【セルタ】今シーズンオフに史上最高額の投資を行う可能性。

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セルタ、来シーズンに向けてクラブ史上最高額の投資

ビーゴの地元紙FARO DE VIGOの報道によると、セルタはこのシーズンオフに少なくとも3人の攻撃的ポジションの選手を獲得する予定です。

さらに今シーズンオフの移籍で支払う金額が過去最高の金額に達する見込みとのこと。

過去の投資金額

財政的には厳しいセルタですが、実は昨シーズンもそこそこの金額を移籍に投じていました。

フラン・ベルトラン 850万ユーロ(約10億円)
ネストル・アラウホ 800万ユーロ(約9億5千万円)
オカイ・ヨクスル 600万ユーロ(約7億3千万円)
マティアス・イェンセン 500万ユーロ(約6億1千万円)

合計2750万ユーロ(約32億9千万円)。

エドゥアルド・ベリッソ前監督が去った2年前のシーズンオフにも2600万ユーロ(約32億円)の投資を行っていたセルタ。その際の獲得選手と投資金額は以下の選手達でした。

エムレ・モル 1300万ユーロ(約16億円)
スタニスラフ・ロボツカ 500万ユーロ(約6億1千万円)
マキシ・ゴメス 500万ユーロ(約6億1千万円)
ホサベ・サンチェス 400万ユーロ(約5億円)

合計2700万ユーロ(約32億円)。

エムレ・モル以外は主力としてコンスタントに試合に出場し一定以上のプレーを見せてくれたので、2年前の投資は成功だったと言っていいでしょう。

今シーズンオフはマキシ・ゴメスの売却はクラブの方針としてほぼ決まっており、ロボツカにもオファーが届いていると言われています。

特にマキシ・ゴメスの市場価格はこの2年間で5000万ユーロと10倍に跳ねて上がっており、クラブ経営の観点から考えればまさに今が売り時です。

逆に加入以降あまりインパクトのあるプレーを結果として残せていないエムレ・モルについては、クラブとしてもう少し奮起してもらい市場価値を上げて欲しいというのが本音でしょう。

今シーズンオフの投資金額は確定していないが、2年前を上回ることは確実

セルタは既にウルグアイのペニャロールからFWガブリエル・”エル・トロ”・フェルナンデスを獲得することが決まっています。ガブリエル・フェルナンデスの移籍金は350万ユーロ(約4億3千万円)。契約期間は4年間。

保有権の80%はペニャロールに残ることになっているため、合流後の活躍次第でこの保有権買い取りを行うかどうかはガブリエル・フェルナンデス次第といったところでしょう。

ただし、ガブリエル・フェルナンデスは昨年末に起こした重大な交通事故で実刑判決を受けており、現在はウルグアイ裁判所より出国禁止命令を受けています。

2018年シーズンに29試合12得点と結果を残していたガブリエル・フェルナンデスは、交通事故の影響があったにも関わらず2019年はここまで12試合5得点とそこそこの成績。

セルタとウルグアイ人選手は相性がよく、かつてのファビアン・カノッビオや現在のマキシ・ゴメスも含めてこれまで在籍したウルグアイ人選手は主力としてチームに貢献。ガブリエル・フェルナンデスにはクラブとしても「2人目のマキシ・ゴメス」として活躍して欲しいはずです。

前線のスケールアップが必要で、かつマキシ・ゴメスの放出がほぼ確定しているセルタにとってはイアゴ・アスパスと共に攻撃陣をリードできる実力をもったアタッカーの獲得が必要とされています。

ガブリエル・フェルナンデスに加えてセルタが獲得を模索しているのがセルタのカンテラ育ちで、現在バレンシアでプレーするサンティ・ミナです。

2015年にセルタからバレンシアに移籍したミナはコンスタントに試合出場を果たしているもののさらなる出場機会を求めていると言われており、バレンシアがマキシ・ゴメスの獲得を目指している状況の中で、セルタはミナの買い戻しを考えています。

ただ、1000万ユーロ(約12億円)で売却したミナを買い戻すために必要な移籍金がどの程度まで上がるのかが不透明な状態。

セルタが過去にFWの選手獲得に支払った最高額は2000年にマラガから獲得したFWカターニャの1500万ユーロ(約18億円)が最高額。

ミナの移籍に必要な移籍金は、少なくともカターニャ獲得に費やした1500万ユーロは超えると考えられています。

既に報じられている内容が真実だとすれば、セルタはマキシ・ゴメスの移籍金5000万ユーロを値下げするつもりはなく、この5000万ユーロを新選手獲得に投じる予定だと考えるのが妥当です。

そのため、FARO DE VIGOの見立てでは今シーズンオフの支払い移籍金がクラブ史上最高額に達すると見られているわけです。

実を結びつつあるセルタの経営戦略

カルロス・モウリーニョ会長の就任後、セルタは育成組織であるカンテラを強化してきました。就任から13年目を迎える今年、徐々にその効果が現れ始めています。

カンテラの強化とは具体的かつ端的に言うと「トップチームでプレーできるレベルのプロ選手をセルタの育成組織で育てる」ということになります。

カンテラからプロで通用するレベルの選手を輩出するというのは、何も「セルタでプレーする」ということだけを指すわけではありません。

どのチームであってもプロのトップチームは22〜25名程度の登録選手で構成されます。

2018年現在のスペイン全体の人口は4672万人。

ラ・リーガの一部リーグであるプリメーラ・ディビシオンは20チームですから、22名×20チーム=420人というのが、ラ・リーガにおけるトップレベルのプロ選手としての人数だと考えることができます。

つまり、この420人になるためには111倍の競争を勝ち残らなくてはなりません。

バルサのように「カンテラから常に有望選手が生まれてくる」と思われているクラブでも、例えばシャビ・エルナンデスやアンドレス・イニエスタ、リオネル・メッシのような代表クラスのハイレベルな選手が育つことは稀です。

それゆえに各クラブは自前で育てた選手だけではなく外部や国外から有能な選手を移籍で獲得するわけですが、これを繰り返して財政的に逼迫し、チーム強化が滞った末に降格したのが15年ほど前のセルタでした。

カンテラの強化が実を結びつつあると書いたのは、イアゴ・アスパスやウーゴ・マージョ、セルヒオ・アルバレスのことだけを言っているわけではありません。

ホタ・ペレテイロのアストン・ヴィラ移籍

先日イングランド・チャンピオンシップリーグのバーミンガム・シティから、アストン・ヴィラに移籍することが決定したホセ・イグナシオ・ペレテイロ・ラマージョことホタ。

2004年に13歳でセルタのカンテラに入団後、2013年にエイバルへレンタル移籍するとプリメーラ昇格に貢献する活躍を見せ、その後2017年にバーミンガム・シティへ移籍。そこでの活躍が認められて来シーズンからアストン・ヴィラでプレーすることが決まりました。

これは単に「セルタ出身の選手が成功を収めつつある」ということだけを意味するわけではありません。

現在ではFIFAが定めた国際ルールににより、「プロ選手の育成に携わったクラブには、当該プロ選手の移籍金の一部が支払われる権利が発生する」ことが決まっています。

これを日本では「連帯貢献金」と言いますが、この連帯貢献金は育成に関わったクラブが請求しないと支払われることがありません。

連帯貢献金の請求権が発生するのは12歳〜23歳の誕生日までにクラブに所属したことが条件となっています。

ホタの場合、13歳でセルタのカンテラに入団し、ブレントフォードに移籍するまでの10年間はセルタの所属でした。その間にプレーした全てのクラブはレンタル移籍の形だったため、所属と保有権はセルタに帰属していたわけです。

連帯貢献金は移籍金総額のうち最大5%を請求する権利が認められています。

12歳〜15歳までの場合 所属期間1年につき0.25%
16歳〜23歳までの場合 所属期間1年つき0.5%

さらにこの権利は、選手が「国外で」移籍する度に発生します。

仮に12歳〜23歳までセルタに11年間移籍した選手が他国へ移籍し、その後さらに移籍した場合に連帯貢献金を請求する権利がセルタに生まれるのです。

ホタの場合はまさにこのケースに該当します。

13歳でセルタに入団したホタは23歳の時にブレントフォードへ移籍。2017年にバーミンガム・シティへ移籍し、更に今年アストン・ヴィラに移籍しているのでセルタにはこの2回分の連帯貢献金請求権が発生しているのです。

ブレントフォード移籍前の移籍はレンタル移籍なのでホタの所属はセルタのままだったことは既に述べました。

したがって、13〜15歳までの3年間=0.25%×3年=移籍金の0.75%。16歳〜23歳までの8年間=0.5%×8年=4%となり、移籍金の4.75%を請求する権利が発生しています。

これによりセルタは、ホタのバーミンガム・シティ→アストン・ヴィラへの移籍により23万7000ユーロ((約2900万円)を受け取ることができます。

モウリーニョが会長へ就任した後、カンテラの強化に乗り出し「セルタ出身選手を増加させることがクラブの成長に繋がる」と発言したことの真意は、今回のホタの移籍による連帯貢献金を生み出すような事例に繋げていくことにもあったのだということがわかります。

この20年間でスペイン人選手が国外へ移籍するケースが以前よりも増えていますが、それがボスマン判決によるものだけではないということが、連帯貢献金の仕組みを知ることで納得できますね。

セルタはレアル・マドリーやバルサのように世界中にファンを持ち、グッズの売上などによりマーチャンダイズ収入を期待できるような規模のクラブではありません。

企業の経営者としても多くの経験を持つモウリーニョだからこそ、セルタのクラブ経営における基盤の1つとしてカンテラの強化を掲げたんだということが、僕にも最近ようやく理解し納得できるようになってきました。

細かいところでは不満があるのが確かなのはいまだに変わりませんが、とにかくセルタ・デ・ビーゴの経営基盤を安定させ、リーグ戦成績が上向くような施策を続けていって欲しいと僕は思っています。

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