理想のスタメンとしてモデルケースになりうるアトレティコ戦の11人
スペイン最大のスポーツ紙MARCAは、ラ・リーガ第5節アトレティコ・マドリー戦のスタメン11人が今シーズンのセルタにとって理想のスタメンではないかとの見方を示しています。
アトレティコ戦のスタメン11人を振り返ってみると、メンバーは
GK | ルベン・ブランコ |
DF | ルーカス・オラサ |
ネストル・アラウホ | |
ジョセフ・アイドゥー | |
ウーゴ・マージョ | |
MF | オカイ・ヨクスル |
スタニスラフ・ロボツカ | |
ラフィーニャ | |
デニス・スアレス | |
FW | イアゴ・アスパス |
サンティ・ミナ |
というラインナップ。
前節グラナダ戦までと最も大きく変わったのがセントラルMFとしてグラナダ戦までスタメン出場していたフラン・ベルトランに代わりオカイ・ヨクスル。右サイドMFとして出場していたブライス・メンデスに代わってラフィーニャが入ったことです。
プレーヤーとしての経歴と実績からすればラフィーニャのほうがブライス・メンデスに対して優位性があるのは獲得時点から明らかなことではありましたが、ラフィーニャは負傷明けでありビーゴの地元紙FARO DE VIGOもラフィーニャはアトレティコ戦で交代出場によりいくばくかのプレーをした後にある程度時間をかけてチームにフィットしていき、いずれはブライス・メンデスとスタメンの座を争うだろうという予想をしていました。
この点に関しては僕自身も同様で、第4節までのブライス・メンデスのプレーを見ている限り当面はブライス・メンデスがスタメンを確保していくだろうと思っていたのが事実です。
約4ヶ月ぶりに膝の負傷から復帰したオカイのスタメン復帰はある程度既定路線のようなところがありましたが、一方でフラン・ベルトランも徐々に役割をきっちりとこなせるようになってきており、正直に言って中盤のスタメンはしばらくフラン・エスクリバ監督にとって嬉しい悩みになるのではないか、と僕は思っていました。
ところが蓋を開けてみればアトレティコ戦ではラフィーニャもオカイも双方がスタメン出場。
そして超苦手とするアウェーのアトレティコ戦で0−0の引き分けという目に見える結果を手にしたことから、MARCAはこのアトレティコ戦が今シーズンのセルタとフラン・エスクリバ監督にとって理想のスタメンになるのではないか、と考えているようです。
ディフェンス面での安定
MARCAがアトレティコ戦の11人を今シーズンのセルタ理想のスタメンと考える根拠はディフェンス面での安定性にあるのではないかと僕は考えています。
試合を見れば明らかなことでしたが、オカイが復帰したことによって中盤から最終ラインにかけてのディフェンスは前節グラナダ戦までと比較して安定性を増していましたし、それは結果から見ても明白です。
フラン・ベルトランとオカイを比較した場合に最も異なる特徴はそのディフェンス能力であり、だからこそセルタはオカイの復帰にまだ時間がかかる、あるいはオカイ復帰後に再び同じトラブルに見舞われても混乱が生じないようにリヨンからパペ・シェイクを獲得したという背景があります。
プレシーズン中にもフラン・エスクリバ監督本人が「守備能力に長けたセントラルMFの補強がもう1人必要である」と語っていましたし、プレシーズン中に見せたフラン・ベルトランの守備能力には確かに不安が残るものでした。
その意味ではオカイの復帰とスタメン出場というのは時間の問題ではあったわけで、フラン・ベルトランにとってみればポジションを失ったということにはなるわけですが、再びポジションを確保するためには守備能力を高めるか、それ以上の何かをチームに提供できることを証明する必要があるでしょう。
オカイの復帰によってアトレティコのカウンターを防げたシーンがあったことは事実ですし、たしかにオカイではなくベルトランだったとすれば、もしかしたらアトレティコ戦ではゴールを決められて敗北していた可能性は高かったのではないかと僕は思います。
攻撃面での効果
では攻撃面を見た場合、ラフィーニャのスタメン出場はどんな効果をもたらしたのでしょうか。
もともとフラン・エスクリバはクラシックでオーソドックスな4−4−2のフォーメーションを使用してきており、イアゴ・アスパスと組むFWがサンティ・ミナでもトロ・フェルナンデスでもそれは変わらないと思われていました。
まだ1試合しか実現していないスタメンなので確信を持つには次節以降も見ていく必要がありますが、ラフィーニャのスタメン出場によって中盤と前線の動き方がこれまでよりも変化していたように思えます。
相手がアトレティコだったこともあり必然的にディフェンスに使う時間のほうが多かったため、この試合はあまり参考にはならないかもしれませんが、僕には4−4−2でありながら状況に応じてラフィーニャ、ロボツカ、デニス・スアレスの3人が徐々にポジションを変えて4−3−3のようにプレーするケースもあるように見えました。
サンティ・ミナはもともと右サイドでのプレーも得意とする選手なので、前線を左からデニス・スアレス。中央にイアゴ・アスパス。そして右にサンティ・ミナというような並びになり、なおかつ中盤が左からロボツカ。中央にオカイ。そして右サイドにラフィーニャというポジションになることも多く、ラフィーニャは状況に応じて柔軟にロボツカとポジションを入れ替えながら前線にも絡んでいくような素振りを見せていました。
このようなラフィーニャが見せた動きはブライス・メンデスには無いものですが、おそらくアトレティコ戦でラフィーニャが行ったようなプレーが実現できたのはオカイが中央に構えていられたからだと言えるでしょう。
ラフィーニャとブライス・メンデスを比較するとたしかにラフィーニャのほうがボールキープ力は優れているようにも思えますし、攻撃時のアイディアやオプションもラフィーニャのほうが場数を踏んでいるだけあって臨機応変な対応ができていたようにも思えます。
ただし、個人的にはアトレティコ戦でブライス・メンデスが交代出場した後に見せたプレーは、試合終盤でアトレティコも疲労が溜まっていたとはいえ少なくとも効果的であったことは間違いないと思える内容でしたから、正直な感想としてはラフィーニャがスタメン当確とは言えないのではないかという気もします。
おそらくは週中のリーグ戦開催がある場合など、それなりの頻度でフラン・エスクリバ監督はスタメンのローテーションを組むことになると考えられますし、その際には試合の重要度によってラフィーニャとブライス・メンデスの使い分けをしていくことになるのではないでしょうか。
選手層が厚くなりオプションが増えたセルタ
アトレティコ戦のスタメンが今シーズンのセルタにとって理想の11人であるかどうかは結論を急ぐ必要はないと僕は思っていますが、一つ明らかなのはこれでセルタにとってはスタメンや交代出場のオプションが格段に増えたということでしょう。
ラフィーニャとブライス・メンデス。そしてオカイとフラン・ベルトランだけでなく、セントラルMFにはパペ・シェイクも控えておりアトレティコ戦でも十分に戦えることをパペ・シェイクは示しました。
適正かどうかはともかくとしてデニス・スアレスとラフィーニャのポジションや類似する役割をフラン・ベルトランとブライス・メンデスの2人に任せることも展開によってはありえますし、FWにはトロ・フェルナンデスが控えています。
前線から最終ラインまで満遍なくスタメン出場する選手とほぼ同様の能力を備えた選手をここまで揃えられたというのはある意味で奇跡的なことであり、その意味でも今シーズンはより安定した戦いと結果が求められることになるのは言うまでもありません。
メンバー構成のオプションが増えたことは喜ばしい一方で、フラン・エスクリバ監督にとっては状況次第で抱えた選手層の厚さがプレッシャーになることも考えられます。
フラン・エスクリバは決して悪い監督ではありません。
その意味でも、ファンをより安心させるためにフラン・エスクリバが結果をしっかりと出していくことが今後の数試合で求められていくことになるでしょう。