アベラルドはスペイン代表監督就任の噂を否定
2018年ロシア・ワールドカップでの敗退後、前バルサ監督のルイス・エンリケが代表監督に就任しているスペイン代表。就任後の6試合で4勝2敗と結果は残しており、試合内容も一定以上の評価を受けているルイス・エンリケですが、「家庭の事情」を理由に6月7日のフェロー諸島戦(アウェー)、6月10日のスウェーデン戦(ホーム)では指揮を取らないと言われています。
そこで噂に上がっているのが同じアストゥリアス州ヒホン出身のアベラルド・フェルナンデス・アントゥーニャがルイス・エンリケに代わりスペイン代表監督になるのではないか、という話です。アベラルドは2017年からアラベスを指揮しており、今シーズン限りでアラベス監督の座を退くことが既に決まっています。
アラベスには現在日本代表MF乾貴士がベティスからのレンタルで所属しており、アベラルドには重用されています。ゴールも挙げ結果を残している乾をアベラルドは高く評価しているのは事実。そしてベティスの現監督キケ・セティエンは今シーズンの成績が振るわなかったことから来シーズン前に退団すると言われていて、そのキケ・セティエンの後任としてアベラルドが就任し、乾もベティスへ復帰するのではないかと報じられていました。
アベラルドの監督としての手腕はスペイン国内でも高い評価を受けており、長年バルサでプレーしたことからバルサのプレー哲学=2010年ワールドカップで優勝したスペイン代表チームのベースとなったプレースタイルもよく理解しています。現役時代にはルイス・エンリケとチームメイトであったことと、2人とも地元がヒホンという同郷人であること。さらにアベラルドが今シーズン限りでアラベスの監督を退任し、表向きはフリーになることが噂のベースにあるようですが、アベラルド自身はその噂を明確に否定しています。
以下は噂に対するアベラルドのコメントです。
何の事実にも基づかない噂だ。(ルイス・エンリケが退任するという話について)何も聞いていないし、私がルイス・エンリケとの友情に基づいて言えることは、彼が問題を抱えているのだとすればそれが解決されて欲しいということだけだ。
事実ではないニュースや噂に対して個人的に立ち入るつもりはない。私が臨むのはルイス・エンリケが長く代表監督を続けて欲しいということ。彼はグァルディオーラと並んでスペインで最も優れた監督の1人だ。そして兄弟同然の関係である友人として彼がその座に値すると断言できるる。
彼が家族と抱えている問題を解決できるよう心から心配している。
友人としてもプロとしても優等生なコメントです。
しかし実際にはこの噂が事実なのかどうかは今のところ明らかになっていません。確かにスペインサッカー協会のスポーツディレクター、ホセ・フランシスコ・モリーナはスペイン現地時間の5月17日に「ルイス・エンリケがフェロー諸島戦とスウェーデン戦では指揮を取らない」ということを公式に明らかにしましたが、代表監督交代に関しては言及していません。
ロシア・ワールドカップ前のユレン・ロペテギの前例があるので鵜呑みにはできませんが、ルイス・エンリケとアベラルドの去就に関しては確かに気になるところです。
今シーズン限りでアラベスを去るアベラルド
2017年からアラベスを指揮してきたアベラルド監督が、今シーズン終了後に退任することになったこと。そして日本代表MF乾貴士が2018−2019シーズン途中からアラベスに加入し、アベラルドの元で息を吹き返したことは日本国内でも度々報じられていました。
アベラルドは2003年に現役を引退し2008年から指導者としてのキャリアをスタート。現役時代は1989年に出身地であるヒホンのスポルティング・デ・ヒホンでプロ選手としてのキャリアをスタート。1992年にバルセローナで開催されたバルセローナ・オリンピックのU-23スペイン代表として金メダルも獲得しています。その後1994年にスポルティングからバルサへ移籍。2001−2002シーズンまで8年間在籍しレギュラーとしてプレー。
スペイン代表としても1991年〜2001年までコンスタントに選出されており、代表キャップ数は54試合。得点も3ゴールをマークしています。
指導者キャリアを古巣であり地元でもあるスポルティングのBチームからスタートし、2010年に一度は解任されているもののその後2012年にBチーム監督に復帰。さらに2014年からはトップチームの監督に就任し、2017年まで指揮を取っています。その後2017年から現在に至るまで、現役を引退したクラブでもあるデポルティーボ・アラベスで4季を取り続けていました。
アラベスでの1年半で評価を高めたアベラルド
アラベスのあるビトーリアの町はスペイン北中部バスク地方の州都。ビルバオのアトレティック・ビルバオやサン・セバスティアンのレアル・ソシエダ同様に質実剛健且つ堅実なサッカーをする特徴あるクラブでした。2000−2001年にはUEFAカップで決勝戦まで進出。決勝ではイングランドのリヴァプールと対戦し延長戦の末に4−5で準優勝に終わりましたが、この決勝戦は歴代のUEFAカップの中でも屈指の試合として今でもファンの間では語り継がれている素晴らしい試合でした。
その後はエレベータークラブとして表舞台から姿を消していたアラベスでしたが、アベラルドの就任とともにチーム力が向上。来シーズンのヨーロッパリーグ出場が手に届くところまで来ていましたが、ここ数試合の結果で第37節終了時点で11位。欧州カップ戦への出場は来シーズン以降の目標となっています。
しかしそこまでアラベスのチーム力を向上させ、適材適所の選手起用と戦術でチームを率いてきたアベラルドの評価は非常に高いものになっています。アベラルドの指揮のもので成長した選手の中には6月16日から行われるU-21ヨーロッパ選手権に臨むチームの一員として選出されたアントニオ・シベーラとマルティン・アギレガビリアも含まれています。
最終節では乾を含めた主力数名が負傷で出場不可能なため、ベンチ入りメンバー18人のみで試合に臨むことになりますが、アベラルドとしてはアラベス最後の試合でなんとか有終の美を飾りたいところでしょう。