ラ・リーガ2019-2020シーズンが開幕
スペイン現地時間の8月16日金曜日、サン・マメスで行われたアトレティック・ビルバオ対バルセローナの試合を皮切りに、ラ・リーガ・サンタンデールの2019-2020シーズンが開幕しました。
肝心の開幕戦はアトレティックが終了間際に38歳のアリツ・アドゥリスが技ありのジャンピングボレー(すペン語でいうメディア・チレーナ)によってアトレティックに決勝点となる先制点をもたらして勝利。
バルサが開幕戦に敗れてリーグ戦を黒星でスタートするのは、ジュセップ・グァルディオーラがトップカテゴリーの監督としてデビューを果たしたシーズン以来となる出来事です。
セルタは開幕戦に0-3で敗北
そして迎えた現地時間8月17日土曜日、セルタ・デ・ビーゴはホームスタジアムであるエスタディオ・アバンカ・バライードスにレアル・マドリーを迎えて開幕戦を戦い、1-3で敗れました。
ここ数年、レアル・マドリーに対しては呪われているのではないかと思うぐらいに相性が悪いセルタは、過去101試合をレアル・マドリーと戦い29勝15分57敗。
通算得点数もセルタ133に対してレアル・マドリーは226とほぼダブルスコアに近い数字が結果に現れています。
確かに過去には1998-1999シーズンのバライードスで、セルタがレアル・マドリーを5-0で破ったというような試合もあるにはありましたがそれもすでに20年前の「昔話」でしかなく、冷静に歴史と結果を紐解いてみれば、「勝てるはずのない相手」がレアル・マドリーであると言えなくもありません。
試合の内容はダイジェストなどもYouTube等で出回っているので特に語りませんが、2点だけキーポイントとなったのはレアル・マドリーの先制点のシーンと、前半終了間際のブライス・メンデスのゴールが取り消されたシーンでしょう。
トロ・フェルナンデスがカゼミーロと激突した場面は一見するとファウルに見えなくもありませんが、スローで見てみればどちらかといえば当たりに行っているのはトロ・フェルナンデスの方だと言えますし、カゼミーロもファウルと判定されるほど明確に足を上げているわけでもないので、開幕戦の開始15分未満という状況を考えればあの場面でセルタにFKが与えられる可能性は低かっただろうと言わざるを得ません。
僕はこの試合をダ・ゾーンのライブ中継で観戦していましたが、ダビ・コスタスが一瞬ギャレス・ベイルを離してしまったというよりも、コスタスの守備はもともとあんなものであり、だからこそフラン・エスクリバ監督はセンターバックにコスタスか、サエンスか、アイドゥーか、という悩みを抱えているのだとも言えます。
ブライス・メンデスのゴール取り消しの場面もVARで見ればなるほど確かにオフサイドですし、主審の判定やVARがどうこうという話でもないだろうと僕は考えます。
セルタにとって最も問題だったのは、負傷者が出た段階で少なくともコスタスの守備の危うさはわかっていた問題であり、時間と手駒が足りなくて解決できなかったこと。そして後半開始早々にレアル・マドリーのクロアチア代表MFルカ・モドリッチが退場処分を受けたにも関わらず10人のレアル・マドリーに1点を取るだけの攻撃が組み立てられない状況に陥ってしまう層の薄さだったと言えるでしょう。
デニス・スアレスやサンティ・ミナを獲得したとはいえ、結局の所ウーゴ・マージョ、オカイ・ヨクスル、サンティ・ミナといった主力にけが人が出れば「並以下のチーム」になってしまう状況は解決されていないということがこれでわかりました。
あとはけが人の復帰状況と、レアル・マドリー戦での問題点を洗い出して「そうだったとしても」どうするのか、を考えて実現していくのがセルタの指揮官たるフラン・エスクリバに求められる役割であり能力であるということになるのですが・・・。
フラン・エスクリバの恨み節
肝心のフラン・エスクリバ監督はこの敗戦を受けて、状況の改善を示唆するというよりは現状への嘆きと恨み節を試合後の記者会見で吐露しています。
ビーゴの地元紙FARO DE VIGOが伝えるフラン・エスクリバの会見要旨は下記の通りです。
時として相手に退場者が出た状況というのは、一人少なくなったチームよりも11人がピッチに残ったチームの方に混乱を招くことがある。
レアル・マドリーが我々に対して見舞った素晴らしいゴールは、我々にとっては不運がもたらしたものでしかない。もしあの数分間を何事もなく過ごせていたら反対にこちらが試合のイニシアティブを取れたと私は考えているが、いずれにしてもあの先制ゴールが結果的には我々に大きな傷跡を残すことになったのは確かだ。
実際のところトロ・フェルナンデスはまだ90分間を”彼本来の姿”として戦う状態には至っていないし、事実今日プレーしたのは”彼”ではないと私は考えているが、彼自身もよく我慢してプレーしてくれた。
もし彼自身がプレーせず、負傷中のサンティ・ミナも同様にプレーできなかったとしたらどうなっていたことか想像もつかない。
レアル・マドリーは交代出場で3人の代表クラスの選手を使うことができたが、私はカンテラの”坊や”を1人ピッチに送り出すのがやっとという有様だ。
あのスタメン11人と交代出場した3人の顔ぶれを見れば、最終的に順位表上位にいるべきチームを相手にしていたということには気付けるはずだろう。
ただし、敗北はしたもののその中にもある種の発見があったことは確かだ。
18歳のイケル・ロサーダが、フラン・エスクリバの言う「あのスタメン11人と交代出場した3人」を相手に、他のチームメイト10人がやれなかったことをやってのけたというのはセルタにとっては嬉しい誤算でした。
僕はプレシーズンマッチで度々イアゴ・アスパス組んでいた、ロサーダと同じくカンテラ登録のラウタロを試すべきではなかったと思ってみていたのですが、実際にロサーダは1ゴールという結果を残すことでバライードスのファンに対して自分の存在を誇示してみせました。
エスクリバの記者会見でのコメントは、一見すると「なぜこうならないようにもっと選手を獲得できなかったのか」という経営陣の補強方針に対するクレームに見えなくもありませんが、そこはうまく言葉の使い方で意図を隠しながら、最終的には次戦に対して備えていくのだという意図も匂わせるまとめ方をしています。
もともと今シーズンのセルタがクラブとして掲げる目標は「最低でも残留」というハードルとレベルの低いものでしかありません。
いわゆるエレベータークラブにとって、開幕戦での黒星というのは「よくあること」でしかなく、今のセルタは「そのへんにいくらでもいるエレベータークラブの一つ」でしかありません。
そういった状況とクラブとして考えていることを、実際にはフラン・エスクリバもよくわかっているのでしょう。
メンバー的にはもしかしたら周りが驚くような結果を残せるだけのポテンシャルは持っているのかもしれません。
が、それはあくまでも結果論として「あるかもしれない」レベルの話であり、12月まではまず順位表の中位にいることと、降格圏まで十分な勝ち点のアドバンテージを持っておくことがセルタに求められる最低限かつ最大限の命題です。
目の肥えたファンは色気を出したセルタが過去にどんな顛末を迎えたのかをよく覚えていますし、僕もよく覚えています。
セルタのようなクラブは欲張ってもろくなことにはなりません。
とにかく目の前の一試合。
そして「この」90分間をどうまとめるのか。
その2点を当分は考えて欲しいと僕は思っていますし、フラン・エスクリバのコメントを見ている限りでは、彼もその状況は理解しているのではないでしょうか。
次節はマキシ・ゴメスがいるバレンシア戦。
果たして全体練習に合流できそうなオカイ・ヨクスルは戦列復帰までを果たせるのか、それともメンバー構成は開幕戦と変わらないのか。
セルタファンにとってはまだまだ固唾を呑んで見守る1週間が続きそうです。