アディショナルタイムの逆転弾で今期4勝目を挙げたセルタ
ラ・リーガ・サンタンデール第23節のセビージャ戦をホーム、アバンカ・バライードスで戦ったセルタ・デ・ビーゴ。
23分にセビージャのモロッコ代表ユセフ・エン=ネシリのゴールで先制されたものの、セルタは78分に元スペイン代表FWイアゴ・アスパスが同点ゴール。そして91分にデンマーク代表FWピオネ・シストが逆転ゴールを決め、今シーズン4勝目となる勝利をホームで飾ることに成功しました。
これでセルタの勝敗成績は4勝8分11敗。
19得点32失点という結果に見られる通り、得失点差は−13ではあるものの、失点数としては7位バレンシアと同じであり、改めて今シーズンの課題は得点力であることが浮き彫りになっています。
オスカル・ガルシア・ジュンジェン監督のコメント
試合中から立ち上がって試合展開を見守り、選手とともに戦う姿勢を見せていたセルタの監督オスカル・ガルシア・ジュンジェンは試合後に「サッカーは我々にふさわしいものを返し始めてくれた」というコメントを残しました。
そして大雨の中にも関わらずバライードスに足を運んで最後まで声援を送り続けたビーゴのファンに感謝の言葉を残しています。
オスカル監督の記者会見要旨
スタンドに詰めかけてくれたファン達は勝利の瞬間まで我々の背中を後押ししてくれた。彼らが共に戦い、励ましてくれたことで、今日というこの日にサッカーは我々にふさわしいものを返し始めてくれたと感じている。
最近の3〜4試合は結果以上のものを得られるべき内容だったと考えている。そして今日ついにそれが報われたと思う。私はこの結果に関して選手達とファンの双方を誇りに思う。チームは私の就任以降、一貫して良い努力と準備を続けてきた。最近の数試合における結果は正当とは言い難いものだったし、通常ではありえないような形での失点を喫していた。
だがチームは精神的にとても強靭だと感じていたし、どんな状況にあるにせよ我々はその状況を脱するために努力してきて、その事自体が最初の一歩だったと思っている。
次のステップとして私が考えていたのは戦うこと、そして良いプレーをすることだ。そしてその第2ステップも我々は正しく行えていた。あとは勝つだけという状況を作ってきて、今日それを形にすることができたと思う。
正しくプレーできれば苦しい状況を抜け出すことができると私は常に考えてきた。我々は良いチームだし、実際にそのことを示せてきたと思う。
ファンが我々に要求することはシンプルだ。常に戦う姿勢を忘れず、100%の力を示すことだ。そうすることで我々自身も自分たちのレベルに見合った”いるべき場所”にいることができる。
少なくとも今日の結果だけでなくプレー内容に関してもファンは満足してくれると思う。私としては今日の勝利が状況を脱するための鍵になってくれることを願っている。
結果的に功を奏したピオネ・シストの交代
試合開始を迎えたスターティングメンバーの左サイドFWとして出場していたスペイン代表MFブライス・メンデスは決して悪い出来ではありませんでした。
左サイドで起点となり、ウルグアイ人DFルーカス・オラサと共にセルタの左サイドでのゲームメイクを担当。時にポジションを替え、中央に切り込み、何度か際どいシュートも放って存在感を示していました。
僕は後半もブライスが出場するものと思っていましたし、実際ブライスからチャンスが生まれていることも多かったため、正直なところシストとの交代でブライスが前半だけで退いたことに驚きました。そして内心では「これが悪い方向に出なければいいな」と心配すらしていたのです。
ところが、最終的にはそのシストが後半に作り出したチャンス内容は形こそ違えどブライス・メンデスと遜色なく、そして彼自身がアディショナルタイムに逆転ゴールを決めてセルタに勝利をもたらしたのです。
そのシストに関してオスカル監督は次のように語っています。
シストが我々にもたらすことができることを我々はよくわかっていた。メディアの皆さんも御存知の通り、彼には彼独自の特徴がある。彼は違いを生み出せる選手で、サッカーの面だけではなく人間性でも”他とは違う”タイプなのだ。そしてそれこそがチームや仲間を助けることになると我々はよくわかっている。
このコメントを見て、恐らくセルタファンならオスカルの言わんとすることが何となくわかると同時に、クスッと笑ってしまうかもしれません。突然SNSを閉鎖してみたり、そうかと思うと復活させたり、周囲の心配をよそによくわからないダンス動画をSNSにアップしてみたりと、確かにシストは「他とは違う何か」を持った選手であり、「他とは違う人間性」を持った人物です。
違いを生み出せる才能のある人間というのは、しばしば周囲からは変人扱いされることがあるようですが、セルタにおけるシストの立ち位置はそういうものなのかもしれないと僕は思っています。
逆転ゴールのシーンにしても、もしあの瞬間ボールを持っているのがブライス・メンデスだったとしたら、ひょっとするとブライスはパスを選択することを優先したかもしれません。もちろん、これは結果論に過ぎないのですが。
イアゴ・アスパスの試合後コメント
現在のセルタで「象徴」として君臨する背番号10、イアゴ・アスパスが同点ゴールをあげた際にバライードスを包んだ大歓声を聞いた時、僕は全身に鳥肌が立ちました。
アスパスはリオネル・メッシやクリスティアーノ・ロナウドのような超人的な選手ではありません。個人タイトルもスペイン国内のものだけ。ラ・リーガで得点王になったことがあるわけではありませんし、将来を嘱望される若さを持っているわけでもありません。
しかしセルタとセルタファンにとっては間違いなく象徴であり、クラブの魂とも呼べる存在であることに間違いはないでしょう。
言いすぎかもしれませんがもし同点ゴールを決めたのがアスパスでなかったら、その後の逆転劇がもたらされたかどうかも怪しいのではないかとすら、僕は思ってしまうのです。
そのアスパスはセビージャ戦について試合後に次のようなコメントを残しています。
チームとしてのリズムを変えられる瞬間を僕達は待ち続けてきたし、2020年に入ってからチーム全体で努力してきた。報われるべき内容の仕事をしてきた結果が現れた試合内容だったと思う。
僕自身が先制点を決められそうなチャンスはあったが、残念ながらそれをものにすることはできなかった。そして相手は巡ってきたチャンスをしっかりとものにしてゴールを決めた。セビージャもとてもコンパクトにまとまったプレーをしてきたが後半には僕達が3〜4回のチャンスを作ることができていた。ゴールはそのご褒美だと言えるだろう。
ルーカス(オラサ)のミスは確かに残念なものだったがそれを責めるのは間違いだ。チームの誰もがルーカスが日々積み重ねている努力が並大抵のものではないと知っているし、彼はどんな時でも汚い言葉を吐いたり仲間を責めたりしない人間だ。ミスをしようと思ってする人間はいないし、ミスをするのは誰であっても好ましいものじゃないのも事実だ。
それに、後半には僕達も改善することができてセビージャの攻撃を抑えることに成功した。だがもうこの試合は終わったし、次を考えなくてはいけない。
僕達はもっと多くのことを欲しているし、もっと多くのことを成さなければならない。
僕達を助けてくれるファンの人々に喜びを与え、その喜びが続くようなことを成し続けなければいけない。それ以外のことは今は必要ないことなんだ。
味方のミスについて語るよりも、得られた結果をこれからも得続けることが最も必要なことだとコメントしたアスパス。
それこそ僕達セルタファンが求めていることであり、アスパスがそれを実現してくれることを僕達は期待し、これからも待ち続けることになります。
まだまだ正念場が続くセルタ
次節第24節はアウェー、サンティアゴ・ベルナベウでのレアル・マドリー戦です。
降格圏を一時的に脱したとはいえ、降格圏までは2ポイントしか離れていません。
レアル・マドリーに敗れれば再び降格圏に逆戻りする可能性もある中で、チームとしての団結は今後も求められていくことになります。
2018−2019シーズンに引き続き苦しい戦いを強いられているセルタですが、セビージャ戦で見せてくれたような戦いぶりを今後も続けることができれば、今シーズン残り試合で再びセルタが輝きを取り戻すことは決して不可能ではないだろうと僕は考えています。