ラ・リーガ再開に向けて各クラブが練習を再開
スペイン現地時間5月11日月曜日。
スペイン政府のガイドラインにより、新型コロナウイルスによる外出禁止措置等の緩和がスペイン国内で段階的に解除され始めました。
この措置に伴い、第27節を最後に中断されていたラ・リーガ・サンタンデール2019−2020シーズンも、再開に向けて動き始めています。
セルタ・デ・ビーゴを始めとするスペインの各クラブは5月11日に向けて各選手に対し新型コロナウイルスの検査を実施。
5月10日の段階で、プリメーラ・ディビシオン(ラ・リーガ・サンタンデール)とセグンダ・ディビシオンA(ラ・リーガ・スマートバンク)全クラブ中、5名の選手で新型コロナウイルスの陽性反応が検出されていますが、5月12日時点でさらなる陽性反応検出者は報告されていません。
そのため、5月11日には予定されていた通り各クラブはそれぞれの日程と計画に従って練習を再開。
セルタもア・マドローア練習場にほぼ全ての選手が集まり、フィジカルトレーニングを中心としたリハビリメニューからの練習を再開しています。
ラ・リーガ再開は6月初旬が目処
RFEF(王立スペインサッカー連盟)とLFP(ラ・リーガ機構)はラ・リーガ・サンタンデールなどの全国プロリーグを含むスペイン国内の全サッカー選手権について、当初予定されていた全日程を消化することを表明しています。
スペインの大手全国紙El Mundoによるとラ・リーガに関しては6月12日もしくは20日までに第28節を開催し、それ以降の5週間で第28節〜第38節までの11試合を消化することが計画されています。
UEFA主催の国際大会であるチャンピオンズリーグ、及びヨーロッパリーグに出場中のクラブにとってはUEFA主催大会再開後のレギュレーションも気になるところですし、超過密日程でのスケジュール消化となるため選手の健康状態に懸念が高まりそうです。
そのため、RFEFとLFPは2019−2020シーズン残り日程に関しては1試合5名までの選手交代を認める方向で動いていると言われています。
リーグ戦の再開は「是」なのか?
ファンとしてはラ・リーガが再開され、贔屓クラブの試合がどんな形であれ見られる可能性が高まるのは歓迎すべきことではあるでしょう。
ただし、リーグ戦の再開が本当に「是」であるのかについては様々な意見や見方があると考えられます。
この状況下において最も優先すべき事柄がなんなのか、という視点をどこに置くかによってこれは異なってくると思うのですが、現在世界が置かれている状況を考えると、僕が思う最優先事項というのは「選手の健康」ではないかと思います。
「当たり前だ」と言われそうですが、選手の健康が第一という考えは「選手を思いやっているから」では、ありません。
考えてみましょう。
新型コロナウイルスへの対処法がいまだに手探り状態であり、感染システムや経路が徐々に明らかになってきているとはいえ、このウイルスは人類社会にとって初めてかつ未知のものである状況は変わっていません。
極論を言えばリーグ戦が再開し、例えば接触プレー、例えば高体温時の吐息による飛沫、発汗による何らかの発症・感染、などなどが「起きる」とは言えないものの、同様に「起きない確証」もないのが現実ではないでしょうか。
仮に現在無症状でも何らかのきっかけで仮に感染しつつ無症状だった選手が、プレーすることによって感染源となり、試合中に接触した別の選手へ感染させることになったら?
リーグ戦再開が呼び水となってそれらの感染が拡大し、もしどこかのクラブで誰か選手が死亡するような事態になってしまったら?
プロリーグとしての活動は直ちに停止せざるを得なくなるでしょうし、その場合に改めて再開するまでの道のりは更に長いものになることも予想できます。
今でこそ各クラブが給与の削減や年俸の削減などを職員・スタッフ・選手と交渉の上で合意しているためにかろうじて踏みとどまれていると言われている各クラブの経済状況が悪化の一途をたどり、最悪の展開になることも考えられるでしょう。
リーグ戦を再開したことが呼び水となって最悪の結果を見ることになる可能性は、ゼロではないと僕は考えています。
僕個人の考えとしては、この状況下で「誰々には来シーズンも残留してほしい」とかそういうことは言っていられないと思っています。
この考えは僕がセルタ・デ・ビーゴという取るに足らないスペインの片田舎にあるちっぽけなクラブのファンだから、だということはあるでしょう。
資金力に余裕があるバルセローナやレアル・マドリーのようなクラブのファンであれば懸念事項は日程や順位、移籍の話にもなるのでしょうが、中小クラブの場合はそれどころではなく「存続」そのものが目下最大の懸念事項になりかねない状況だと言えると、僕は考えています。
つまり、選手の健康を守ること自体が、今はクラブの存続にも繋がる事柄であるということなのです。
「あちらを立てればこちらが立たず」のジレンマ
とはいえ。
リーグ戦が再開されなければ何らかの収入が入ってくる目処もたちません。
選手の健康を守れなければクラブやリーグ戦の存続そのものに多大な悪影響がもたらされることは明らかですが、だからといってリスク回避のために立ち止まったままではいずれ何らかの形で何らかの意味合いでの「死」がどこかで顕在化します。
スペインのみならず、そしてサッカーのみならず、世界中のスポーツ界、そして社会全体がこのジレンマに陥っている状況だと言えるでしょう。
正直言うと僕もこの状況で何が正しくて何が間違っているのか言い切ることができません。
例えばフランスのリーグ・アンのようにこのままシーズンを終了させ、イレギュラーな形であれ順位を確定させてしまえば、セルタはとりあえず今シーズンもプリメーラに残留できます。
ただし、それでは全38試合という決められたスケジュールの中で徐々にチームの状況が改善されつつあったマジョルカやエスパニョールのようなクラブにとって「フェアではない結果」だとも言えることになります。
「昇降格なし」というプランも議論はされているようですが、果たしてどうなるのかは判然としません。
降格無し、昇格ありという形にして、一時的にプリメーラを22チームにするという可能性もなくはないでしょう。
実際にスペインでは1995−1996シーズンから1996−1997シーズンにかけて、プリメーラ・ディビシオンを22チームにして開催した過去があります。
しかし1997−1998シーズンに20チームへ戻す際に降格チームだけが増える結果となったため当時はスペイン国内でかなりの議論を呼ぶことになったといいます。
90年代に起きたこの「22チーム事変」とも言うべき出来事は、該当者となったクラブの事務処理ミスが原因の大部分を占めていたところでもあり(そしてその主役の一角をセルタも担っていたのですが)、批判や議論の矛先がわかりやすい状況でした。
しかし今回はそうはいきません。
なにしろ「誰も悪くない」のです。
だからこそ、できれば形だけでもリーグ戦をきちんと消化し、「全38試合」というラ・リーガのレギュレーションを満たした結果を出したほうが誰にとっても納得の行くことではあるのですが・・・。
世界中の人々が陥っているこのジレンマ。
スペインサッカー界はどのように落とし所を見つけ、どのように解決できるのでしょうか。
RFEFとLFPの舵取りに注目したいところです。