開幕戦を2-0で勝利したサラゴサ
日本代表MF香川真司が移籍し、一躍日本でも注目のクラブとなったセグンダAのレアル・サラゴサ。
8月17日の開幕戦でテネリフェと対戦したサラゴサは、ラ・ロマレーダで2-0と勝利し開幕を白星でスタートすることに成功しました。
注目の香川真司も随所で好プレーを披露。トップ下のポジションで効果的な配給と前線への飛び出しを見せ、チームに貢献できることをプレーで示しています。
ビクトル・フェルナンデス監督は開幕戦の勝利に満足
サラゴサのビクトル・フェルナンデス監督は試合後の記者会見で試合結果に関して次のようにコメントしています。
勝利が必要だったし、無失点であることも必要だった中で我々はその双方を実現することができた。
特に対戦相手のことも考慮する必要があるだろう。テネリフェはどこにでもいるような相手ではなく、良い中盤と持ちボールを良く動かすチームであり、彼らのチームとしてのクオリティは高いと断言できる。
そういったチーム相手に無失点で勝利を飾ることができたのは良かった。
まだ開幕の1試合を終えたばかりなので、この時点での順位などは特に考える必要がないことだとは思いますが、長いセグンダAのシーズンを考えると失点は少なければ少ないほどいいというのは間違いありません。
その意味では開幕戦を無失点で勝利できたというのはチームとしても指揮官としても満足のいく結果だったということなのでしょう。
暑さの中で厳しい試合だったことを強調するビクトル・フェルナンデス
非常に厳しい暑さの中での試合だった。
私もベンチにいながら窒息しそうになっていたよ。ただし、そのような厳しい環境の中で両チームとも早いリズムで効果的なプレーの応酬が繰り返されたことはある意味で驚きだったとも言えるし、サラゴサが暑さの中で見せたプレー内容は良いものだったと言えるだろう。
プレー内容的にも素晴らしいチームを相手に勝てたことは評価されて然るべきだと感じるし、今日のプレー内容からすればテネリフェも最終的には順位表の上位にいることになるだろうと個人的には断言できる。
ビクトル・フェルナンデスは夜21時キックオフだったにもかかわらず暑さが収まらない中で難しいコンディションの中での試合だったことを強調しつつ、対戦相手のテネリフェも効果的なプレーを繰り広げており、その中でサラゴサが勝利できたことの意味を暗に示唆しているようです。
このコメント内容からはビクトル・フェルナンデスの人間性の変化を感じることができると僕は考えています。
かつて20年前にビクトル・フェルナンデスがセルタを指揮していた時代、彼のコメントは基本的にセルタに関するものでしかなく、主語はすべて自分たちでした。
「自分たちのプレー」「自分たちにとっての状況」「自分たちから見た結果」というものが主語になっており、基本的に対戦相手や他チームのことを語ることを極端に避け、哲学のフレーズを引用しながら記者の質問をかわしていくような会見での発言が目立っていました。
しかし今回の記者会見に関してはテネリフェに関して直接的な発言をするなど、20年前には見られなかった変化が現れており、この部分に関してはセルタの監督を退任後に経験した様々な出来事が彼の中で何かを変えていったのだろうと僕は考えています。
いずれにしても基本的にスペインの監督で、対戦相手に対して必要以上にネガティブなコメントをする監督はあまりいませんから、そういった意味では「普通のコメント」でもあると言えるのではないでしょうか。
勝利は評価しつつも、改善の余地はあると示唆
勝利に関する一定の評価はしつつも、ビクトル・フェルナンデスとしてはまだチームとして改善の余地はあると考えているようです。
更に一貫性を持って強固な集団としてプレーしていく必要があるのは間違いない。
我々は今とても良い状態にあり、輝ける可能性を秘めていると考えている。
良いサッカーをプレーする必要があるし、試合中に我々が理想とするようなプレーが実現できないタイミングではより強固な安定したプレーもできるようにならなければならない。
今日のサラゴサは良かったし、少なくとも我々が目指すプレーと約束事はしっかりと実現できたと思っている。
いわゆる「ソリッドな集団」という状態にチームを持っていきたいという思いを吐露しつつ、それでもビクトル・フェルナンデスが理想とする美しいサッカーを同時に実現したいという思いが見て取れる発言でしょう。
セルタ時代から敗戦後のコメントなどでもしばしば見られた同様の発言は、ビクトル・フェルナンデスの代名詞のようなフレーズにもなっており、監督や人間としての若干の変化は感じられるものの基本的な姿勢はやはり同じなのだと感じることもできる一面はあるようです。
試合そのものはフルマッチを見ることはできませんでしたが、15分間のハイライト映像を見る限りではビクトル・フェルナンデスが好みとするトップ下を置いたフォーメーション、かつトップ下の選手が前線と流動的に絡みながらゴールにも向かっていくスタイルというのは変わっていないようですし、彼の戦術における重要なパーツであるトップ下の役割を香川は十分にこなしていたようにも見えます。
コンディションが更に上がり、チームメイトとの連携がもっと良くなっていけば香川が輝きを増すシーンがより多く見られるようになるのではないかと感じられる内容だったと僕は思います。
スペイン語でプリメーラ・ブエルタと言われる12月までのリーグ前半戦をどう乗り切るかでサラゴサの昇格の可能性が見えてくると思います。
願わくばその中心に香川がいることを、日本人のいちサッカーファンとしては期待して見ていこうと思っています。