日本、ウルグアイと引き分け今大会初の勝ち点を獲得
コパ・アメリカ2019 ブラジル グループC | ||
日本 | 2−2 | ウルグアイ |
24分:三好 57分:三好 |
得点者 | 32分:スアレス 65分:ヒメーネス |
コパ・アメリカ2019に参加中の日本代表は現地時間6月20日、ポルト・アレグレのアレーナ・ジ・グレミオでウルグアイ代表と対戦。
24分、57分に三好康児のゴールで2度のリードを奪う展開だったものの、32分にルイス・スアレスにPKを決められ、65分にCKからホセ・マリーア・ヒメーネスのテクニカルなヘディングにより追いつかれ2−2の引き分け。
初戦のチリ戦に0−4で敗れていた日本はウルグアイ戦の引き分けで今大会初の勝ち点を獲得しグループCで暫定3位となりました。
現地時間6月21日午後20時から行われるチリ対エクアドル戦の結果と、同24日午後20時から行われる対エクアドル戦の結果如何ではコパ・アメリカ2回目の参加で初の決勝トーナメント進出を決める可能性が出てきました。
コパ・アメリカは南米サッカー連盟「CONMEBOL」加盟10カ国に加えて招待国2チームが参加し全12チームで争われます。
決勝トーナメントはグループA〜Cの各上位2チーム計6チームと、各グループの3位チームのうち成績上位の2チームによる8チームでベスト8から行われます。
日本が決勝トーナメントに進出するためには最低でも最終戦のエクアドル戦に勝利し、その上で他グループの3位チームがどのような結果に終わっているか次第。
コパ・アメリカのグループリーグは現地時間の今週土曜日〜来週月曜日にかけて行われ、グループCに所属する日本代表は3位チーム中一番最後に試合を行うことになります。
南米各国の主要メディアは日本の戦いぶりを絶賛
コロンビアメディアの反応
コロンビア最大の全国紙El Tiempoは試合内容よりも47分に起きた疑惑のシーンについて解説。
「日本に与えられるべきPKは確かに存在したが、主審とVARの双方がその事実を無視した」
と辛辣な見出しを掲載。
日本対ウルグアイの試合で主審を務めたアンドレス・ロハスがコロンビア人であることと、ロハス主審がコパ・アメリカで初めて主審を務めたことを紹介。
ペナルティエリアにテクニカルなルーレットを駆使して侵入した中島翔哉に対し、ウルグアイのジオバンニ・ゴンサーレスが完全に足をかけて倒していることを指摘し、
コパ・アメリカ今大会ではVARが主役の1人になっており、それは昨夜の試合でも例外ではなかった。ただし昨夜の登場人物にはコロンビア人主審であるアンドレス・ロハスも含まれる。
ここにいたるまで試合を決定づける場面に度々登場してきたVARだが、昨夜の日本対ウルグアイ戦に関してはネガティブな意味でまさしく同じ効果をもたらすことになった。
47分の中島翔哉に対するジオバンニ・ゴンサーレスのプレーに我々の同胞であるロハス主審とVARが一瞬でも注意を払っていれば、試合結果が変わっていた可能性を誰も否定できないだろう。
と報じています。
コロンビア国内で試合をテレビ中継した全国放送局Caracolのコメンテーターは
カバーニが「先にボールに向かってプレーしていた」という理由で、植田とカバーニによる「イーブンボールの」接触にPKを与えるのであれば、明らかに抜き去られようとしていたゴンサーレスが足をかけて「ボールを保持していた」中島を倒したプレーがPKと判定されないのは理解不能な判断だ。
ピッチの中ではルールは1つであり、ゴールに向かってプレーする選手にペナルティエリア内でファウルがあれば、それはPKと判定されるというのが世界共通の理解のはずでそれは南米でも欧州でも、そして日本でも同じはずだ。
とロハス主審とVARチームによるチェックが行われることもなくプレーが流されたことに疑問を呈しました。
アルゼンチンメディアの反応
日本がウルグアイと引き分けたことによって、決勝トーナメント進出を巡っては直接対決はないもののライバルとなったアルゼンチンにおける最大のスポーツ紙Oleは、日本対ウルグアイの試合詳報記事の見出しとして
Empate y Partidazo=引き分けであり偉大な試合
と報じました。記事内でOleは「頑張る」という日本語が持つ意味を紹介しており、日本の戦いぶりはまさに日本人の「頑張り」がもたらしたものだと解説しています。
ちなみにアルゼンチンの首都ブエノスアイレスには日本庭園があり、庭園内に設置された「日本人アルゼンチン移民の碑」によると、アルゼンチンへの日本人移民はブラジルよりも数年早かったことなどが紹介されています。
Oleは中島に対するジオバンニ・ゴンサーレスのプレーはPKではないかと疑問を持ちつつも、一方では
確かにゴンサーレスによる中島に対する接触はあった。ただし接触直前にゴンサーレスは足を引いており、中島はむしろ倒されることを見越してプレーを仕掛けているとも言える。
とコメント。このゴンサーレスが足を引いているという点が主審とVARの判断における根拠となったのではないかと論じています。
対戦国ウルグアイのメディアはどう報じているのか
El Observador(エル・オブセルバドール)
ウルグアイは低調だったが、リアクション力に救われた
ウルグアイの有力視El Observadorは上記の見出しで日本対ウルグアイ戦を詳報。
ウルグアイがディフェンス面で苦しんだこと、日本とウルグアイ双方が互いのミスを常に狙う展開であったことを詳細に解説しながら、序盤はウルグアイのほうが慎重に試合を運ぼうとしていたと報じています。
ルーカス・トレイラとロドリゴ・ベンタンクールが中盤を制圧しようとしたものの、日本の中盤による素早いチェックに苦しみ組み立てを度々放棄。サイドや前線にロングボールを放り込まざるを得ない状況に追い込まれたと解説。
試合中にベンタンクールとホセ・マリーア・ヒメーネスが何度も話し合い、ビルドアップの変更を行い効果的に前線にボールを収める方法を終始模索していたことも報じています。
日本のプレー内容については、
日本は昨年11月の親善試合の時と同じように、前線から素早いチェックを実施しラ・セレステを混乱に陥れた。日本人達はラ・セレステをよく研究しており、どのように攻略すればより効果的なのを理解していたように見える。
日本は数度に渡りボールを奪い、速攻でウルグアイエリアに侵入。実際に何度もチャンスを作りゴールを脅かし続けた。
ラ・セレステの試合はエクアドル戦ほど上手くはいかず、大きなチャンスを作れたのはルイス・スアレスとエディンソン・カバーニがボールを奪った時か、彼らがサイドに開いてボールを持ったときだった。
とウルグアイにプレッシャーを掛け続け、それがウルグアイにとって苦しい展開を生むことになった要因だと分析しています。
記事の中でEl Observadorはウルグアイ代表監督オスカル・ワシントン・タバレスがラクサールの負傷退場をきっかけにポジションの変更を指示し、マルティン・カセレスを左サイドに配置することでマルセロ・サラッチがより直接的に左サイドでプレーできるようにした点を評価。
ロデイロと合わせた3人で左サイドに落ち着きをもたらすことができ、その結果左サイドを起点にしてより前線の深い位置までボールを運べるようになったことがその後の試合展開に大きく影響を与えたと分析しています。
全体的に落ち着きを取り戻せ、2−2の同点にした後にはフェデリコ・バルベルデを投入し前線へのボール供給源を増やす選択をしたオスカル・タバレスの采配をEl Observaorは高く評価しており、このバルベルデの投入が終盤の複数のチャンスに結びついたとコメント。
しかし最終的に3点目をこじ開けることはできなかったと結果を伝え、エクアドル戦とは全く異なる展開となった日本との試合を「非常に難しいものだった」と結論づけています。
マエストロ・オスカル・ワシントン・タバレスの記者会見コメント
ウルグアイの最大手全国紙El PaisはEl Observdorとほぼ同様の試合詳報を掲載すると同時に、南米において「マエストロ=マスター」の敬称で尊敬を集める老将オスカル・ワシントン・タバレスの記者会見内容を掲載。
その記者会見においてタバレスは以下のような言葉を残しています。
日本の中盤が見せた素早く効果的な守備に苦しみ、それを突破するために前線にロングボールを放り込む必要性が出てきてしまった。
前半にも大きなチャンスがあったが、同時に同じぐらいのミスも犯している。後半は試合をコントロールするこができ、最後の15分間は支配することができた。しかし避けられる種類の2失点を喫したことは事実だ。
我々はポストに当たったシュートも含めて多くのチャンスを作り、状況は難しいものだったが避けられる種類のミスやプレーも多かったと思っている。試合全体を通して言えば”負けないための試合内容”になっていたことは認めなければならないが、良いチームに2度のリードを追いつくというのはいつでも困難なものだということは変わらない。
まだグループリーグは2試合が終わったばかりで、私の口からどのチームがチャンピオンになるかというようなことは言えない。強いて言えば我々にも他の11チーム全てにも可能性はあるだろう。
苦戦した原因は明らかだ。”日本の統制された戦略を我々が打ち破れなかった”というシンプルなことだ。日本のプレー内容は中と外をうまく使いゴールへ迫るものだったし、実際に彼らは少ないチャンスを活かして2ゴールを決めている。
エクアドル戦では幸いにも早い時間帯でゴールを奪えたので我々としても違う展開を作ることができたが、逆に先制されている状況は肉体的にも精神的にも消耗が違う種類のものになる。同じプレーを実現することは簡単なことではない。
私自身は落ち着いている。確かにこの試合は疲労の貯まる結果だったが、ある意味で次に備えるために何をすべきか考えることもできる。
不安を感じたり心配しているわけではない。ここ数年何度もそうだったように、来るべき事象に備えるだけだ。まだ起きていないことに対しては準備するしかないわけだから。
今後の試合は全て決定的な試合になるし時間もない。順位表を見ながら何をすべきかよく考える必要がある。
目の前の試合を丁寧にプレーしなければならない。チリ戦に対してピクニックにでも行くような姿勢ではいけないし、我々が持つ経験に基づいて準備をする必要がある。個人的に心配事があるとすれば、それは避けようのない負傷が起こることだが、少なくともこれから戦うことになる対戦相手はこれまでよりも難しいウルグアイと対戦することになると思っておいたほうがいいだろう。
2011年に我々がコパ・アメリカを制した時、最初の2試合に我々は勝利していない。今回の日本と同じく若かったメキシコ相手に3戦目で1−0で勝っているだけだ。そしてその後我々は決勝に進出し優勝した。
(今回アルゼンチンが苦しんでいると言われているが)誰が私に”アルゼンチンは優勝できない”と保証できる?少なくとも私にはそんなことは保証できない。
現段階において重要なのは決勝トーナメントに進出できるかどうかということだ。それ以降の試合は1試合1試合がラストゲームになる可能性のあるものだ。サッカーとは常に複雑なもので、様々な要素が絡み合って1つの結果を導き出すようにできている。
サッカーの試合を指揮するというのは簡単なことではない。エクアドルに4−0で勝利したのに日本に勝利できなかったことがなぜそこまで不思議なのかが私には理解できない。ここにいる誰もチャンピオンズリーグを見ていなかったのか?・・・まあそれはともかく、サッカーにおける現実というものをしっかりと受け入れなければいけないということが言いたいのだ。「試合が始まる前に現実に起こることを書き記すことは決してできない」という現実をね。
(スタジアムの大多数がウルグアイ人ファンで埋まっていたことについて)それはこの代表チームが築き上げてきた1つの結果だろう。ファンは選手達がピッチの上で全てを示し表現しようとしていることをよくわかってくれている。そして選手達はどのようにプレーすべきかを理解している。確固たる意思で、正しく、重要な価値あるシステムを忠実に守ってくれている。
そういった姿勢がファンとの強固な関係性やいくつかの重要な勝利をもたらしたのだと私は考えているし、そのことがファンや子どもたち、家族の満足に繋がり国の代表チームであるラ・セレステがどのようなプレーするのかを見に来ることに繋がっているのだと思っている。
たくさんの旗が振られ、国歌が歌われる。そういったこと全てがサッカーが示せるすべてのことだと私は考える。
スペイン語圏で「名監督」と呼ばれる監督の中には、年代層問わず共通して哲学的な言葉遣いでサッカーを語る監督が度々現れます。
スペインの故ルイス・アラゴネスやオランダの故ヨハン・クライフ、アルゼンチンのセサル・ルイス・メノッティやブラジルのカルロス・アルベルト・パレイラ、ドイツのフランツ・ベッケンバウアーなどなど。
オスカル・ワシントン・タバレスも彼らの系譜に名を連ねる哲学者然とした監督で、彼の口から紡ぎ出される理知的かつ哲学的なスペイン語のフレーズの数々は記者泣かせであり且つ翻訳者泣かせでもあるでしょう。
しかしだからこそ彼の口から日本を賛辞するフレーズが出てきたということには価値があると僕は考えるのです。
記者会見に登場する度に拍手で迎えられ、拍手と共に去っていくタバレスの言葉を聞いていると、外野のファンが戦術や監督の意図をあれこれと邪推して語ることにはもしかして意味がないのではないかと錯覚してしまいそうになります。
現地時間6月24日月曜日、コパ・アメリカ2019のグループリーグは最終日を迎えます。
日本代表が果たしてエクアドルに勝利し、決勝トーナメントに進出できるのかどうか。
しっかりとその姿をこの目で確かめたいと思います。