セルタとブライス・メンデス側が話し合いへ
セルタ・デ・ビーゴのスペイン代表MFブライス・メンデスの獲得を、ドイツのバイエルン・ミュンヘンが検討しているというニュースを先日の記事「【セルタ】ブライス・メンデスにバイエルンが獲得の意思を示す」
でお伝えしました。
ブライス・メンデスの代理人であるフアン・サンチェスとホセ・マヌエル・タラガがセルタとの話し合いを行うかどうか。また話し合いを行う場合はどういった内容になるのかが気になる点としてMARCAで報じられていました。
現地時間7月23日付けのMARCAの記事では、契約の見直しについてセルタとブライス・メンデスの代理人が会談を持つだろうと予測されており、双方の意図は「契約内容の見直しと延長、そして移籍金額の再設定」になると見られています。
セルタのフラン・エスクリバ監督は「私はブライスを戦力として持てることに満足している。彼がここにいたいと思っていることはわかっているし、我々も彼のことを100%信頼し戦力と考えている」とコメントしており、エスクリバ個人としてはブライス・メンデスの離脱は想定していないということを強調しています。
一つはっきりしていることは、22歳でプリメーラ・ディビシオンでコンスタントに出場しているスペイン代表選手として、2500万ユーロという現在設定されているブライス・メンデスの移籍金額は市場の視点では「安い」ものであり、ある程度資金力のあるクラブであれば容易に支払える金額であるということです。
少なくとも表向きは「セルタにいることで満足している」とコメントしているブライス・メンデスは、キャリアのスタートがビジャレアルであったとはいえ、2012年からセルタで育ってきたカンテラーノであり、「カンテラ主義」を推進するセルタにとって重要な選手です。
オフシーズンでカンテラ出身者を苦労して取り戻した現状で、敢えて別のカンテラ出身選手を手放すことは矛盾した動きであり、トップチームの合宿よりもセルタBのトレーニングを訪問し、選手スタッフに対して「君たちこそがセルタであり、君たちこそが未来のセルタを作る。君たちの努力がビーゴとセルタの未来になるのだ」と檄を飛ばすカルロス・モウリーニョ会長がやすやすとブライス・メンデスの放出を受け入れるとも思えません。
2006年の就任時にモウリーニョ会長が掲げた「カンテラによるセルタ」という方針は、経済的な問題による数人の放出はあったものの、概ね一貫して貫かれています。
この点に関しての一貫性はビーゴ現地のファンも含めて評価され認められていますから、よほどのメガオファーがなければセルタがブライス・メンデスを簡単に手放すことはないでしょう。
クラブとブライス・メンデス側の会談日程はまだ決まっていないようですが、クラブとファン、そして本人にとって最良の結果が出ることを願うばかりです。
マキシ・ゴメス移籍協奏曲の舞台裏
当初サンティ・ミナとのトレード+ホルヘ・サエンスの2年レンタル+1500万ユーロだと言われていたウルグアイ代表FWマキシ・ゴメスの移籍ですが、この結果に対して不満を持っているのがウルグアイのデフェンソール・スポルティングです。
セルタがマキシ・ゴメスの移籍金として設定していたのは当初5000万ユーロであり、デフェンソールは将来的なマキシ・ゴメス売却金額のうち20%を連帯育成金として受け取れる権利を有していました。
仮にウェストハムが提示していた5000万ユーロ満額のオファーをセルタが受け入れ、マキシ・ゴメスの移籍先がウェストハムになっていた場合、デフェンソールは1000万ユーロを受け取れていたことになります。
しかし詳細が明らかになったセルタとバレンシアとの間に取り交わされた契約の内容は下記の通りです。
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つまりセルタに支払われるマキシ・ゴメスの移籍金は報じられていた通り実質1500万ユーロであることになり、デフェンソールにとっては期待していた金額を大きく下回ることになるため、デフェンソールとセルタの間で取り交わされたマキシ・ゴメスを将来売却する際の取り決めは、破られたわけではないにせよデフェンソールとしては肩透かしを食った形になっています。
デフェンソールにとっては中規模のクラブに安値で売却したとしても、確実にプレー機会を得られて将来の大きなオファーを待ち、その後のセルタによる売却金額から得られる利益を期待していたにも関わらず、その機会をみすみすセルタとバレンシアの合意で裏切られたことになります。
しかしセルタにとっては「余計な支出」を可能な限り減らすためには当然の施策であったことは間違いありません。裕福とは到底言えないセルタのような小さなクラブにとっては、いかに安く選手を手に入れた上でどれだけ高く売却し、効率的なキャッシュフローを作り上げてから別の選手を獲得するかが生命線です。
その意味で、企業家として百戦錬磨と言ってもいいカルロス・モウリーニョのビジネスセンスは卓越したものだと言ってもいいでしょう。一般企業の経営者としても経験豊富なモウリーニョの頭脳が、今回の移籍劇をセルタとバレンシア、そしてミナとマキシ・ゴメス全員にとって満足のいく形で終わらせることができたのは、恐らくカルロス・モウリーニョが描いたシナリオが的確だったからだと言ってもいいと僕は考えています。
セルタの歴史において13年という長期間にわたって会長を努めているカルロス・モウリーニョは、もしかしたらこのままいけば「歴代最高の会長」としてその歴史に名を残すことになるのかもしれません。