【セルタ】プレシーズンマッチを地元で開催したセルタの意図とは?

La Liga情報

プレシーズンマッチ最初の2試合はガリシア州内で開催

2019−2020シーズン開幕に向けて、プレシーズンマッチを順調に消化し調整を進めているセルタ・デ・ビーゴ。

デポルティーボ・ルーゴ、フランスのリール、そしてドイツのウニオン・ベルリンという3チームと戦ったプレシーズンマッチのうち、ルーゴ戦とリール戦はそれぞれルーゴとビラカルシア・デ・アロウサというガリシア州内の町で行われました。

どちらのスタジアムもプリメーラで最少収容人数となるエイバルのイプルーアよりも小さいスタジアムで、近隣に建つマンションからは試合が全て観戦できるような立地になっています。

クラブの規模が全く異なることや、クラブの財政状態も異なるため比較はできないのですが、例えばレアル・マドリーやバルセローナ、セビージャなどは積極的に海外ツアーを行いマーケティング活動に余念がなく、海外開催となるプレシーズンマッチでの収入も含めた経済サイクルをうまく回しています。

セルタも少なくないスペイン国外のファンを抱えてはいますが、有名クラブとはその数において比較対象にすらなりません。

やむを得ない状況であるとはいえ、セルタは合宿も地元で行い、プレシーズンマッチも地元で行うことを選択しています。

このセルタの決定は、財政的な問題によるものだけだったのでしょうか?

地元でチームのお披露目を行う意義

セルタの他にも海外遠征を行わないクラブはあるわけですが、今回は敢えてセルタにのみ焦点を当てて分析しましょう。

セルタのような中小クラブにとって、安定的に収入を上げる手段はどんなものが考えられるでしょうか?

まず第一に考えられるものが「年間チケット」の販売でしょう。前回の記事「【セルタ】新シーズンに向けた年間チケットの購入者&登録数が増加」で書いた通り、この7年間でセルタの年間チケット購入者数は約1万人増加しており、2019−2020シーズン向けの年間チケット販売は前年を上回りました。

【セルタ】新シーズンに向けた年間チケットの購入者&登録数が増加
セルタの年間チケット購入者数が増加中。前回の昇格から7年間で約1万人の増加になっているそうです。購入者が増加した背景や、どのような戦略があったのかについて考察しました。

もう一つはスポンサー収入です。最近、セルタはガリシア州内で電気などの公共インフラサービスを提供するXenera(シェネーラ)社と新たにスポンサー契約を締結し、既存のファンへ向けたXenera側からの特別プラン提供と、Xenera側から既存顧客に向けた新たなパッケージ契約の提供を始めています。

スペインには大手のインフラサービス提供企業がありますが、テレビに地方局があるのと同様、公共サービス会社も各州の地元企業が存在しています。全国展開する企業に就職した場合はスペイン国内の転勤や異動なども当然考えられますが、地元企業であれば地元から離れたくない労働者にとっては願ったり叶ったりというわけです。

関連グッズの販売も重要な収入です。ユニフォームやバッグ、各種アクセサリーやトレーニングシャツなど、常に「セルタの何か」を身に着けていたいファンにとっては新しいグッズが出ればどうしても手に入れたくなるものですし、そのような機会を増やしていけばリピート購入者が増加するためクラブにとっては大事な収入源になります。

新たにスポンサーになったXenera社はルーゴを本社とする会社です。ルーゴはガリシア州ルーゴ県の県都で、ルーゴ県はガリシア北部にありア・コルーニャ県の隣にあります。

そこまで考えていての開催かどうかはともかく、ア・コルーニャ近くでセルタがプレーし、なおかつア・コルーニャ近隣の企業がセルタのスポンサーになっている事実。そしてその企業のお膝元でセルタの試合が開催されたということは、少なくともデポルティーボ・ラ・コルーニャの経営陣にとっては面白くない話であることに違いはありません。

とはいえ、「ガリシアのクラブ」としてのアイデンティティを確立し強化しようとする方針をセルタが掲げている以上、ガリシア州内の基盤を固めることは必須であると言えますし、理由の是非はともかくガリシア州内でプレシーズンマッチを行った意義は間違いなくあり、なおかつ成功だったと言えるでしょう。

ガリシア内での勢力圏を広げつつあるセルタ

1999−2000シーズンのリーグ初優勝時、デポルティーボ・ラ・コルーニャは我こそがガリシアとでも言うような振る舞いを見せ、お膝元の地元紙La Voz de GaliciaやTVG(Television Galicia)もそのような扱いでデポルティーボの優勝を取り扱いました。

前監督であるハビエル・イルレタによるデポルティーボの優勝はビーゴ市民とセルタファンにとっては面白い話であるはずもなく、連日繰り返されるデポルティーボの報道にうんざりしていたわけですが、時代は既に移り変わっています。

セルタのカルロス・モウリーニョ会長が掲げる「ガリシア主義」とでも言うべき地元出身者によるカンテラ強化策は、一方ではデポルティーボに対するアンチテーゼのようなものだとも言えます。

デポルティーボはアウグスト・レンドイロ元会長の豊富な資金投入により国内外の有力選手をかき集めることで優勝を成し遂げることができましたが、その一方で長年に渡って地元出身の有力選手をほとんど排出できていません。

それに対してセルタは90年代後半のDFミゲル・アンヘル・“ミチェル”・サルガードが長らくスペイン代表の右サイドバックを務め、その後もスペインの各年代別代表にあまねく選手を送り出しています。

ミチェル・サルガード以降もFWミチュやボルハ・オウビーニャなどを定期的にA代表まで送り出せており、現在はイアゴ・アスパスとブライス・メンデスがスペイン代表選手として活躍しています。

ルーゴとビラガルシア・デ・アロウサで行われた2試合のプレシーズンマッチにおいて、とても興味深い光景が見られました。

試合を中継するカメラに映るいたる所でセルタのユニフォームを着たファンが映し出され、ルーゴ戦では両チームに。そしてリール戦では完全にセルタへ声援が送られていたのです。

おまけに試合中にも関わらず、イアゴ・アスパスのサイン入りユニフォームのプレゼント抽選結果が読み上げられて当選したファン達が歓声をあげたり、開幕戦のペアチケット抽選会や割引販売の案内が頻繁に行われていました。

ビラガルシア・デ・アロウサはビーゴと同じポンテベドラ県の町なのでまだわかるのですが、更に北部のルーゴにおいてもビラガルシア・デ・アロウサと同様の歓声が上がっていることが僕には印象的でした。

もともとルーゴとビーゴの関係性は悪いものではないのですが、ルーゴにはデポルティーボ・ルーゴというれっきとした地元クラブがあり、そもそも地元のデポルティーボ・ルーゴとセルタの試合中の出来事です。

ルーゴとビーゴは電車でも1時間半〜2時間程度はかかる距離なので、通うのは不可能ではないものの隣町に行くような感覚でもありません。それでもセルタがルーゴで開幕戦のチケット抽選会や割引販売を行ったということは、明らかにガリシア州内でのセルタファンを増やそうとしていることと、こうしたマーケティング活動を行う下地がガリシア州内で確実に出来上がりつつあるということを明確に示していると僕は考えています。

年間チケット購入者数増加は地道な活動から

前回記事「【セルタ】新シーズンに向けた年間チケットの購入者&登録数が増加」でお伝えしたように、2019−2020シーズンに向けたセルタの年間チケット購入者は前年対比800人となっており、昨シーズンから引き続き年間チケットを購入したファンの割合は90%を超えています。

【セルタ】新シーズンに向けた年間チケットの購入者&登録数が増加
セルタの年間チケット購入者数が増加中。前回の昇格から7年間で約1万人の増加になっているそうです。購入者が増加した背景や、どのような戦略があったのかについて考察しました。

僕は前回記事の中で「セルタがクラブとして標榜してきたポリシーは本気なのだということをファンに示せたことが、年間チケット増加の最も大きな理由になっていると僕は個人的に理解」すると書きました。

同様に今回のプレシーズンマッチやその最中に行われた来場者へのサービスといった地道な活動がガリシア州内の「地元ファン」を増やし、ビーゴへの流入を増加させ、結果的にクラブにとって有益な「お客さん」を増やす結果になっているとも言えるでしょう。

プロスポーツは競技者、ファン、興行主、チームの4者が揃わなければ成立しません。

そしてサッカーにおいて規模の小さなクラブが安定した収入を上げていくためには何よりもまず「固定客」を確保することが最大の基盤となります。

それが地元ファンであり地元企業であり、年間チケット購入者で構成されているとなれば一つの理想形に近づいていると言ってもいいでしょう。

有力な選手をただかき集めるだけではなく、自ら生み出すという作業は一朝一夕に達成できることではありません。

少なくとも今現在のセルタはまだまだその道程におり、しかも「最終的な結果」というものは存在しません。始めた以上続けるしかなく、そして続けていかない限り短期的にも長期的にも結果が見えない道のりです。

あと数年で100周年を迎えるセルタが、次の100年をどのように歩んでいけるのかが、いま行っている努力によって決まってくるのかもしれません。

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