテラからトップチームのプレシーズンキャンプに参加しているメンバーで、特にモリーナ、パンピン、カレイラはひょっとしたら今シーズンのトップチームデビューがあり得るのではないかと思えるほどの十分なプレーを披露しています。
復帰後の実戦お披露目となったサンティ・ミナは自身にとっての「アイドルだ」と公言するイアゴ・アスパス、そしてピオネ・シストとのパス交換から鋭く右足のシュートで復帰後の初ゴールを記録しており、コンディションの良さをアピールしています。
バルサからセルタに復帰したデニス・スアレスも中央から左サイドにかけて効果的なボールキープとドリブル、シュートにパスとここ数シーズンに渡ってセルタになかったプレーを随所に見せており、1人でキープして展開できる能力の高さを改めて示しています。
カンテラ強化プロジェクトの様々な効果
移籍で加入した選手が多かった前半と比較して、カンテラ出身者が多くを占めることになった後半のセルタは前半よりもボールの受け渡しやプレーの連動性に優れており、流れるようなプレーを多く生み出すことができていました。
特にフベニールで登録されている選手達とイアゴ・アスパス、サンティ・ミナとのコンビネーションは全く違和感がなく、アスパスやミナが意図的にカンテラ組の選手達を使おうとしていた雰囲気があったにせよ、右サイドバックとしてはつらつとしたプレーを見せていたカレイラのプレーは、このままトップチームで出場しても通用するのではないかと思えるほどのものだったと僕は思っています。
後半、ブライス・メンデスを中心にしたパス回しや、サイドに一度開いてからボールを持った選手が中に入り、アスパスやミナがサイドに流れてコースを開け、そのスペースを上手く使ってゴール前に侵入するというリズムは1998年〜2000年代初頭、UEFAカップに連続出場していた頃の雰囲気を想起させるものでもありました。
これは「そういうプレーができる選手を集めた」ということではなく、「そういうチームを作るためにクラブが育ててきた」結果であることは間違いありません。
2006年のカルロス・モウリーニョ会長就任から始まった「カンテラ強化プロジェクト」はこの数年で花開き始めており、今回のプレシーズンマッチで見せたフベニール組の共通したプレースタイルやトップチームの選手達と見せたコンビネーションは、セルタのカンテラ強化策が間違っていないことの証明でもあると言えるでしょう。
印象的だったのはミナとアスパスのコンビネーションです。
4年間別のチームでプレーしていたとは思えないほどミナとアスパスは自然にポジションチェンジとボール交換を行っており、これはまさにカンテラをベースにしたプレー思考がトップチームに浸透しつつあることを意味していると考えられます。
「チームのスタイル」とはトップチームから下に落とし込んでいくのではなく、目指すスタイルに向けて下部組織から積み上げていくことがより強いものになるのは過去に様々なクラブが証明しており、現在のセルタが行っているカンテラの強化策は間違いなく正しい方向の努力だと断言できるでしょう。
同じイメージを持った選手達が世代を超えてプレーするという理想的な環境を、セルタは徐々に構築しつつあります。
そしてこの計画が若手選手たちに「ここが自分の家だ」と感じさせることになっており、サンティ・ミナやデニス・スアレスが何度も強調して「家に戻ってこられて嬉しい」と口にするようになった理由でもあるはずです。
ガリシア人である彼らにとってビーゴとセルタはまさに「家」そのものであることは疑いのない事実で、バレンシアやバルサというビッグクラブでプレーすることよりも、「自分の家」でプレーし、その「家」を偉大なものにしていきたいという気持ちを育てることができていたことこそ、セルタがこの10年以上に渡って行ってきた施策の最大の成果なのではないか。
僕はそんなふうに思うのです。