【セルタ】新監督オスカル・ガルシア・ジュンジェンの経歴

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オスカル・ガルシア・ジュンジェンがセルタの新監督に。

2019年11月3日、セルタ・デ・ビーゴはフラン・エスクリバ監督を解任したと公式ツイッター、公式ウェブサイトで発表。

そして翌11月4日に新監督としてオスカル・ガルシア・ジュンジェンと2019−2020シーズン終了までの契約を締結したと発表しました。

フラン・エスクリバと今シーズンのセルタ

2019−2020シーズンここまでの成績が2勝3分け7敗。6得点15失点という惨憺たる成績のセルタは、地元メディアやファンからの批判をかわしながらこの1ヶ月間フラン・エスクリバ前監督を信頼していることをアピールしていたものの、とうとう18位という降格圏に入ったことを受けてエスクリバを解任した形になっています。

2018−2019シーズン後半戦の奇跡的な残留劇を指揮したエスクリバに対しては、僕も含めてセルタファン全員が感謝していますし可能であればエスクリバがシーズン開幕から指揮を執るセルタがどのような戦いを見せてくれるのかに期待している部分が多くありました。

しかし質を備えた的確な選手補強があったにも関わらず成績は上向かず得点は奪えず、フラストレーションばかりが溜まっていく現状においては解任もやむなしと言えるでしょう。

ヘタフェ戦で途中交代後、ベンチコートを頭から被ってしばらく微動だに動けなかったMFデニス・スアレスの様子を見ている限り、恐らく選手達も今の状況をどう立て直せばいいのか解決策が見いだせない状況だと考えられます。

フラン・エスクリバ自身もフラストレーションを溜めている状況では現状の改善がなされる可能性は非常に低く、これ以上は粘れないとクラブ首脳陣が判断したということなのでしょう。

エスクリバ自身は決して悪い監督ではありません。

堅実に守って丁寧にリアクションし、的確なカウンターを仕掛けてゴールを奪うという明確な戦略を持っている監督だと僕は理解しているのですが、昨シーズン後半はうまく機能した彼自身のサッカーが、メンバーも大幅に変わって特徴が異なる選手達を多く迎えることになった今シーズンは期待通りに機能していないのは明らかでした。

一歩引いた立場で見てみると、選手も監督も現状を打破できない状況にあったとしても18位という状況を改善するためには改善できる可能性をチームに注入することが必要です。

そして選手の入れ替えができず、替えられるとすれば監督のみという状態なのであれば、打てる手を打つべきというのが常識的な考え方でしょう。

正直言うとこの監督交代というのはどちらかと言えば消去法的な対処療法でしかありませんが、新しい戦い方や考え方を試すためにはどうしても必要なことであったと僕は考えています。

オスカル・ガルシア・ジュンジェン監督

11月4日付でセルタ・デ・ビーゴの新監督に就任したオスカル・ガルシア・ジュンジェンは、古くからラ・リーガを見ているファンにとってはお馴染みの人物であり、「このステージまでたどり着いたのか」とやや感慨深い気持ちにもさせる人物ではないでしょうか。

選手、及び監督としてのここまでの経歴を少しまとめてみました。

選手
クラブ 出場試合数 得点数
バルセローナB スペイン 1991〜1994 82 23
バルセローナ 1993〜1994 5 0
アルバセーテ 1994〜1995 29 2
バルセローナ 1995〜1999 64 21
バレンシア 1999〜2000 20 4
エスパニョール 2000〜2004 51 4
レリダ 2004〜2005 23 3
監督
クラブ 試合数 勝率
カタルーニャU-18代表 スペイン 2010〜2012
バルセローナ(フベニールA) 2010〜2012
マッカビ・テル・アビブ イスラエル 2012〜2013 36 25 5 6 69.44%
ブライトン イングランド 2013〜2014 53 21 16 16 39.62%
マッカビ・テル・アビブ イスラエル 2014 2 1 1 0 50%
ワトフォード イングランド 2014 4 1 2 1 25%
レッドブル・ザルツブルグ オーストリア 2016〜2017 73 51 12 10 69.86%
サンテティエンヌ フランス 2017 13 5 4 4 38.46%
オリンピアコス ギリシャ 2018 13 6 5 2 46.15%

1973年4月26日にカタルーニャ州サバデルに生を受けたオスカル・ガルシア・ジュンジェンは18歳でバルサBに登録名「オスカル」としてデビュー。

「ドリーム・チーム」と呼ばれた故ヨハン・クライフ時代のバルサでプロとしてトップチームデビューを果たしています。

ポジションはMF。主に中盤のトップ下やサイドハーフ的な立ち位置でプレーすることが多かった選手ですが、当時のバルサにはホセ・マリ・バケーロやルーマニアのゲオルゲ・ハジ、ブラジルのジェオヴァンニ、リヴァウド、カンテラから昇格していたイバン・デ・ラ・ペーニャなど才能豊かな選手達が同じポジションにひしめいており、自身も周囲も満足し納得できるようなプレー機会や実績を残せていたとは言い難い選手キャリアでした。

とはいえベンチからの途中出場が多かったものの状況に応じてスタメンで名を連ねることもあり、プロとしてクオリティーの低い選手だったかと言われればそうではないと言えるレベルの選手だったことは確かです。

特に同時期に同じくバルサでデビューした3最年下の実弟ルジェール・ガルシア・ジュンジェン(登録名:ルジェール)と揃って出場する際には息のあったプレーでカンプ・ノウの観客から拍手を受けることも多く、兄弟揃ってバルサから移籍した後は2000〜2004年まで同じバルセローナを本拠地とするRCDエスパニョールで一緒にプレーし数々のチャンスを演出しました。

なお、この実弟ルジェール・ガルシア・ジュンジェンはオスカルのセルタ監督就任と同時にセルタの第2監督として兄と共にセルタに加入しています。

引退後はバルサカンテラ出身の選手達が多く歩んでいるのと同様にオスカルも指導者への道へ進み、特にイスラエルのマッカビ・テル・アビブとオーストリアのレッドブル・ザルツブルグで輝かしい成績を残しています。

マッカビ・テル・アビブの監督に就任した大きな理由は、当時マッカビ・テル・アビブでテクニカル・ディレクターを努めていた故ヨハン・クライフの息子ジョルディ・クライフからのオファーがあったからです。

ジョルディ・クライフは故ヨハン・クライフの息子としてバルサBからプロデビューし、バルサのトップチームでもプレー。1998−1999シーズンにはセルタでもプレーしています。

ジョルディ・クライフとオスカルも同時期にバルサのトップチームでチームメイトとしてプレーしており、同じカンテラ出身者ということで深い親交があったのでしょう。

特筆すべきは2016〜2017年の2シーズンに渡ってオーストリア・ブンデスリーガとオーストリア・カップの国内2冠・2連覇を成し遂げていること。

そして日本人サッカーファンとしては日本代表FW南野拓実を指導しているという点に若干の親近感を感じます。

事実として、オスカル監督下のザルツブルグで南野は2015−2016シーズンで32試合出場10ゴール。2016−2017シーズンで21試合出場11ゴールとコンスタントに結果を残しています。

南野は2014−2015シーズンにザルツブルグに加入しており、オスカルが監督として南野を指揮したのは南野がザルツブルグで2年目のシーズンを迎えた年。

声高に「南野はオスカルが育てた」とは言い切れないのでしょうが、少なからず南野の特徴と強みを理解した上で起用していたと考えることは妥当なことではないかと僕には思えます。

オスカルのサッカー、戦術とは?

正直に言うと、僕はオスカルが指揮するチームのサッカーを実際に目にしたことがありません。

そのため、今の段階で「セルタがこうなるのではないか」と予想することが難しいというのが事実です。

しかし、就任記者会見での質疑応答時にオスカルが発したコメントに彼のサッカー観が少なからず現れているのではないかと思っています。

この就任会見の中で、故ヨハン・クライフ時代に選手としてデビューし、同時期の多くの選手達と同様に監督としてキャリアを歩んでいることに関して記者から質問されたオスカルは次のように発言しています。

クライフは選手としても監督としても自分に大きな影響を与えてくれた人物。監督として選手と共有したい考えは”ボールがどう動いて”、”そのボールはなぜそう動いたのか”をチーム全体で認識すること。そうすることで必ず解決策が見えてくると信じている。

クライフは

ボールはいくら転がっても疲れないのだから、自分が走ることよりも”ボールを走らせること”をより多く考えるべきだ。

というような名言を残しています。

オスカルの発言はこのクライフの発言に通ずるものがあり、恐らくオスカルの理想とするサッカーも的確なポジショニングをピッチ上で選手達が行うことによってボールの動きを円滑にし、効率よくボールを動かしながら同時に良質なポジショニングをしていくことで相手ゴールに迫っていくようなサッカーなのではないでしょうか。

もしそうであれば、デニス・スアレスやラフィーニャのようにバルサで長くプレーし、オスカルがプレーしていた時代の”クライフイズム”のようなものがまだ若干残っていた時期のバルサにおけるエッセンスを持っている選手を有する現在のセルタは、オスカルが初めてスペインのプリメーラ・ディビシオンで指揮を執るには適切なチームであるのかもしれません。

少なくともオスカルには「監督としてリーグ戦での優勝経験」があります。

ザルツブルグ時代には欧州カップでの指揮経験もあります。

この実績だけを見てみれば、指揮したクラブの「格」のようなものに差はあるものの、例えばルイス・エンリケやエドゥアルド・ベリッソ、そしてフラン・エスクリバと比較した場合に劣るものではないと考えることもできるでしょう。

カタルーニャ人であり、バルサOBでもあるオスカルがラ・リーガの監督デビュー戦として迎える相手は古巣バルセローナ。

そして舞台はバルサのホームスタジアム、カンプ・ノウです。

このことについて尋ねられたオスカルは

監督としてバルサとカンプ・ノウで対峙することは特別なことではあるが意識はしていない。日程がたまたまそう組まれているタイミングだったというただそれだけのことで大騒ぎする必要はないと感じる。安全面?私に大したことが起こるとも思っていないよw

と表面上は冗談を交えながら平静を装っています。

ここ数年は予想外にバルサとの対戦成績が悪いわけではないセルタ。

しかしそれはあくまでもバライードスでの話であり、カンプ・ノウで成績がいいわけではありません。

状況的に勝利が欲しいのは間違いありませんが、果たして監督オスカル・ガルシア・ジュンジェンのデビューと、新生セルタの船出はイベリア半島の反対側でどのように始まるのでしょうか。

カンプ・ノウでのバルサ戦は、僕達セルタファンにとって無理矢理にでも心機一転の気分で見るべき試合になるのかもしれません。

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