噂が現実に。ユレン・ロペテギがセビージャの新監督へ就任。
数週間前から噂に上がっていたことが現実になりました。
元スペイン代表、元レアル・マドリー監督のユレン・ロペテギがセビージャと正式に契約。新監督として2019−2020シーズンからの3年契約で合意し、セビージャが実施した記者会見で発表されました。
ロペテギはセビージャのスポーツディレクター・モンチが招聘する10人目の監督となり、今後(何もなければ)3年間をエスタディオ・ラモン・サンチェス・ピスフアンのベンチに座りセビージャの指揮をとることになります。
本来は6月3日の月曜日にも正式な契約書へのサインと発表が行われる予定だったようです。しかし6月1日土曜日の午前11時40分ごろに、元セビージャの生え抜き選手であり元スペイン代表FWでもあったホセ・アントニオ・レジェスの交通事故が発生。
時速237Kmで走行していたレジェスはそのまま死去し、翌6月2日にセビージャ市内及びラモン・サンチェス・ピスフアンで追悼式が行われていたことから、セビージャはロペテギの監督就任発表を6月4日火曜日に変更したと報じられています。
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ロペテギとセビージャとの契約内容
ロペテギのセビージャとの契約は2022年までの3年間。スペイン国内の報道では、モンチがスポーツディレクターとしてこれまでに招聘してきた新監督の中では最も長い契約期間になっており、このことからもモンチがロペテギの監督としての手腕を高く評価していることが伺えます。
契約の詳細やロペテギに支払われる年俸は明らかにされていませんが、1年毎に契約条件の見直しが可能であり、なおかつ契約解除金を支払うことで各シーズン終了後にセビージャ側から契約解除を通達できる内容が盛り込まれているようです。
地元セビージャのファンはロペテギに懐疑的。しかしモンチは・・・。
一方で現地セビージャのファンは昨年のワールドカップ開幕前から続いたロペテギを中心とする騒動を理由に、ロペテギの監督就任には懐疑的な見方をしています。
セビージャで育った後レアル・マドリーへ移籍したセルヒオ・ラモスがサンチェス・ピスフアンでファンに挑発的な態度を度々取ったことでセビージャファンからそっぽを向かれました。
対象的に、涙とともにサンチェス・ピスフアンを去ったへスーリ、ヘスス・ナバス、ホセ・アントニオ・レジェスなどが今でも愛され、ヘスス・ナバスに至っては復帰まで成し遂げたことからわかるように、セビージャの地元ファンはクラブへの忠誠心を重要視します。
セビージャファンからすれば、ロペテギはスペイン代表監督在任期間中にレアル・マドリーと新監督就任の契約を取り交わしていたという、いわば「裏切り行為を公然と行っていた」人物と映っています。
そのため地元セビージャのファン達はモンチによるロペテギ招聘を分の悪いギャンブルではないかと見る向きが高く、モンチの耳にもそういったファンの懐疑的な声は届いているようですがモンチ本人は記者会見でこう語っています。
余計な雑音は気にしないようにしているとだけ言っておくが、1つ言えるのは(ロペテギ招聘がギャンブルだと言うなら)私はこの賭けに勝つつもりでいる、ということだけだ。
ロペテギは現在契約可能な監督候補として我々がリストアップした中で最も信頼でき、我々の目的を完遂できる能力を持っている監督だと考えている。会長とはそれこそ1分おきに連絡を密に取り合い情報共有をしてきた。したがって、彼は私の唯一最大の候補者がロペテギだったことをよく理解してくれている。その結果として私と会長の間に一切の誤解がない状態でロペテギを監督として招聘することを決めたということだ。
セビジスタとしてもスポーツディレクターとしても、今日の私は最高に、素晴らしく、幸福な人間だよ。
ロペテギとのプロジェクトは長期間に渡るものになる価値があるだろう。我々は最大限の満足をクラブに与えてくれる能力を持った監督を手に入れたのだから。新たなプロジェクトにおいてロペテギがそこにいるということは我々が最大限野心的でありつつ、最大限ふさわしい行動を取ることができるようになることを意味している。
私は長い目で物事を見て、成熟していくのを見るのが好きなんだ。我々の新たな監督はその意味で私の好みに合っているし、長期プロジェクトに対して一緒に取り組める人物だと思っている。
モンチとしては最大限の賛辞をロペテギに送りつつ、ファンに苦言も呈しているように見えますね。
早々に新監督を決定・発表したセビージャとモンチの狙いとは?
1つ明らかなのはモンチはロペテギに”現時点では”最大級の信頼を置いているということでしょう。少なくともスペイン代表監督時代の実績には申し分ありませんし、あのまま代表監督を解任されなければワールドカップの結果が違ったものになっていた可能性はあったわけで、僕も個人的にロペテギの監督としての能力や采配には疑問を持っていません。
昨年後半の事の顛末があまりにもひどかったのでどうしても周囲から色眼鏡で見られてしまうことは避けられないとは思いますが、少なくともクラブの運営を預かる人物から全幅に近い信頼を示されるというのは、監督としては好ましいスタートではないかと思います。
プレシーズンがまだ始まるかなり前のこの段階でロペテギ新監督就任の発表を行ったセビージャ。恐らくモンチの狙いとしては2020−2021シーズンでのチャンピオンズリーグ出場権獲得に向けて一刻も早くチーム編成のコンセンサスを監督と話し合いたいという思惑。そして、まだ契約問題が解決していないパブロ・サラビアとアルゼンチン代表MFエベル・バネーガの去就問題に動きがある前に、監督を決めチームプランを考えていきたいということなのだと僕は見ています。
スポーツディレクターと監督が決まっていれば、プレシーズンの間に不測の事態が起きたとしても事前に合意したチーム編成の方向性に従ってスポーツディレクターが動けます。逆に監督が決まっていなければ、スポーツディレクター主導で選手獲得や編成を行うことにもなり、それが監督の戦略や目指す方向性とのミスマッチを起こしてしまう可能性も否定できません。
セビージャとモンチにしてみれば、クラブと監督が目指す方向性のミスマッチは最も避けたい事態であり、避けるためには監督を先に決めてしまいたいという思惑があったのでしょう。
2019−2020シーズンのセビージャFCは各選手のプレーも当然注目ですが、それ以上に「モンチとロペテギ」という運営側と監督という上層部も一体となった動きや戦いが見れそうです。