エイバルの乾貴士が”入団”発表に出席
エイバルへ1年ぶりに復帰した日本代表MF乾貴士が、2015年以来となる「2度目の”入団会見”」に出席しました。
今読んで頂いているこの記事はスペイン最大のスポーツ紙MARCAが報じた内容を元にしていますが、掲載されている写真がオフィシャルショップらしき場所だと思われるため、どうやら乾は合宿先のオーストリアからエイバルの町に戻って入団会見に臨んだようです。
会見はエイバル史上初の女性会長アマイア・ゴロスティーサ・タジェリーアとスポーツディレクターのフラン・ガラガルサ両名が同席のもとで実施され、乾は「2022」と契約終了年がプリントされた自身のユニフォームを手に笑顔を浮かべています。
MARCAはこの入団会見の写真を評して
数ヶ月前には想像できなかった光景だ。しかし現実になった今となっては、ホセ・ルイス・メンディリバルが主張した、乾を再びその手に取り戻すべきだという主張に、彼らは感謝していることだろう。
と報じています。
MARCAは同時に、前回の契約更新が実施されずに終わったことが大きな失望として両者に残ったものの、エイバルと乾の歩む道が再び重なり合ったことは幸運なことであると指摘。
アマイア・ゴロスティーサ会長のコメント
記者会見においてエイバルのアマイア・ゴロスティーサ会長は
貴士が家に戻ってきてくれたことで、今日は私達にとってとても特別な日となりました。
(乾に向かって)あなたを迎えることができたこの状況に対して私達全員が満足していますし、きっとあなた自身のベストパフォーマンスを見せてくれることになると確信しています。そして全ての成功のために私達を助けてくれることも。
と会見中に語り、乾がエイバルでどれだけ大切にされ愛された存在だったのかを内外に対して示すことになりました。マンチェスター・ユナイテッドからボルシア・ドルトムントへ復帰した際に、ピッチに立った香川真司に対してジグナル・イドゥナ・パルクの大観衆が香川のチャントを大合唱した光景は非常に感動的なものでした。
ドルトムントとは比べ物にならないほど小さな田舎のクラブであるエイバルであっても、大事な選手を改めて迎える際に明確で大きな愛情を示すことができるということが、このアマイア・ゴロスティーサ会長のコメントから伝わってきます。
そしてエイバルにとって乾の離脱がどれほど大きな痛手だったのかということを、ゴロスティーサ会長は続くコメントで滔々と語っています。
彼が去ったことで私達は悲しみに暮れることになりました。彼の退団後に新たな道を築いていくのは簡単な決断ではありませんでしたが、心を痛めながらも彼の決断を尊重することを私達は選んだのです。彼の退団を受けて、彼とともに過ごせたことに誇りを感じながらも私達は扉を閉めることになりましたが、このクラブで誰ひとり欠けることなく、彼が復帰の意思を示してくれたことと彼の復帰に対して賛成でした。
ククレージャの離脱が決まった時、メンディリバル監督は私達に「タカを獲りに行くべきだ」とはっきり言いました。実現するためには簡単ではない条件もありましたが、幸いにもベティスの理解のおかげで私達は良いオプションを持つことが出来たのです。
乾は私達に素晴らしいリズムを与えてくれる選手です。この1年間は彼を手元に置いておくことができていませんでしたが、彼の復帰は私達にとって最高のニュースです。彼は”新加入選手”ではありませんし、すぐにチームにフィットしてくれるはずです。
移籍が日常的に行われることが当たり前のヨーロッパにおいては、中小クラブになればなるほど入団・退団・復帰はよく見られる光景ですが、とはいえそうそう頻繁に起こる話でもありません。
選手本人とクラブ、そして代理人やファンとの関係性がよくなければ復帰は実現しません。
そう考えれば乾は2015年から2018年までの3年間でエイバルという町とイプルーアに大きく確かな足跡を残していたのだということが、このゴロスティーサ会長のコメントからよくわかります。
乾本人の記者会見コメント
日本語−スペイン語の通訳がまだ準備されていなかったために、報道陣と乾との質疑応答は実現しなかったようですが、会見の最後で乾は本人の口からコメントを述べていますが、前述の通り通訳不在だったためにあらかじめ準備されたコメントを読み上げました。
— SD Eibar (@SDEibar) July 29, 2019
家に戻ってくることができてとても幸せです。
そして僕に戻るチャンスを与えてくれたクラブに最大限の感謝を捧げます。
昨年は僕にとって非常に難しい1年でした。しかし、今僕は再びここにいられることに喜びを感じています。僕にとってもクラブにとっても、両者にとって良い1年になると確信しています。
チームメイトと共に過ごせることに大きなやりがいを感じています。なぜなら僕たちは家族だからです。
ファンのサポートを受けられるように、全力でがんばります。
乾がコメントする様子はエイバルの公式ツイッターにも掲載されていますが、コメントが書かれた紙を読み上げている様子ではなく、言うべきことをきちんと覚えて自分の言葉で話しているように見受けられます。
「通訳がいなかったために質疑応答がなかった」
とはいえ、まがりなりにも3年間をスペインで過ごし結果を残していることから、乾は一定のスペイン語力を身につけていると僕は判断しています。
Ongi etorri etxera, @takashi73784537 💪🔵🔴#EibarPreSeason 🇦🇹 pic.twitter.com/Bayc8dhrgT
— SD Eibar (@SDEibar) July 25, 2019
乾とエイバルは「ハッピーエンド」を目指せるか?
プレシーズン合宿に合流した際の宿舎で、クラブのスタッフから声をかけられた乾はしっかりとスペイン語で挨拶を返していますし、スタッフが話している内容も理解した上での返事をしていることがその後の短い会話の中から聞き取れます。
気の利いた挨拶や冗長な表現などは、この動画を見ている範囲ではまだできていないようですが、少なくとも最低限意思疎通しお互いが一定のレベルでわかり合えるくらいにはスペイン語を身につけているのでしょう。
恐らくはエイバルのスタッフやチームメイト間程度でないとなかなか理解しづらいレベルのスペイン語力なのだろうとは思うのですが、きっと今の乾には十分なはずです。
ストーリーとしてはこのまま2022年まで契約を全うし、例えばJリーグに復帰するなどの流れになれば美しい話だとは思いますが、そこはプロの世界ですから実際には何が起こるのか誰にもわかりません。
しかし重要なのは乾がエイバルを求め、エイバルも乾を求めたというこの相互関係がしっかりと両者の間で成立していたという事実ではないでしょうか。
10年間現役でプレーできる選手のほうが少ないと言われるプロサッカーの世界で、その3分の1にあたる年数を共に過ごした乾とエイバル。
できればこのまま温かい相互関係の物語が続いてほしいと、僕は密かに願っているのです。