ラ・リーガ第25節:セルタはホームでレガネスと対戦
ラ・リーガ・サンタンデール2019−2020シーズン第25節。
セルタ・デ・ビーゴはホーム、アバンカ・バライードスにレガネスを迎えて戦います。
現在セルタは17位。対するレガネスは19位で両チームの勝ち点差は2。
レガネスとしてはアウェーでセルタに勝利できれば降格圏を脱出することに繋がりますし、セルタはホームでレガネスを叩くことができれば残留に一歩近づくことになります。
リーグ戦は後半戦に入っているため、当然のことながら今シーズン中に両チームが戦うことはもうありません。
来シーズンに両チームが戦うことがあるとすれば、それがプリメーラ・ディビシオンでなのか、それともセグンダ・ディビシオンAでなのか。
あるいは片方の所属リーグカテゴリーが異なることになり、来シーズンにも同じカードが見られなくなるのか・・・。
2月22日に行われる第25節は、両チームのファンにとって胃が痛くなるような内容になる可能性を秘めています。
順位だけではないレガネスの問題
状況的に厳しいのはレガネスなのですが、それは順位の点でだけではありません。
レガネスは2018年に5年契約で獲得し、レガネスで65試合16ゴールという実績を残していたモロッコ代表FWユセフ・エン=ネシリを1月の移籍市場でセビージャへ売却。
エン=ネシリの移籍以降は前線の柱として期待されていたのはデンマーク人FWマルティン・ブライトワイテでしたが、なんとスペイン現地時間2月21日にブライトワイテはバルセローナへ電撃的に移籍することが発表されました。
冬の移籍期間は既に閉鎖されていますが、ラ・リーガのローカルルールとして
所属選手が6ヶ月以上の長期離脱を強いられると判明した場合は特例として代替選手の獲得が認められる。
というものがあります。
バルサはこのルールを活用してレガネスからブライトワイテを獲得したわけです。
一方でこのスペイン独自のローカルルールに対して、世界のサッカー界共通ルールを定めているFIFAは公式に否定的な見解を以前から表明していました。
実際に、2010年に同様の問題がビジャレアルに起きた時、ビジャレアルが獲得しようとした選手の移籍をFIFAが国際移籍承認書を発行しなかったという事件がありました。
今回のバルサが、発動する可能性も十分にあったFIFAの横槍をどうやってかわしたのかはわかりません。
しかし、とにもかくにもバルサとしては負傷により長期離脱が確定してしまったウスマン・デンベレに代わるFWの枠を埋めることに成功。
反対にレガネスは、移籍期間も終了したため落ち着いて残留に向けたチーム編成を組み直そうとしていた矢先に前線の柱を失うことになってしまったことになります。
中〜小規模のクラブを応援するファンならよく分かると思いますが、あるクラブがFWの選手を失うこと。特にゴールを5点以上決めているような選手を失うことは考えられないほど大きな痛手です。
ビッグクラブのように数千万ユーロを飛び交わせて各国代表クラスの選手を取っ替え引っ替えするのとは違い、中小クラブは一人の選手のプレーと成績がチームの浮沈を左右します。
しかもその重さは「メッシが決勝で点を取れなかった」とかそんなレベルの話ではなく、「やつが点を取れなかったからチームが消滅した」とかそういうレベルで切羽詰まった重さです。
この状況に最も頭を抱えているのはレガネスの監督を務めるメキシコ人監督ハビエル・アギーレ・オナインディアでしょう。
水曜日にLa Voz de Galiciaが行ったアギーレへのインタビューでは、アギーレ本人がブライトワイテのバルサ移籍の可能性について認めつつも、あくまでも公式発表されるまではブライトワイテはレガネスの所属選手であり、土曜日の第25節に向けてもブライトワイテを軸にした選手構成を考えているとコメントしていました。
ブライトワイテは(2月20日までは)レガネスの現時点におけるトップスコアラーでした。
第24節のベティス戦においても厄介な存在であり続け、僕は密かに第25節で対戦する彼をセルタのDF陣達がどう抑えられるのだろうかと心配していたのです。
そのブライトワイテが突然いなくなった。
もちろんこの事実自体は一人のセルタファンとして考えればありがたく、幸運なことになる「可能性がある」とも言えます。
ライバルチームのトップスコアラーが負傷でもなければ累積出場停止でもなく「いなくなる」というのはありがたいことでしかありません。
ただ、一人のサッカーファン。それもラ・リーガのファンとして見た場合にこの移籍劇はちょっとモヤモヤするものがあります。
ローカルルールはいつまで残(せ)るのか?
バルサだけを糾弾するのはお門違いではあるでしょう。
なぜなら、バルサもバルサでルール違反を犯しているわけではないからです。
今回はたまたまバルサでしたが、過去を振り返ってみれば同じようなケースで同じような移籍を行ったクラブはビッグクラブ以外でもスペインではよく見られた光景でした。
「こんなローカルルールを運用しているスペインが問題だ」
と一口に言ってしまうのは簡単ではあるのですが、僕個人としては「では他の国ではどうなのか」ということを把握できていないのであまりおおっぴらに批判をしてしまうのも気が引けます。
そして、事実としてバルサのケースで言えばウスマン・デンベレの負傷によってFWの一角に穴が空いてしまったのは確かですし、チャンピオンズリーグを控えた彼らにとっては何かしらの穴埋め補強が必要であることも確かでした。
これはスペイン国内で適用されている公式なルールですから、別にビッグクラブを優遇するための処置でもなんでもありません。
そのことを念頭に置いて考えるべき問題です。
果たしてこのような「長期離脱選手の穴埋めとして例外適用による移籍期間外での選手獲得を認める」というルールは今後も適用されるのか、されるべきなのか。
これが議論されるべきテーマなのだろうと僕は考えます。
禁止してしまうのは恐らく簡単なことではあるのですが、その場合に負傷による同様の事態が今後起きた場合の解決策はあるのかないのかを考える必要があります。
ただ禁止しただけでは同じ事態になったクラブから不満が出るでしょう。
「スペイン国外からの獲得なら認める」としたとして、応じる他国のクラブがあるとも思えません。
カンテラからの昇格のみを認めるというのも一つの手段ではありますが、育成組織であるカンテラを整備し、トップチームに登録し実戦の可能性を見いだせる選手を育てるのは並大抵の努力ではありませんし資金力のないクラブはそもそもカンテラ組織を整備できません。
FIFAは早くこのスペインローカルルールを撤廃するよう求めているようですが、果たして早晩この問題が解決するとは僕には思えないのです。
FIFAとLFP、そしてRFEFのせめぎ合いは暫く続くでしょうし、もしかしたらこうした出来事が2020年中に行われると言われるRFEFの会長選挙に際して論点の一つとして語られることもあるかもしれません。
いずれにしても、レガネスが突然その翼を失ってしまったのは事実です。
決して自分のクラブにこんな状況が訪れてほしくはありませんが、果たしてこの状況がセルタとレガネス双方にとってどのような結果をもたらすことになるのか?
セルタファンとしては明日の試合を見届けることで何か見えるものがあるかもしれない、と僕は考えています。