コロンビア代表DFジェイソン・ムリージョを獲得
セルタ・デ・ビーゴは1月31日まで開いている冬の移籍市場において、イタリアのサンプドリアからコロンビア代表DFジェイソン・ムリージョを獲得したと発表しました。
“El equipo tiene condiciones para avanzar en la tabla”. ¡@JeisonMurillo19 ya es celeste! 💙 Escucha sus primeras palabras como jugador del RC Celta en nuestro canal de YouTube.
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— RC Celta (@RCCelta) January 16, 2020
期間は2020年6月30日まで。
買取オプション付きのレンタル移籍で、セルタのフェリペ・ミニャンブレスSDによれば「買い取り義務は無い」とのことです。
ジェイソン・ムリージョの経歴
セルタは現在センターバックのレギュラー候補としてメキシコ代表DFネストル・アラウホ、ガーナ代表DFジョセフ・アイドゥーの他、スペインU-21代表ホルヘ・サエンス、ダビ・コスタスを抱えています。
しかしサエンスは第4節のグラナダ戦で不運なレッドカードによる退場処分を喫して以降、当時のフラン・エスクリバ監督から信頼を失う形となってしまい調子が下降。
ダビ・コスタスも今シーズン何度か出場機会を得ており、不安定さが目立つわけではないものの安心してレギュラーを任せられるというレベルには未だ至っていません。
ムリージョは2014年からコロンビア代表に招集されており、ワールドカップへの出場経験こそありませんが2015年、2016年のコパ・アメリカに出場。
特に2015年コパ・アメリカ(チリ大会)では4試合に出場し、大会終了後にはベストイレブンにも選ばれています。
クラブレベルではデポルティーボ・カリ(コロンビア)→ウディネーゼ(イタリア)→グラナダ(スペイン)→カディス(スペイン)→ラス・パルマス(スペイン)→インテル(イタリア)→バレンシア(スペイン)→バルセローナ(スペイン)→サンプドリア(イタリア)という経歴を辿り、スペインでのプレー経験が長い選手です。
2017-2018シーズンのバレンシア移籍以降、残念ながら所属した各クラブでの出場経験にそれほど恵まれているとは言い難い状況ではあるものの、空中戦に強くスピードがあり、国際経験があるという点ではセルタの現所属センターバックであるホルヘ・サエンスとダビ・コスタスを一歩リードした存在だと言えるでしょう。
ムリージョ獲得の意図とは?
セルタがこのタイミングで新たに外国人センターバックを獲得した意図は何だったのでしょうか?
コロンビア人であるムリージョではありますが、彼は母国コロンビアとスペインの二重国籍取得者であるためEU圏内選手扱いとなります。
ジョセフ・アイドゥーとネストル・アラウホが現時点でレギュラーセンターバックとして出場している現状では、アイドゥー、アラウホ、そして左サイドバックのウルグアイ人DFルーカス・オラサと合わせて3名の非EU圏外選手枠が埋まっており、このことがウルグアイ人FWガブリエル・”トロ”・フェルナンデスの出場を難しくしていることは否めません。
深刻なまでに得点があげられていない現在のセルタにとってはトロ・フェルナンデスの有効活用が課題であり、そのためには非EU圏外選手枠の問題を解決する必要があります。
ムリージョの獲得によって上記の点は多少改善される可能性があると言えるでしょう。
例えば終盤に得点がほしい場面でアイドゥーかアラウホのどちらかとムリージョと交代させ、トロ・フェルナンデスの枠を空ける。
もしくはムリージョを先発出場させることでトロ・フェルナンデスにも先発出場の機会を与えやすくなります。
アイドゥーはEU・ACP間の国際協定である「コトヌー協定」にガーナとスペインが加入しているため、EU圏外扱いにはならないとご指摘を受けました。
EU圏内扱いとなるムリージョの獲得により、セルタは追加であと一人EU圏外選手を獲得できる余地を残したことになる、というのが正しい理解になります。 ※2020年1月17日修正 |
ジョセフ・アイドゥーも対人に強くスピードがあり、センターバックとしての能力には疑いの余地がないものの、第7節のエイバル戦で見せたように一瞬集中力を欠いたりする場面が少なくありません。
もしムリージョが2015−2016シーズンにインテルで見せていたような猟犬のようにボールに食らいつき、集中したプレーからボール奪取に絡む場面を多く作ることができれば、イアゴ・アスパス、サンティ・ミナ、デニス・スアレスのスピードを活かしたカウンターのチャンスを生み出すことも可能になるでしょう。
また、レギュラー陣2名の負傷対策という意味でもムリージョのような実績のあるセンターバックが控えているかどうかはオスカル・ガルシア・ジュンジェン監督にとっても好材料です。
今シーズンのネストル・アラウホは数回負傷に見舞われており、ファンとしては現在のサエンスとコスタスにレギュラーを任せることに不安を覚えざるを得ません。
もちろん蓋を開けてみなければムリージョが過去に見せていたような期待できるレベルにあるのかどうかはわかりませんが、少なくとも今の時点においてはサエンスあるいはコスタスよりもプレーの精度やクオリティーには期待できるのではないかと僕は考えています。
冬の移籍で後半戦のセルタは巻き返せるのか?
セルタのフェリペ・ミニャンブレスSDは、この冬の移籍市場で更に2名の選手獲得を狙っており、今回獲得したジェイソン・ムリージョも含めて全ての移籍を「買取オプション付きレンタル」で行うと記者会見で明言しています。
支出の節約という意味合いもあるでしょうが、完全移籍ではない、という点にクラブとして現状を深刻に受け止めていることがうかがえるのではないでしょうか。
得失点差でかろうじて17位に留まり、降格圏内からの脱出には成功したものの状況は予断を許しません。16位エイバルとの勝ち点差は4。15位アラベスとの勝ち点差が5であるため、1試合で状況が好転するとは限らない現状では降格の可能性を直視しておく必要があります。
完全移籍によって選手を獲得してしまえば移籍金の支払いや翌シーズンの給与支払いが発生し、それにより今シーズン開幕前にウルグアイ代表FWマキシ・ゴメスの売却等で得た利益を持ち越せなくなってしまう危険があるのです。
奇しくも昨シーズン終了後にセルタのカルロス・モウリーニョ会長がファンに向けたビデオメッセージで語った「2020−2021シーズン最大の目標はプリメーラ残留を決めること」という言葉通りの展開になっている今シーズン。
効果的なピンポイントの選手獲得で、昨シーズンの泥沼を避けるのが現時点での最優先課題です。
センターバック、右サイドMF、守備的なセントラルMFの獲得という課題を解決できた時、セルタが後半戦に巻き返せるかどうかが少し見えてくるのではないでしょうか。
特に右サイドMFと守備的セントラルMFは現在のセルタにおいて攻撃を活性化させるための補強必須ポイントだと僕は考えています。
このポジションに効果的な選手を獲得し機能させることができれば、モウリーニョ会長の「残留」という言葉は現実になると僕は思います。