【セルタ】5年ぶりの大量得点はなぜ「今」生まれたのか?

La Liga情報

セルタ・デ・ビーゴ 6-0 アラベス

ラ・リーガ・サンタンデール第30節。

ホームスタジアム、アバンカ・バライードスにアラベスを迎えたセルタ・デ・ビーゴは、大方の予想を完全に裏切りました。

14分にコロンビア代表DFジェイソン・ムリージョがヘディングシュートで先制ゴールをマークすると、20分にはやや微妙な判定ながらセルタにPKが与えられてイアゴ・アスパスが今シーズン10ゴール目をマーク。

その7分後にはアラベスの右サイドバック、マルティン・アギレガビーリアがレッドカードで退場。

完全にチームとしての形が壊れてしまったアラベスに対して、セルタは最終的に6ゴールを叩き込み勝利しました。

セルタがリーグ戦で6得点をあげて勝利したのは2015年4月12日のラ・リーガ・BBVA第31節、バライードスでのラージョ・バジェカーノ戦以来5年ぶりです。

360分無得点だったセルタ。それでも成績的には悪くなかった

第26節から第29節までの4試合、実に360分に渡ってセルタはただの1ゴールもあげることができていませんでした。

2月22日のホームで行われたレガネス戦にかろうじて1−0で勝利を納めて以降、上向きそうな雰囲気を漂わせたままグラナダ戦、ヘタフェ戦に0−0で引き分け。

そして新型コロナウィルスの感染拡大を受け、スペインは全土での緊急事態宣言を発動。

強制自宅待機措置が発動され、世界はそのまま止まることになったのです。

しかし冷静になって思い返してみれば、2020年に入ってからのセルタは前半戦ほど悲劇的な状況ではなくなりつつあったのも事実です。

1月6日の第19節オサスーナ戦には引き分け、第20節アウェーのアトレティック戦にも引き分け。第21節のエイバルに対する引き分けはちょっと興ざめですが、第22節のバレンシア戦で見せた改善の兆しは、第23節のセビージャ戦、そして第24節のレアル・マドリー戦で僕達セルタファンに「これから良くなる」という確信を与えてくれるものでした。

不運な退場劇がありつつもホームでしぶとく勝利をもぎ取り、チームにもファンにもその存在を改めて示し、アスパスに加えて新たなリーダーが生まれたことを印象づけたラフィーニャの存在感が目立った第25節レガネス戦。

実は2020年に入ってから、リーグ戦が中断するまでセルタは9試合で1敗しかしていないのです。

2020年3月8日までで2勝6分1敗。

勝ち点で言えば12。

順位も17位で降格圏内からギリギリ外。しかも後半戦に入りレアル・マドリー、セビージャ、バレンシアといった難敵との試合を終えて、勝利を望めないような相手はアトレティコとバルセローナぐらい、という状態でした。

ファンはなぜチームを信じることができたのか

Twitter上で僕が交流している日本のセルタファン。

ビーゴを中心とした現地スペインのセルタファン。

両国のセルタファンに共通していたのは

「これから良くなる兆候は見えている。恐らく1試合いい形で勝てればすべてが変わる」

という思いだったのではないでしょうか。

少なくとも僕はそうでした。

メディアやジャーナリストを始めとする専門家達は、シーズン開幕前の移籍で加入した選手たちの顔ぶれの割には戦術的に拙いとか、新戦力が期待外れな結果になっているとか、ファンにとっては耳の痛い指摘をしていました。

それらの指摘が間違っているとは僕も思わないのですが、僕達には確固たる思いがあったはずです。少なくとも僕にあったのは、「僕達が一番このクラブをよく見てきたのだ」という自負でした。

少なくとも僕は20年間、このどうしようもなく中途半端なクラブを見続けてきました。

その過程で本当にどうしようもない状況の彼らを何度も目にしてきました。

しかし、今シーズンに限って言えば「そこまでひどくはない」のです。

16年前の降格時と似ている雰囲気があるので危険だとは思っていましたが、クラブが思い切って断行した監督交代で連れてきたのは、16年前と違い理論的で落ち着いた理知的な監督でした。

冬の市場で獲得した選手たちはウィークポイントとして挙げられていた課題のあるポジションで実績を積んでいる選手たちでした。

そしてリーグ戦はまだ5ヶ月残っていて、クラブの象徴であるイアゴ・アスパスは怪我をしていません。

ミナとアスパスを活かせて、デニス・スアレスに無理をさせず、ラフィーニャの背中を押せるような選手がいれば、このチームはきっともっと良くなる、と僕達ファンは皆がそう思っていたのです。

まさに、スモロフのようなセンターFWを前線に置き、ムリージョのような屈強でスピードのある読みの鋭いセンターバックが後ろを固め、そもそもタレントの揃っている中盤を楽にさせてあげれば、結果は遠からず出るはずだったのです。

2019年末の数試合でファンが感じたことを、オスカル・ガルシア・ジュンジェンはクラブと話し合い、獲得する選手をフェリペ・ミニャンブレスSDと詰めてきました。

その結果が第19節以降の勝ち点に現れていたと僕は思っています。

つまり、今シーズンのセルタがやっていることには良くも悪くも「一貫性」があったのです。

そしてその一貫性に僕達ファンは共感できたし、間違った方向への一貫性ではない、と思うことができていた。

だからこそ、日本でもスペインでも、僕達ファンは選手たちとクラブを信じることができたのだと思います。

5年ぶりの大量得点が生まれた背景とは

ろくにゴールを奪えてこなかった今シーズンのセルタが一気に大量6得点を奪えたことにはいくつかの要因があるでしょう。

もちろん、結果的にはアラベスに早い段階で退場者が出てしまったことが理由として大きいのは間違いありません。

デニス・スアレスが復調してレアル・マドリー戦のようなキレの良さを試合全体で発揮してくれたことが大きかったのも間違いありません。

しかし僕はこの試合を見ていて、各選手たちのコンディションがビジャレアル戦と比べて別人のように改善されていることに驚きました。

オスカル監督は中断期間中に行われたいくつかのインタビューの中で、

これは2度目のプレシーズンだと考えるべきだが、トレーニングマッチのないプレシーズンだ。最初の数試合でコンディションを仕上げるつもりでやらないといけない

と語っていたことがあります。

僕はその発言を聞いた時、「最初の数試合が終わるまでにコンディションを仕上げないとまずい」という意味だと思っていました。

が、アラベス戦を終えてみて、僕はふと思ったのです。

オスカルはひょっとすると「最初の数試合をトレーニングマッチのつもりで使い、コンディションをそこで仕上げる」という意味で言っていたのではないかと。

どちらも同じことではないのかと思われるかもしれませんが、僕は最初の受け取り方として

例えば「バジャドリー戦には完璧なコンディションに仕上げておき、そこから全力で突っ走りながら勝利を目指す」のだと思っていました。

しかし実は「ビジャレアル戦でどこまで自分たちが動けるか、相手の仕上がりはどうかを見る。バジャドリー戦では微調整しながらもう少し負荷をかけた試合をし、アラベス戦から明確に勝ちに行く」というつもりだったのではないかと思ったのです。

予想していたことではありましたが、中断明けのコンディションは各クラブ、各選手ごとにかなりバラバラでした。いくつか試合を見ましたが、その中でもセルタは比較的平均的にコンディションが整っている方だと僕は思うのです。

セルヒオ・アルバレスやウーゴ・マージョの負傷は残念ですが、これは今シーズンでなくても起こりうることなので仕方がないでしょう。

自宅でのトレーニングや、自宅待機解除後の全体練習において、リーグ全体でどの程度の選手たちがしっかりとコンディションを整えてリーグ戦再開に臨めるのか。

どの程度のクラブがその部分を徹底できるのか。

それらを考え、予測した上での策をオスカルが考えていたのだとしたら。

別人のようにはつらつとした動きを見せたデニス・スアレスやサンティ・ミナ。

そして、まるで「負傷から戻ってきた」ようなおかしな自然さで何事もなく左サイドを活性化させたノリート。

もし僕の楽観的な予測が正しいのだとしたら、アラベス戦でオスカルの策略は完全にハマったと言っていいでしょう。

オスカルは試合後の記者会見で

我々は今日”最初の決勝戦”に勝った。

あと8回、決勝を戦うことになる。

とコメントしました。

降格圏から大きく脱したわけでもなく、まだアトレティコやバルセローナといった強豪との対戦が残っています。

状況によっては最終節のエスパニョール戦が数年前の再来とも言える死闘になることもあり得るでしょう。

それでも、少なくとも僕個人は、オスカル・ガルシア・ジュンジェンというこのカタルーニャ人指揮官は、最後まで信じるべき人物だという確信を持っています。

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