アトレティック戦までは続投の判断が下されたフラン・エスクリバ
セルタ・デ・ビーゴの監督フラン・エスクリバは、ひとまず第8節のアトレティック・ビルバオ戦まではセルタの監督として指揮を取ることになるようです。
第2節のバレンシア戦で勝利して以降は勝ち星のないセルタ。
第3節〜第7節までの戦績は2敗3分で、開幕からの合計勝ち点は6。順位は17位となっています。
「今シーズンの最優先目標はプリメーラ残留」
という開幕前から掲げていたクラブの目標は現在のところ非常に危うい状況になっており、「大敗はしないが勝てない」という降格するチームによくありがちなパターンを踏襲しつつあると言ってもいいでしょう。
そんな中、第7節のエイバル戦に敗れた後、案の定沸き起こったフラン・エスクリバ監督の解任論に関してはクラブとして第8節のアトレティック・ビルバオ戦までは現状維持との判断を下しています。
スペイン現地時間9月30日の月曜日、午前10時半から行われた経営会議の席上でフラン・エスクリバの解任が議論されるのではないかとの予測がビーゴの地元紙FARO DE VIGO、スペイン最大のスポーツ紙MARCA双方からなされていましたが、セルタの副会長リカルド・ボラスは「フラン・エスクリバの将来が議題に上がることはない」とコメントしていました。
とは言いつつも現在の成績についての話題が一切ノータッチだったとは考えにくく、「議題には上がらない」という言葉の意味は「すぐに解任という話にはならない」というだけだったのだろうと僕は思っています。
つまり「解任するとしたらどんな状況になった時か」そして「解任するとして後任の目処は立つのかどうか」については当然議論された可能性があり、エイバル戦直後に解任されなかったということは今すぐに後任監督と契約する目処が付いていないから、である可能性は否定できません。
実際のところセルタの地元ビーゴでは2000人以上が投票した結果、79%のファンがフラン・エスクリバを解任すべきだと答えています。
📊 Más de 2000 votos después… pic.twitter.com/1ZYaLrXA0z
— NoticiasCelta (@noticiascelta) October 1, 2019
しかしクラブが下した判断は「アトレティック戦までは現状の体制で臨む」というものでした。
現状の課題
では、現在のセルタは一体何が問題なのでしょうか。
セルタはここまで7試合を戦い4得点9失点。
2試合に1点取れればいい方ということになります。
前線にイアゴ・アスパス、サンティ・ミナ、デニス・スアレス、ブライス・メンデス、ラフィーニャ、ガブリエル・”トロ”・フェルナンデスという選手を揃えていながら7試合で4得点というのはあまりにも寂しい数字で、率直に言って期待はずれの感はどうしても否めません。
しかしだからといって上述の攻撃陣が調子を落としているのかというと特にそんなことはないはずだというのは、試合を見ているファンであれば理解できるでしょう。
問題は1にも2にも攻撃の組み立てが甘くワンパターンで、得点チャンスを作り出せていないことです。
開幕前にトルコ代表MFオカイ・ヨクスルの負傷が長引いていたため、「デニス・スアレスの守備負担を減らす」ためという目的でフランスのリヨンからカンテラ出身のMFパペ・シェイクをレンタルで獲得していたものの、ここ数試合の中でデニス・スアレスが左サイドの奥深くまで守備に戻るシーンも多々見られています。
オカイが復帰した後もその状況は改善されておらず、エイバル戦では左サイドバックのルーカス・オラサとほぼ同じ位置まで下がってディフェンスをする場面も多く、そこから攻撃に入れ替わった際には中盤で渋滞を起こして前線まで効果的・効率的にボールを運ぶことができないという弊害が生まれていました。
しかもこれはほんの一例で、右サイドや中央でも同様に問題が頻発しています。
つまり現状の戦い方でセルタはせっかく獲得した才能あふれる選手達の能力を全く活かしきれておらず、3年連続でスペイン人選手最多得点賞である「サラ賞」を獲得しているイアゴ・アスパスの得点能力も使いこなせていない状況です。
守備面ではガーナ代表DFジョセフ・アイドゥー、メキシコ代表DFネストル・アラウホがよく頑張ってはいるものの、エイバル戦の2失点目のようなアイドゥーの危険なミスが出てしまうようではチーム全体として危機意識に統一感が欠けている印象は否めません。
7試合で9失点というのは悲惨な結果とは言えませんが、だからといって得点を取ることができていなければ仮に守備がうまく機能していたとしてもあまり意味がありません。
そもそも今シーズン攻撃陣の選手を積極的に獲得したのは「ゴールを奪うことで勝ち点確保を容易にする」という大きな目標があってのことであり、現時点での成績を見てみればその目標は達成できていないどころか実現が難しいのではないかと思えてしまう内容になっています。
今のセルタにフラン・エスクリバは適任なのか?
フラン・エスクリバは決して悪い監督でもなければ無能な監督でもありません。
ボロボロの状態で降格圏内にいた昨シーズンのセルタをリーグ戦が半分終わった状態で引き受けて残留を実現することは簡単なことではありませんし、昨シーズンの結果を見れば状況に応じた対処がある程度はできる能力を持った監督であることは事実です。
しかし昨シーズンフラン・エスクリバがセルタの監督に就任した時と現在ではチーム編成も異なりメンバーの特徴も大きく異なっています。
昨シーズンまでのセルタはどちらかというとカウンターで抜け出して勢いに任せて点を取るほうが合っているスタイルの選手が多く所属していましたが、今シーズンに関してはじっくりボールを持ってしっかりと組み立て、相手のディフェンスを崩していくタイプが得意な選手のほうが多く揃っています。
サンティ・ミナやデニス・スアレスに長い距離を走らせるよりも、イアゴ・アスパスを含めた前線4人と中盤が絡みながら距離を詰めて最後に崩していくというスタイルの攻撃をしたほうが得点のチャンスは増えると僕は思っているのですが、これまでのところそういった攻撃を行うシーンはほとんど目にすることができません。バレンシア戦とセビージャ戦のゴールはそれに近いものがありましたが、それ以降はバレンシア戦、セビージャ戦で見せたような攻撃を展開できずにいます。
ここまでの7試合ではフラン・エスクリバが狙いとする攻撃の形が見えなかったセルタですが、この状況においてはもう時間がありません。
点が取れなければ勝ち点が取れないのは自明の理であり、早急に改善することが求められます。
アトレティック戦で攻撃面での改善が成されなければ今後も同じ状況が続くことは容易に想像できることであるため、フラン・エスクリバが今後もセルタの監督として適任なのかどうかという疑問は、アトレティック戦での攻撃を見ることで判断されるのではないかと僕は考えています。
デニス・スアレスはファンに”団結”を呼びかけ
そんな中、セルタの選手達は9月30日の月曜日からロッカールームで自主的な選手ミーティングを行っており、状況の改善を図ろうとしています。
まだ7節が終わったところだとはいえ、「まだ」7節と言い続けるわけにはいかず週末には第8節が訪れます。
昨シーズンのセルタは奇跡的な残留を果たしましたがその影には多くのファンによる継続的で熱烈なサポートがあったことを選手も経営陣も認めています。
少なくとも現時点ではファンはまだセルタを見放してはおらず、2003−2004シーズンの降格時のような絶望的な雰囲気には至っていません。
だからこそ今のうちにファンの心をしっかりと掴んでおかなければ、今後更に苦しい状況になった時に手の打ちようがなくなるということを選手達はよくわかっているようです。
デニス・スアレスは自身の公式Twitterで
このクラブとファンの強みは、クラブのプロジェクトに対する団結と夢を共有していることだ。僕たちの目標は何も変わっておらず、目標から反れているものはなにもない。
僕たち全員が共にいることで、目指すべき場所にたどり着けることを僕たちはわかっているはずだ。
「自分を信じよう。他の誰もそうしてくれないのだから」
と発信。
セルタを取り巻くファンと、現在のクラブは結びつきが強く、昨シーズンのようにファンとクラブが一体感を持つことで現在の困難な状況を打開していけるはずだというメッセージを発したデニス・スアレス。
左サイドで獅子奮迅の動きを続ける彼をピッチ上でサポートし活かしていける攻撃の形を一日でも早く確立していくことが、このデニス・スアレスの発言を現実のものにできるはずです。
第8節のアトレティック戦。
ホーム、アバンカ・バライードスでセルタとデニス・スアレスはファンと喜びを分かち合うことができるのでしょうか。