【セルタ】ビジャレアル戦の勝利は”失われれたアイデンティティー”の復活なのか?

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アウェーのビジャレアル戦に1−3で勝利したセルタ

2019年11月24日、地中海沿岸のバレンシア州カステジョン県ビラ・レアル(スペイン語名ビジャレアル)に乗り込んだセルタ・デ・ビーゴは、1−3で勝利しました。

2017年1月までエル・マドリガルとして知られていたビジャレアルのホームスタジアム、エスタディオ・デ・ラ・セラミカでの勝利によってセルタは6試合ぶりの勝利と勝ち点3を獲得。

順位はまだ18位となっており降格圏外の17位マジョルカとは勝ち点差が2離れていますが、今シーズンのアウェー戦で初めての勝利を収められたことで暗い雰囲気だったチームは一変したように見えます。

オスカル・ガルシア監督の意図を体現していたセルタ

ビジャレアル戦前の記者会見で、セルタの監督としてリーグ戦2試合目の指揮を執るオスカル・ガルシア・ジュンジェン監督は、

ハードワークし、戦う姿勢を表現することが現在の状況を抜け出す唯一の手段であり、それこそが我々全員の当面の目標だ。

と語っていました。

「現在の状況」とは、言うまでもなく18位という降格圏内にいる事実であり、この状況から抜け出すためにはとにかく激しく戦わなくてはいけないというのがオスカルの主張だったようです。

試合はというと、たしかにオスカルの言葉通りのプレーだったように僕の目には映りました。

質の高い選手を揃えた今シーズンのセルタは、前評判こそ昨シーズンを上回るだろうと言われていたものの実際に蓋を開けてみれば18位という体たらく。

足元の技術があり、ゴールを狙えるセンスがあり、ピッチを俯瞰する能力を持つ選手たちを抱えながらもゴールを奪えずリーグ最低レベルの得点数。

ディフェンス面でも人材を揃えたにも関わらず失点を重ねていましたが、ビジャレアル戦では球際に強いだけでなくボールがよく動き、パスを受ける選手が基本的には常に前を向けるようなプレーが中心になっていたように思えます。

攻撃の形が見えない、と批判を受けることが多かったフラン・エスクリバ前監督時代のサッカーとは趣が異なるポジティブな変化は、試合を見ている立場からすると内容的に雲泥の差であり、今後の展開に期待が持てる内容だったと言っていいでしょう。

表面上は4−3−3というフォーメーションを敷き、これまでほぼ不動の組み合わせだったトルコ代表MFオカイ・ヨクスルとスロヴェニア代表MFスタニスラフ・ロボツカのコンビを崩し、オカイに替えてスペインU−21代表MFパペ・シェイクをロボツカの「相棒」に指名したオスカル。

パペ・シェイクはお世辞にもパスセンスがあるMFではありませんし、どちらかというと体を張ってブロックするような役割を僕は期待しているのですが、ビジャレアル戦に関してはその期待通りの働きをしていたように思えます。

中央にロボツカが陣取り左右両サイドにパスをさばける形を維持しながら、状況に応じて中央の3枚が2枚になり、左サイドに位置取るデニス・スアレスが前線に顔を出していく。

3人のFWのうち左サイドを任されたデンマーク代表FWピオネ・シストが突っ込み、空いたスペースをデニス・スアレスが使い、その後ろをウルグアイ人DFルーカス・オラサが埋める、というサイクルが確立しつつあるようにも見えました。

攻撃面ではサンティ・ミナが復帰したてで、ラフィーニャはビジャレアル戦ではまだ復帰していなかったためにメンバーとしては完全ではありませんでしたが、それでもチームの動きが見違えるようだったことは間違いありません。

デニス・スアレスからピオネ・シストへのスルーパス。セットプレーからのアスパス。そしてカウンターからのアスパス。

どれも今シーズンには見られなかったパターンのゴールであり(そもそもゴールそのものが少なかったわけですが)、次節以降でのプレーに期待が持てるものでした。

FARO DE VIGOは「アイデンティティーの復活」と報道

ビジャレアル戦翌日にビーゴの地元紙FARO DE VIGOの見出しを飾ったのは、

セルタは失われたアイデンティティーを取り戻した

という一文でした。

90年代末〜2000年代初頭のセルタを見たことのあるファンであれば何となくFARO DE VIGOが意図するところはわかると思うのですが、かつてのセルタはショートパスを繋ぎながら各選手が常に前を向き、両サイドをえぐりながら効果的に前線を目指すサッカーを得意としていました。

ハイプレスを繰り出し相手陣内でゲームを進める、という近代戦術的なサッカーではなく、とにかくボールを繋いで「前へ進む」ことを意図するサッカーとでも言うのでしょうか。

強固なディフェンスが後ろに控えている、というよりもボールを失うのも奪うのも極力センターラインよりも向こう側で、ということが徹底されていた結果として失点が少なく済んでいたというサッカーです。

長らく4−2−3−1というフォーメーションでプレーし、左右2枚の両翼が担当サイドをえぐるというサッカーを披露してきたセルタは、僕達ファンも結果を残してきたそのプレー内容を記憶に濃く留めています。

ビジャレアル戦は左サイドをシスト。右サイドをブライス・メンデスと時折入れ替わるイアゴ・アスパスがえぐっていく姿を見せたことによりチーム全体が流動性と積極性を取り戻していたように見えましたから、これをもってFARO DE VIGOは「失われたアイデンティティー」という言葉を使ったのでしょう。

故ヨハン・クライフの薫陶を受けてサッカー選手としてプロになり、引退後も監督としてこの世界にとどまっているオスカル・ガルシア・ジュンジェン監督は、上記の年代におけるセルタとも対戦経験があります。

「人間よりもボールを動かすべし」という格言を抱いてサッカーをしてきたオスカルと、「ボールを動かしながら点を取る」というプレーを長らく信条のようにしていたセルタ。

2019年のこの現在にこの両者が巡り合ったのは、もしかしたら何かが起きる前触れなのかもしれないと少し懐古的になりながら、僕は明日のバジャドリー戦を楽しみにしています。

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