【セルタ】バルサからデニス・スアレスの獲得を正式に発表。

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セルタとバルサがデニス・スアレスの移籍で合意

スペインの有力スポーツ紙AS、MARCA、Mundo Deportivo各紙は現地時間6月30日、セルタがバルセローナのMFデニス・スアレス・フェルナンデスの移籍で本人及びクラブ間で合意したと報じました。

また同日にセルタ・デ・ビーゴはTwitterの公式アカウントでデニス・スアレスの加入を正式に発表。背番号は「6」に決まりました。

移籍金は1290万ユーロ+成績に応じて310万ユーロとなっており、セルタはまず確定の移籍金として1290万ユーロをバルサに支払い、シーズン終了後にセルタ及びデニス・スアレス本人の成績に応じて310万ユーロを追加でバルサに支払うことになります。

6月29日土曜日の段階でスペイン最大のスポーツ紙MARCAはセルタとデニス・スアレス本人が移籍に関して基本合意を締結し、残りはバルサとのクラブ間合意だけであると報じていました。

すでにそれ以前からFARO DE VIGOなどがデニス・スアレスの移籍先候補としてセルタが選択の有力候補となっていることを報じていましたが、同時にバレンシアもデニス・スアレスの獲得に動いているとも言われていました。

給与面で考えればバレンシアが有利であるものの、「出場機会の確保」というデニス・スアレス本人が優先する条件に最も適した移籍先はセルタであるという見方もあり、マキシ・ゴメスの移籍と相まってセルタとバレンシアのせめぎあいが続いている状態だったのが数日前です。

しかしここへ来て事態は急速に動き出し、結果的にデニス・スアレスは報じられていた通り「出場機会の確保」という本人にとっての最優先事項を選択したことになります。

決定的だった2つの状況とは?

バレンシアがデニス・スアレスの獲得に動いていた背景には、現在バレンシアを指揮するのがマルセリーノ・ガルシア・トラルであり、マルセリーノが2016年まで務めたビジャレアルの監督時代に、デニス・スアレスの能力を最大限活かしていたことがあります。

報道によるとマルセリーノはデニス・スアレスが出場機会を求めて移籍の道を探っているという情報を得てすぐ、クラブ経営陣に対してデニス・スアレスの獲得を要請。マルセリーノの要請を受ける形でデニス・スアレスの獲得に動き出していました。

つまり考え方によっては、デニス・スアレスの獲得というのはバレンシアにとって「クラブとしてのプロジェクト」ではなく、あくまでも「マルセリーノ監督個人の好み」でしかなかったという見方ができます。

対するセルタはカルロス・モウリーニョ会長が主導しカンテラの整備とかつてのカンテラ出身選手の帰還事業を進めています。その根底には「セルタ・デ・ビーゴがガリシアのクラブである以上、トップチームには一定数クラブ出身のガリシア人が定着すべき」という「ガリシア主義」とも呼べる計画があります。

「出場機会」を「地元」で確保できるセルタ

以前の記事「デニス・スアレス、セルタからの正式オファーを認める発言」でもお伝えした通り、デニス・スアレスの出身地はビーゴから30km程度の距離にあるサルセーダ・デ・カセーラス。ビーゴと同じガリシア州ポンテベドラ県あり、デニス・スアレス自身もれっきとしたガリシア人です。

【セルタ】デニス・スアレス、セルタからの正式オファーを認める発言
バルサのデニス・スアレスが、セルタからのオファーがあったことを正式に認める発言をしています。移籍願望を表明しているデニス・スアレスのコメントと共にセルタの経営戦略を読み解きます。

幼少時にセルタでサッカーを始めたデニス・スアレスにとってはセルタへの移籍はまさに「地元への帰郷」と同義であり、現在のチームメイトやクラブのスタッフも含めて安心できる環境が整っています。

「地元がそんなに重要なのか」と思う方もいるかもしれませんが、スペイン人は僕たち日本人には想像することもできないほど「内弁慶」なところがあるのです。

地元では偉そうにふんぞり返っている「町の名士」が、都会の会合に出ると縮こまって存在感が無くなってしまったり、地元に他の州から来訪者が来た時にはご当地トークで来訪者の地元をからかう発言を連発するのに、反対の立場になると自分の地元については大して語らなかったりといったことがそれにあたります。

この観点から見るとデニス・スアレスにとってバレンシアは「余所の土地」であり、「知らない場所」です。マルセリーノが監督だとはいっても、マルセリーノとていつ解任や辞任、退任するかわかりません。それよりは見知った土地で見知った練習場、スタジアム、そして家族に囲まれてプレーするほうが魅力的に映ったとしても僕は全く驚きませんし、むしろ僕がスペインで得ることができた感覚からすれば「当然だろう」というのが本音です。

会計処理上のメリットを把握していたセルタとバルサ

また一方ではバルサ側にとってもセルタへの売却はメリットのあるものでした。

1290万ユーロ+出来高310万の合計1600万ユーロという金額面だけの問題ではありません。

バルサは6月末日を会計年度末に定めており、2018−2019シーズンの売上高を確定させる必要がありました。

会社で働いた経験のある方。特に経理や営業で働いた経験のある方ならおわかりになると思いますが、「年度末」というのはいわゆる「数字」に敏感になる時期です。

営業であれば「会計締め日」の日付で発注が取れて目標をクリアできれば万々歳。

経理であればなんとかして「会計締め日」までに当期の売上と利益を確定させて会計書類を「〆て」しまいたい。

つまりバルサとしては6月30日までにデニス・スアレスの売却に関してセルタと合意し書面上の合意が成されれば、この移籍に関わる金額のやり取りは2018−2019シーズンのものとして会計上の処理ができるという大きなメリットがありました。

この処理が可能になることによって、7月1日から始まる新しい2019−2020シーズン分の移籍に関してはファイナンシャル・フェアプレーに引っかからなくなるからです。

これはセルタにとっても同様ですから、S.A.D.(Sociedad Anomina Deportiva)=スポーツ株式会社としての企業セルタと企業バルサ(バルサは正確には株式会社ではありませんが)にとって相互メリットのある移籍交渉でした。

セルタにとっては2018−2019シーズン分として使える経費を限界まで処理できる。

バルサにとっては余剰人員を放出し経費を浮かせて利益が確保できる。

まさに「Win-Win」の取引というわけです。

果たしてバレンシアがここまでの意識を持ってデニス・スアレスの移籍に取り組んでいたのかどうかは、上記の観点から考えると疑問だと言わざるを得ません。

バレンシからしてみれば、2018−2019シーズン分の経費として処理する必要がなかったかもしれない取引だからです。

2018−2019シーズンのコパ・デル・レイに優勝し賞金も獲得しているバレンシアですが、その分の利益を2018−2019シーズン分として確定させる=当該シーズン分の支出を増やさずにおけば、2019−2020シーズンに出場できるチャンピオンズリーグの分配金は2019−2020シーズンの利益に上乗せされることは確定します。

つまりファイナンシャル・フェアプレーのルール内で使える経費が増加することが目に見えている状態の中で、バレンシアとして無理に2018−2019シーズン分の経費として支出を増やす必要性があったのかどうか、というのがポイントではないかと僕は考えています。

もし仮にバレンシアのクラブ経営陣が2019−2020シーズンになってから、「経費の枠が増えた」中で余裕を持ってデニス・スアレスの取引をバルサと行いたいと考えていたのだと仮定すれば、残念ながらバレンシアの読みは外れたと言わざるを得ないでしょう。

セルタとバレンシアの移籍に関する駆け引きは次のステップへ

デニス・スアレスの移籍が一段落付きコパ・アメリカでウルグアイ代表が敗退したことから、恐らくセルタとバレンシアの移籍に関する駆け引きは次のステップへ進むでしょう。

以前から何度もお伝えしているウルグアイ代表FWマキシ・ゴメスの移籍と、FWサンティ・ミナの移籍。

この2つの移籍をどう絡め、どう進めていくのかというのが今後の両クラブのテーマになっていくと予想されています。

すでに一部の報道ではコパ・アメリカで出場が無かったために、マキシ・ゴメスの市場価値が下がっているはずだと主張するバレンシアが、サンティ・ミナの移籍金を引き下げる代わりにマキシ・ゴメスの移籍金引き下げもセルタに提案するだろうという予測がなされています。

果たしてこのせめぎあいがどう決着するのか。

サッカーというスポーツ面での見方と同時に、経営面でのせめぎあいも見ることができるこの一連の流れを、僕は今心底楽しんで見ています。

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