リーガ再開に向けて練習を再開したセルタ
スペイン現地時間2020年5月11日月曜日、ほぼ2ヶ月ぶりにセルタ・デ・ビーゴはア・マドローア練習場に集合し、全体練習を再開しました。
前回の記事【ラ・リーガ】ラ・リーガ、スペインサッカー連盟双方ともにシーズン消化を目標に。で書いたように、RFEF(王立スペインサッカー連盟)とLFP(ラ・リーガ機構)は6月12日もしくは6月20日からラ・リーガ・サンタンデール2019−2020シーズンを再開することを目指しています。
全38試合で行われるラ・リーガは再開後の初戦となるはずの第28節を含めて残り試合が11試合。
RFEFもLFPも理想的には6月12日に再開し、7月末までにシーズンを終了させるために3日〜4日に1試合のペースで日程を消化していくためにいくつかのイレギュラーな取り決めをすることも検討していると言われています。
そんな中でスペインのプロ全国リーグであるプリメーラ・ディビシオンとセグンダ・ディビシオンA全クラブ同様に、セルタもビーゴ市郊外にあるア・マドローア練習場に29選手が集合し全体練習を再開。
ボールや器具を使ったフィジカルトレーニング中心のメニューではありましたが、軽くピッチでの動きを取り入れながらここまで練習メニューを消化しています。
ラフィーニャ
ブラジル人MFラフィーニャ・アルカンタラは
2ヶ月ぶりの練習で、今シーズン2回目の”プレシーズン”だと思えばモチベーションも上がる。とにかく今はサッカーがしたい。仲間と共に目指すものを勝ち取りたいんだ。
とコメント。
2020年年明けから中断前の第27節まで、急速にピッチ内でのリーダーシップを高めてチームの中心に成長していたラフィーニャは、非公式ながらセルタへの完全移籍を目指して代理人チームと共にバルサ側へ条件交渉を持ちかけているとも言われています。
両親と妹が今でもビーゴ在住であるラフィーニャにとって、2度目のプレーとなった今シーズンのセルタでのプレーは、自分自身の進むべき道を見極めるいいきっかけになったのかもしれません。
デニス・スアレス
一方、ラフィーニャと共に今シーズン開幕前に完全移籍でセルタ復帰を果たしたものの、ラフィーニャとは対象的に11月ごろから調子を落として浮上のきっかけを掴みきれていないMFデニス・スアレス。
サンティアゴ・ベルナベウで行われた第24節のレアル・マドリー戦では終了間際に高級シルクのような惚れ惚れするパスをFWサンティ・ミナに供給して2−2の引き分けに貢献。
トップフォームに戻るきっかけを掴んだかに思えましたが、続く第25節のレガネス戦は勝利したものの10人でのプレーを強いられることになったため本来のプレーを発揮できず、不完全燃焼の状態を燻ぶらせたまま第27節を終えた時点でラ・リーガは中断に入ってしまいました。
プレーの面もそうなのですが、僕は正直言って中断期間中のデニスのコンディショニングのほうが心配でした。
知る人ぞ知る事実ですが、デニスは菜食主義者です。
いわゆる「ヴィーガン」と言うほどの徹底ぶりではないそうですが基本的に肉は食べず、必要な栄養は菜食で摂取する人物。
老婆心的に、彼の負傷が長引くことが多いのは動物性タンパク質が不足気味だからではないのか、と個人的に勘ぐっているのですが、それは別の機会があれば話題にすることにしましょう。
ともかく、交際相手はいるものの現時点では独身であるデニスの場合、中断期間中にどのように身体的なコンディションを維持できているのかについて、僕は気が気ではありませんでした。
ただし、セルタが公式メディアで明らかにした5月11日の練習の様子を見る限り、デニスのコンディションは悪くなさそうに見えますし、なによりもボールを触るデニスの表情に笑顔があったことに僕はホッとしたのです。
また、デニス本人も
この2ヶ月がプレシーズンに向けての時間だったと考えてみれば、僕は今シーズン開幕当初のようなトップフォームでいなくてはいけない。
率直に言って、自分自身に対してシーズン開幕当初のようなベストフォームの自分に戻ることを期待しているし、そうありたいと思っている。
とコメントしています。
ガリシアの地方紙大手La Voz de Galiciaのビーゴ版は
この中断期間で新加入した選手として、”もとに戻ったデニス・スアレス”を紹介できるのかもしれない
と報じており、どうやらコンディションは僕達ファンが思っているよりも良さそうな気配が感じ取れます。
ピオネ・シストは自宅での個人練習
冬の移籍市場でレンタル加入した3人の選手
- ロシア人FWフョードル・スモロフ
- クロアチア人MFフィリップ・ブラダリッチ
- コロンビア人DFジェイソン・ムリージョ
は揃って全体練習に合流しているものの、スペイン政府が発令した外出禁止措置を無視する形でクラブとの合意無しにデンマークへ帰国してしまっていたデンマーク代表FWピオネ・シストは、今週一度もア・マドローアでの全体練習に参加せず、自宅での個人練習を行っています。
クラブから公式にシストの処遇に関して何らかのアナウンスはされていませんが、金銭的な罰に加えて全体練習への一定期間参加禁止というペナルティが与えられている模様です。
オンラインでのバーチャル記者会見を実施したセルタのオスカル・ガルシア・ジュンジェン監督は、シストについて
私としては他の選手と同様にピオネが全体練習に参加してくれることを望んでいるし、彼がチームにとって違いを供給できる貴重な戦力となる選手であることは間違いのない事実だ。
だが、練習に関しては状況がそれを許す状況にないとしか今は言えないし、この状況がいつまで続きどのように解決できるのかを我々は注意深く見守る必要がある。
とコメント。
戦力として考えられる選手が公私両面での規律違反を犯したことによって練習に参加できない状態となっていることに遺憾の意を表明しているように聞こえます。
これまでも独特の世界観を崩すことなくセルタでのプレーを続けてきたピオネ・シスト。
反省しているのか飄々としているのかよくわからない様子の投稿を、自身のインスタグラムには投稿していますが、果たして彼が全体練習に合流できるのはいつになるのでしょうか?
オスカル・ガルシア・ジュンジェン監督のオンライン会見要旨
5月14日、セルタのオスカル・ガルシア・ジュンジェン監督はオンラインでの記者会見を実施しています。
リーグ戦再開に関して
少なくとも、オスカル本人は6月12日のリーグ戦再開という点に100%納得しているとは言えないようです。
週を追う毎に世界がどうなるのかをよく見ていかなければならないと思う。取り決めや目標があるのはいいが、果たしてその目標・目的のようなものを追い続けていいのかどうかをよく検証しなければいけないだろう。ただ、少なくとも私自身は6月12日というのは少し早いのではないかと考えている。
ジェラール・ピケも同様の発言をしていたようだが、彼が言うようにまずは選手の健康リスクを回避することが優先だ。誰も感染しないように、そして誰も今回の出来事が原因で負傷することがないようにしなければ。
シーズン途中で2ヶ月もの中断が起きるのは普通ではない。普通ではない状況の中では普通は起こらないような負傷やアクシデントも起こりうる。負傷やアクシデントは”普通のプレシーズン”を過ごしても起こりうるのだから、”普通ではない”現状ではそれらの可能性が高まると考えておいたほうが良いだろう。
プレシーズンマッチを2〜3試合こなしながら調整するのとはわけが違う。論理的に考えて、現在の状況においては中断前と同じようにシーズンが進むとは考えるべきではないと思う。
非常に冷静で落ち着いた意見ではないでしょうか。
デンマーク代表FWピオネ・シストが無断でデンマークへ帰国してしまった際、外国人選手が単身で外出禁止措置下のスペインに留まることの難しさに理解を示しつつも、「私だってビーゴに単身赴任だが、プロとしてビーゴに留まることにしている」と語り、理解はしつつも賛同はしない姿勢をはっきりと表明していたオスカル監督。
しかし、現在の状況下でリーグ戦を強行的に再開することで発生する選手側のリスクには十分なケアと対策をすべきだと結論付けており、「選手の側にたった監督」であることが推し測れます。
オスカルはセルタの監督就任後に行ったいくつかの記者会見を聞いていても常に冷静で、短絡的な言葉遣いをせず、理知的な話しぶりをすることはよくわかっていました。
加えてこのように様々な意味で追い詰められた状況でも同じように冷静な発言ができるというのは尊敬に値すべき姿勢ではないでしょうか。
練習再開に関して
全ての選手たちが同じレベルのコンディションで再集合できたわけではない。
庭も含めて自宅敷地内でよりスペースを使って個人練習をできた選手もいるが、対象的にそれらの選手たちと違い、マンションのように限られたスペースしか使えなかった選手たちもいる。
まずは選手全員のコンディションを改めて平均化かつ高いレベルまで引き上げる作業が必要になる。そしてシーズン途中でその作業を行うことは誰にとっても簡単なことではない。
しかし可能な限り早く通常のトレーニングを全員で共有できる状況にもっていきたいと思っているし、そのための準備は整っていると考えていいだろう。・・・とにかく早く”元に”戻らないとね。
自身と選手の契約について
スペインのシーズンは6月末日が最終日と決められていて、それに伴いスタッフ、監督、そして選手個々人の契約も6月末日が区切りとなっています。
非公式な噂として、今シーズンに限りFIFAも含めた各国サッカー協会・連盟がその区切り日を延長させるとの話もありますが、オスカルは今その話をするつもりはないようです。
私自身の契約についても選手たちの契約についても今は話す時期ではないだろう。
個人的に今は日々の練習についてのことで頭がいっぱいだし、練習再開が決まってからは選手たちのコンディションやレベルを改めて最高の状態にすることしか考えていない。
契約についての質問はクラブにしたほうがいいだろうし、実際にその手の話題をするタイミングはクラブの手に委ねられているのだからね。
コンディショニングについて
状況がある意味で”普通ではない”というのは他のチームも平等なわけで、我々がしなければならないのはラ・リーガが決めた日程に合わせて調整することしかない。そこに向かって日々調整し、コンディションを整えて最善化して可能な限り高いレベルで高めていかなければならない。
しかし、論理的に考えて”最高の状態”とまで言えるレベルになるかは疑問だ。ここまでの数ヶ月で起きたことを考えればそれは仕方がないことだと言う以外無いが、今いる状況の中で最善は尽くさなければならないだろう。
交代枠が増加される可能性について
RFEFとLFPは今シーズンの残り11試合に限って1試合あたりの選手交代人数を5名に増やすことを検討していると言われています。
そのことについてオスカルは以下のようにコメントしています。
ピッチにいるチームの面子が半分代わることが認められるというのは正直言って奇妙な感じがするw
しかし、選手たちの健康面でのリスクを考慮すればいい考えだと言えるのではないだろうか。
それよりも無観客で試合が開催されることのほうが気がかりだ。特に今シーズンはバライードスでプレーする時、我々はファンから大きな力と熱量をもらっていたしそれがプラスに働いていた。
無観客で試合をするとなれば我々自身との戦いということにもなり難しい面も出てくるが、やむを得ないことだし対応しなければならないだろう。
第27節終了時点で正式にリーグ戦が中断される前、無観客でシーズンを継続させる案が議論されていた際には「プロサッカーはファンがあってこそのもの」と発言し、無観客での試合開催には否定的なコメントを出していたオスカルですが、状況が状況だけに今回は受け入れざるを得ないと考えているのでしょう。
なにはともあれ、ラ・リーガは再開へ
各クラブ、各監督、各選手共に様々な意見や思惑を抱えながら、それでもラ・リーガは再開へ舵を切りました。
果たして本当に6月12日から再開されるのか。交代人数はどうなるのか。各種契約の区切りはどう考えるのかなどなど、国内外含めてまだまだ調整が必要な事柄は多いのが事実です。
しかしこれはプロサッカーに限らず、現在の状況では世界中のすべての事柄が同じ状況だと言っていいでしょう。
例えば日本でも、緊急事態宣言が解除されたからといって、「緊急事態宣言の解除=新型コロナウイルスの収束」ではありません。
スペインもそれは同様で、5月11日から国家非常事態宣言は全4段階に分けての緩和措置第1段階が始まったに過ぎず、もし新型コロナウイルスの感染が再び拡大を見せるようなら、緩和措置が取り消されることもあるかもしれません。
そんな状況の中でラ・リーガ・サンタンデールは再開に向けた足取りを歩み始めています。
願わくば無事にリーグ戦が再開され、選手たちに何ら被害が及ぶことなく終了し、ひとまずは安心してオフシーズンを迎えられるように、関係者全員のもうひと踏ん張りに期待するしかありません。