レアル・マドリーは久保の扱いに悩み中
レアル・マドリーの日本代表FW久保建英が今シーズンどこで居場所を持つことになるのかについて、レアル・マドリーの首脳陣はいまだに決めかねているようです。
スペイン最大のスポーツ紙MARCAは以前から久保がレアル・マドリー・カスティージャでのプレーだけではなく、プリメーラ・ディビシオンの他クラブへレンタルされる可能性について言及していました。
現地時間8月9日の記事によると、レアル・マドリーの首脳陣は現時点において久保をカスティージャでプレーさせながらトップチームでのプレーに可能性を残すのか、それともシーズン開幕当初からプリメーラ・ディビシオンの他クラブへレンタル移籍させ、シーズンを通じて実戦の機会を多く持たせるべきかを決めかねているようです。
MARCAは同記事においてプレシーズンにおける久保のプレーや人間性について高く評価しており、
若さに似合わぬ豊かな才能をピッチに残し、特にその人間性は特筆すべきものだった。
とまでコメントしています。
海外では特に欧州やアメリカなどと比較した場合に謙虚さが際立つ日本人の性格について高く評価する傾向は見られますが、あまり選手個人の人間性について言及することがないMARCAのようなスポーツ紙がこういった文章を使って選手個人のことを報じるのは珍しいことだと言えます。
MARCAはカスティージャでのプレーを推奨
MARCAはウルグアイ代表MFフェデリコ・バルベルデがスペイン国籍を取得したことによって、一つ空いた欧州圏外選手枠「エクストラ・コムニタリオ」をブラジル人FWロドリゴ・ゴエスに使わせることを選んだレアル・マドリーの決定自体に異を唱えているわけではないようです。
しかし記事内でMARCAは一貫して「レアル・マドリーの一員としてのプレー」を前提に久保について語っています。特に、
ラウールの指導のもとで、来シーズンのタケはサッカー選手としてより成長の機会を得ることができるはずだ。
特にセグンダBの厳しい戦いを経験する中でクラブの疑問をすべて払拭することができるだろう。
と評し、カスティージャでセグンダBの激しいリーグ戦を経験することがクラブ首脳陣にアピールする機会に繋がり、チャンスがあればすぐにトップチームに昇格できる環境にいるべきだ、との主張が見て取れます。
このMARCAの主張にはある程度納得できる部分があるのは事実です。
実際に昨シーズン途中にトップチームに昇格しその後定着したブラジル代表FWヴィニシウス・ジュニオールは、現在の久保とほぼ同じような立ち位置におりカスティージャから他クラブへレンタルされる可能性もありました。
しかし最終的にはカスティージャでプレーしつつ、負傷者の影響とチーム事情も相まってトップチームに招集されてデビュー。結局そのままトップチームに定着し重要な戦力として数えられるまでになっています。
MARCAが言いたいのは昨シーズンのヴィニシウス・ジュニオールと同様のケースが久保にも起こり得る可能性がある中で、敢えて他クラブへレンタルする必要はないということなのでしょう。
確かに長いシーズンの中で何がどう変わっていくのかは誰も読めるものではありませんし、セグンダBでのリーグ戦を経験することはサッカー選手として無駄なものではないことも事実です。
一方で18歳という久保の年齢はサッカー選手として「若すぎる」わけでもなく、少なくとも2年以上セグンダBでプレーすることが彼のためになるとも思えません。
そう考えればレアル・マドリーの首脳陣がいっそのこと最初からプリメーラ・ディビシオンで試合に出られる可能性が少しでも高いクラブにレンタルし、試合経験を積ませようと考えることは当然の流れだとも言えます。
レンタル先として噂に上がったバジャドリー
実際にここ2週間の間で久保のレンタル移籍に関する噂が出てきており、その候補先の一つとしてバジャドリーの名前が上がっています。
このChemaLogでも「【レアル・マドリー】久保建英のカスティージャデビューとレンタル移籍の噂について。」の記事でこの噂について触れましたが、その後なにか具体的な動きがあったかというと現時点では特に動きはないようです。
バジャドリーの監督を務めるセルヒオ・ゴンサーレスは各メディアの取材に対して「久保については何も知らない。何か動きがあるとすればそれはクラブ主導によるものだ」というコメントを残しており、「No sé nada de Kubo」というセルヒオの言葉には二重の意味があるとも受け取れる何かを感じます。
「No sé nada de 〜」
というフレーズは「〜についてはわからない」という意味と同時に「〜については何も知らない」という意味も含みます。
つまり、セルヒオがこのフレーズを敢えて使っているのだとしたら、うがった見方をあえてしようとするならば、以下の2つの意味でコメントしたとも考えられます。
自分は久保についての話は聞いていないからわからない。
なのか、それとも
自分は久保という選手について一切知らない。
という意味なのか。
いずれにしても、多くの場合こういったフレーズが使われる時というのはさほどポジティブな意味では使われません。
少なくとも「久保のレンタルが実現して自分の元に来れば嬉しい」というようなポジティブな意味は含まれていないのは明らかです。
どちらかといえば「クラブからは久保についての話は聞いていないし、自分も直接久保のプレーを見ているわけではないから詳しいことはわからない」という意味も含ませつつ、「本当にクラブ主導で進めているのだとすれば、自分に一言相談があってもいいのではないのか?」というクラブに対するメッセージが含まれているとも考えられます。
もちろんこれは邪推である可能性も当然あるわけですが、自分の預かり知らぬところで勝手に移籍の話が進行していくことを喜ぶ監督はそうそういないでしょうから、セルヒオが「仮にこう思ったとしても」、それは不思議なことではないのかもしれません。
MARCAは8月9日の記事の最後を
偉大な足跡を残すための第一歩として、ラウールの元に残ることは決して悪いことではない。
という一文で締めくくっています。
果たしてレアル・マドリーのクラブ首脳陣がどのように考えるのか。
開幕がすぐそこまで迫っている中で決断の時は近づいています。