マキシ・ゴメスとサンティ・ミナを巡る両クラブの攻防は長期化
クラブ間の直接交渉の有無はともかく、マキシ・ゴメスを巡るセルタとバレンシアのせめぎあいが長引いています。
マキシ・ゴメス側(代理人含む)がセルタに契約延長の意思がないことを通達し、セルタがウルグアイ代表FWマキシ・ゴメスを「売りに出してから」1ヶ月ほどが経過している現在ですがいまのところ現実的な商談が発展している形跡は見られません。
ここまで具体的にマキシ・ゴメスの獲得に乗り出しているとメディアで報じられているクラブは数クラブありますが、スペイン国内で最も多く報道されている名前がバレンシアです。
スペイン代表FWロドリゴ・モレーノが移籍を希望していると報じられているバレンシアの状況は、マキシ・ゴメスが移籍を希望しているセルタと似たような状況だと言うこともできます。
コパ・デル・レイを制し来シーズンのチャンピオンズリーグ出場が決まっているバレンシアと、ギリギリでプリメーラ・ディビシオン残留を決めたセルタとでは比較の度合いが異なるのは当然なのですが、「レギュラーFWの移籍と補強」という観点で考えれば状況は似通っています。
バレンシアはロドリゴが移籍した場合に備えてマキシ・ゴメスの獲得を望んでおり、セルタはマキシ・ゴメスを売却できるのならば再売却も視野に入れられる可能性があるスペイン人FWサンティ・ミナの買い戻しを希望。
一見すると両クラブの利害は一致しているため、僕はこの移籍は案外早く決まるのではないかと思っていたのですが、セルタのカルロス・モウリーニョとバレンシアのアニル・マーシー両会長が駆け引きなのかただムキになっているのか判断に苦しむ子供のような舌戦を繰り広げ始めたことにより頓挫している格好になっているのが現状です。
セルタの譲歩案を引き出そうとするバレンシアの提案
今日のFARO DE VIGOの報道によると、FWと並行してセンターバックの補強を目指すセルタに対しバレンシア側はポルトガル人DFルベン・ベーゾ、コロンビア代表DFジェイソン・ムリージョ、スペイン人DFホルヘ・サエンスのいずれかをマキシ・ゴメス移籍金の一部として提供する用意があるとのこと。
アルゼンチン人DFグスタボ・カブラルの退団が決定し、ディフェンスラインの補強も行わなければならないセルタは現在ベルギーのゲンクに所属するガーナ代表DFジョセフ・アイドゥー獲得のため移籍金500万ユーロのオファーを出していると言われています。
セルタが必要なセンターバックの補強は最低でも2名と考えられており、あと1人は獲得する必要があるとの見方が一般的。その残り1人をバレンシアが拠出することでマキシ・ゴメスの移籍金を下げさせるという腹づもりのようです。
ベーゾ、ムリージョ、サエンスの3名のうち現時点で最も充実したシーズンを過ごしたのはベーゾで、2018−2019シーズンはレバンテにレンタルされておりコンスタントに出場。対するムリージョはバルセローナに出場機会を求める意味合いでレンタル移籍していましたが、ほとんど出場機会を得られないままレンタル期間が終了しバレンシア所属に戻っています。
ムリージョはコロンビア代表でもダビンソン・サンチェスとジェリー・ミナの2名に阻まれ出場機会を得られておらず、コロンビア国内でも不要論が囁かれる始末。
バレンシアでもアルゼンチン代表でも「老人」扱いされてセルタにやってきた後、長年セルタのディフェンスラインを支え続けることになったフェルナンド・カセレスの例もあるので一概には言えませんが、正直な話ムリージョは・・・というのが個人的な感想です。
バレンシア側、特にアニル・マーシー会長は昨シーズンのベンチ入りメンバー選手を現有戦力と考え、なおかつ彼らの売却には相応の移籍金を要求する姿勢を崩していません。
もちろんセルタも2年間前線を支えてきたマキシ・ゴメスをやすやすと安価で手放すつもりはなく、その両クラブ会長の意思がぶつかりあって交渉が進まないという状況が現在なのですが、このタイミングでセルタよりも先にバレンシアがセンターバックの譲渡を持ちかけているのだとすれば、やはり立場としてはセルタの方が「売り手」側にあると考えるのが妥当でしょう。
元々セルタは昔から埋もれているそこそこの選手や、くすぶって出番を求めている選手を安値で獲得することが比較的得意なクラブです。
対するバレンシアは各国の代表クラスやこれから伸びると市場でも折り紙つきの選手を獲得することが多かったクラブ。
バレンシアとしてはベーゾやムリージョ、そしてサエンスをちらつかせて「お前らこういう選手好きだろう?」と気を引こうとしているつもりなのでしょう。
いずれにしても、本当にバレンシア側からの提案が成されているのだとすれば「なんとかしてマキシ・ゴメスを確保しておき、ロドリゴの移籍交渉に備えたい」という意思が見え隠れします。
サンティ・ミナとマキシ・ゴメスの移籍は独立した別々の話だ、というコメントをバレンシアのアニル・マーシーとセルタのカルロス・モウリーニョが口にしているように、センターバックとマキシ・ゴメスの話がなかったとしてもサンティ・ミナの移籍だけが決まる可能性はありますが、セルタとしてもバレンシアとしても2つの移籍を同時進行で片付けることができればそれに越したことはありません。
一方、マキシ・ゴメスに関してはイングランドのウェスト・ハムがメキシコ代表FWハビエル・”チチャリート”・エルナンデスとの交換+移籍金の値下げというオファーを出しているという噂もあるため、やはり状況的に選択肢が多いのはセルタ側であるようにも思えます。
スポーツビジネスに興味のある方にとっても興味深いサンプル
僕がセルタファンであるかないかということは一旦置いて考えてみると、マキシ・ゴメスを巡るこの一連の交渉は、現在のヨーロッパサッカー界における移籍の仕組みや各クラブの思惑がどのように読み取れるのかをつぶさに見ることができる非常に面白いサンプルだと思います。
「代表クラスの期待の若手」を巡る移籍交渉の内側のようなものがここまで開けっぴろげに報じられることはそう多いことではなく、むしろだからこそひっそりと行われるケースのほうが多いはずです。
それが子供じみた会長同士の口喧嘩に近い舌戦までもが新聞紙上で報じられるというのは、ある意味でオフシーズンならではのエンターテイメントであり、演技である可能性は否定できませんがスポーツビジネスを目指す方にとってもちょうどいい素材として考えられるものだろうと僕は思います。