プレシーズンマッチでイアゴ・アスパスが負傷。経過観察へ。
ラ・リーガ2019−2020シーズン開幕に向けたプレシーズンマッチのためにドイツ遠征を行い、ウニオン・ベルリンとの試合を3−0で勝利したセルタ・デ・ビーゴ。
メキシコ代表DFネストル・アラウホ、ガーナ代表DFジョセフ・アイドゥーも合流し、トップチームに登録されるはずの主力選手全員が揃った状態で開幕に向けての準備が着々と揃いつつあるセルタですが、ウニオン・ベルリンとの試合開始早々にスペイン代表FWイアゴ・アスパスが負傷により退場したためその容態だけが気になります。
右膝の打撲により数日間は練習参加を取りやめるようですが、アスパスは本人の公式Instagramアカウントにおいて大きな怪我ではなく、数日のうちに全体練習に復帰できるだろうと楽観的な見方をしていることをアピール。
セルタの攻撃はアスパスを中心に組み立てられています。首脳陣としてもアスパス抜きのチーム構成は考えておらず、開幕戦がホームでのレアル・マドリー戦であることを考えれば、少なくとも開幕戦をアスパス抜きで戦うことは大きなデメリットになることは疑いようがありません。
そのためチームとしても大事を取って全体練習よりも負傷の経過観察と回復にあてることを優先させる方針です。
モチベーションを高めるルーカス・オラサ
2018−2019シーズン中に冬の移籍市場でセルタに加入したウルグアイ人DFルーカス・オラサ。
加入後約2ヶ月間は出場機会がなかったものの、レギュラー左サイドバックだったダビ・フンカが負傷で離脱したことをきっかけに出場機会を得られるようになりレギュラーに定着。
安定したプレーとタイミングのいいオーバーラップでセルタの左サイドを支える重要な選手へと急成長しました。
ここまで3試合行われたプレシーズンマッチにおいて、スターティングメンバーのファーストチョイスになるであろう前半45分のメンバーにはオラサが必ず含まれており、セルタの監督フラン・エスクリバがオラサを左サイドバックのレギュラーとして考えていることが見て取れます。
セルタにおける自身の状況において、オラサはスポーツ紙MARCAの取材に対して次のように語っています。
チームにはレベルの高い選手が揃っていて、誰でもスタメンになれる可能性がある競争力がある。
監督の信頼を勝ち取るために全員が日々切磋琢磨しながら厳しいトレーニングを行っているし、自分がピッチに立つチャンスを得たときには監督の信頼を得るために全力でプレーするだけだ。
昨シーズンの成績を上回ることは最低限果たさなければならない義務だと思っているし、残留という公の目標以上のことを今シーズンは成し遂げられると個人的には考えている。
謙虚な姿勢は見せつつも、発言の最後ではあくまでも「自分がプレーすることで」という前提で話している印象があるため、出場機会を得られていることに対する自信を深めていることが感じられます。
オラサはアルゼンチンのボカ・ジュニオルスから買い取りオプション付きのレンタルで加入しており、レンタル期間の終了は2019−2020シーズン終了までとなっています。
ボカはこのオフシーズンでの買い取りをセルタに対して要求しており、その理由として別のクラブから完全移籍でのオファーがあることを挙げていましたが、最終的にはセルタとのレンタル延長と買取オプション付きという条件を変更しないことで合意。
オラサ本人と代理人側からもボカに対してセルタでのプレー継続を直訴したとの報道もあり、現時点での自身が置かれた立場や出場機会を得られている状況に対して満足しているようです。
また度々話題に上がる外国人枠の問題については下記のように語っています。
欧州圏外枠の問題については理解しているが、ラ・リーガにおいては常に激しい競争がある。(欧州圏外枠であろうとなかろうと)自分達が定めた目標に向かって全力を尽くすのみだ。
つまり、出場機会を得るためには欧州圏外枠であるかないかに関わらず自らのプレーによって自分の価値を高め、チーム内の競争に打ち勝てば良いのだということを言いたいのでしょう。
プレシーズンマッチのリール戦直前に降って湧いた日本代表MF香川真司のセルタ移籍に関する噂と関連して、セルタの欧州圏外枠選手に関する話が取り沙汰されていたことを受けてのコメントだと推測されます。
いずれにしてもオラサの視線は開幕の3試合(レアル・マドリー、バレンシア、セビージャ)と、自身の出場機会確保に向いており、それについて
プレシーズンのトレーニングと試合結果にはいい感触を得ている。
開幕最初のレアル・マドリー、バレンシア、セビージャ戦という3試合は、勝ち点のことを考えたら非常に重要な試合だ。
そこへ向けて更にチームとして改善していかなくてはらない。
と語っています。
ファンからの評価も高く、チーム内での立場を徐々に確固たるものにしつつあるルーカス・オラサ。
開幕以降、彼がチームにもたらせるものはどのようなものになるのかが、最初の3試合である程度見えてくるのかもしれません。
ホルヘ・サエンスの可能性
トルコ代表MFオカイ・ヨクスルは右膝十字靭帯の損傷でプレシーズンを負傷の回復にあてており、残念ながら彼にバケーションは訪れませんでした。
スロヴァキア代表MFスタニスラフ・ロボツカとコンビを組んでセルタの中盤の底でセントラルMFとしてプレーするオカイの負傷が長引くことが明らかになった後、フラン・エスクリバ監督はホサベ・サンチェスとフラン・ベルトランをロボツカと組ませてルーゴ戦、リール戦の2試合で様子を見ていました。
しかしホセベもベルトランもエスクリバにとって満足の行くプレーを見せることはできなかったようです。
現地時間8月3日に行われたウニオン・ベルリンとのプレシーズンマッチにおいて、フラン・エスクリバは新たな道を模索し始めたことが明らかになりました。
それがバレンシアからレンタルで獲得したホルヘ・サエンスのセントラルMF起用です。
ウルグアイ代表FWマキシ・ゴメスとFWサンティ・ミナの移籍と合わせて進められたサエンスのレンタル移籍は、2年間の買取オプション付きという内容になっており、少なくとも2シーズンに渡ってサエンスを戦力として計算できる契約になっています。
ルーゴ戦、リール戦という2試合のプレシーズンマッチでサエンスは本来のポジションであるセンターバックとしてプレーしていました。
そこで見せた非凡なボールコントロールと正確なパス、バランスを崩さない見事なボディバランスは、現地スペインのセルタファンの間でも「エドゥアルド・ベリッソやレキ以来、ようやくビルドアップ能力のあるセンターバックが手に入った」と予想外の収穫として称賛されています。
フラン・エスクリバはサエンスがこの2試合で見せた才能を認め、なおかつネストル・アラウホとジョセフ・アイドゥーが本格的に合流したことから、サエンスの能力を一列前で活かせないかというアイディアを思いついたようで、ウニオン・ベルリン戦ではセンターバックをアイドゥーとダビ・コスタス。セントラルMFをロボツカとサエンスという組み合わせでスタートさせました。
はたして試合は3−0での快勝。コスタスの不安定さは問題ですが、それでも改善の様子は見られますし少なくともネストル・アラウホというメキシコ代表DFがいるため、センターバックの枚数は足りています。
僕は開幕までか、もしくは冬の移籍市場で新たに選手を獲得する必要があるとすればそれは左サイドバックかセントラルMFだと思っていましたが、たしかにエスクリバのアイディアのようにサエンスの能力がセントラルMFとしても活かせるのであれば怪我人でも出ない限り余計な予算を使う必要がなくなります。
エスクリバがサエンスをセントラルMFとして起用する、あるいはホサベ・サンチェスとフラン・ベルトランの出来に満足しておらずディフェンス能力に長けたセントラルMFを望むもう一つの理由がデニス・スアレスです。
ウニオン・ベルリン戦でブライス・メンデスのゴールをもたらす素晴らしいスルーパスを披露したデニス・スアレスの適正ポジションは左サイドのMFであり、イアゴ・アスパス、サンティ・ミナへより精度が高くゴールの可能性を高めるパスの供給とデニス・スアレス自身のゴールが求められます。
そのためにはデニス・スアレスがポジションを下げることなく前線で攻撃に集中できる環境を整える必要があり、これまでのところボールを失う場面が目立つホサベとベルトランをロボツカと組ませたままでは、デニス・スアレスがポジションを下げて守備に参加する回数を増やすことに繋がってしまいます。
仮にサエンスが新たなポジションとしてロボツカと組むセントラルMFに適正があることが証明されれば、ロボツカを右、サエンスを左で使うことによってデニス・スアレスを守備参加という負担から開放することに繋がり、それは同時にデニス・スアレスからイアゴ・アスパスとサンティ・ミナに供給されるパスやフォローの回数が増えることに直結します。
「残留のためにゴールを奪う」という命題を抱えている今シーズンのセルタにとっては、アスパスとミナがどれだけ自由にプレーできるかということが非常に重要になります。
デニス・スアレスとサンティ・ミナという攻撃に厚みを加えられるクオリティを持った2人のカンテラーノを復帰させられたことは、今シーズンに向けた最大の成果だったと僕は昨日まで思っていたのですが、もしかするとホルヘ・サエンスのレンタル移籍というのはデニス・スアレスとサンティ・ミナと同等か、あるいはそれ以上の価値を持つ移籍になっていくのかもしれないと僕は思い始めました。
またサエンスのセントラルMF起用というオプションを思いついたエスクリバの目と、そのオプションという選択肢を用意できたセルタの経営陣は、いよいよ本格的に数年後に向けた飛躍の準備を始めているのかもしれません。
破産宣告目前だった状態から経営改革に着手して13年。
そろそろ経営面での暗黒時代から抜け出すような何かを実現して欲しいと、僕はは少し欲張りになってしまいそうです。